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747最終号機の納入、GEnxエンジンの新たな時代の幕開けを予感するデイヴ・キルヒャー

ジェイ・ストウ

ことし1月31日、ワシントン州エバレットにあるボーイングのワイドボディ航空機工場のコンプリーションセンター(※)から747の最終号機となった「747-8Fフレイター(貨物機)」がロールアウトしました。デイヴ・キルヒャーにとって、それは感慨深い情景でした。

※コンプリーションセンター:機体引き渡しまでの最終工程(客室装備、塗装、飛行テストなど)を行う施設

「航空業界に携わる人間であれば、誰もが口にする出来事が2つあります。1つ目は、生まれて初めて空を飛んだ時のことで、もう1つは初めて747に乗った時のことです。」後者については、彼の場合、自身のキャリア初期にブリティッシュ・エアウェイズ機でロンドンに飛んだときのことでした。「747のアッパーデッキに上がった時のことは一生忘れないでしょう。747はまさにアイコン的存在なのです。」

今はGEnxエンジン製造ラインのゼネラルマネージャーを務めるキルヒャーは、CF6エンジンを搭載した747旅客機が初めて離陸した1974年まで遡り、このプログラムに携わったすべての人々を思い起こさずにはいられませんでした。「私が存じ上げている『ジーイーアーズ(GE-ers)』と呼ばれる引退したGEの諸先輩は皆、CF6エンジンを搭載した747機プロジェクト全体の成功を目指していたと思います。50年近く経った今、最終号機がお客様に納入されたのです。まさに歴史的な瞬間です」と彼は語ります。

大きな節目であり、歴史的でもある理由は、これが最終号機であるというだけではありません。この747-8Fには最新のGEnx-2Bエンジンが搭載されています。このエンジンはノースカロライナ州ダーラムにあるGE Aerospaceのエンジン生産および組立施設でラインオフされたものになります。

747最終号機(トップ画像)に搭載されたGEnxエンジンの一基と共に記念撮影するオハイオ州ピーブルズにあるGE Aerospaceの工場作業員たち(上画像)。画像提供:ボーイング(トップ画像)、GE Aerospace

キルヒャーは次のように続けます。「747に別れを告げるつもりはありませんが、感慨深いのは確かです。これまでに納入された1,500機以上の747のうち、42%にGEのエンジンが搭載されており、さらに直近の155機にはGEnxエンジンが搭載されていることを誇りに思っています。しかも、30年前に納入された747は今でも現役で空を飛んでいます。ということは、今回アトラス航空に納入されたGE製エンジンも、これから数十年にわたって運用される可能性があるのです。」

航空機エンジンの耐久性はかなり続くことを考えると、最終号機が引き渡されても契約は続くことになります。キルヒャーが指摘するように、生産が終了したということは、これから数十年にわたる保守サービスが始まることを意味します。現在GEnxエンジンを搭載した747は、最初の運航以来1,700万時間以上の累積エンジン飛行時間と270万サイクルの離着陸を積み重ねてきました。その間、4,300万人以上の乗客を運び、5,800万トン以上の貨物を輸送してきた実績があります。

このように、GEnxは高い頻度と航行能力を求められているため、カスタマープロダクトサポートグループに所属し世界中で同エンジンを担当する200人のフィールドサービスエンジニアは多忙を極めています。キルヒャーは次のように説明します。「彼らは私たちの製品をチェックする目であり、耳なのです。」フィールドエンジニアはお客様である航空会社と協力しつつ、シンシナティと上海にあるGEのオペレーションセンターに報告を集約します。そして、オペレーションセンターはすべてのエンジンのパフォーマンスを常にモニタリングしています。

キルヒャーはさらに続けます。「オペレーションセンターは24時間リアルタイムでお客様のエンジンパラメータを監視しているので、何らかの事態やその兆候がたとえ1つの部品に起きる場合でも、事前に把握することができます。このような体制のおかげで、オペレーションセンターは社内フィールドサービスエンジニアおよび航空会社のエンジニアと連携しつつ、『そろそろメンテナンスを行うタイミングですよ』とお客様に提案することができるのです。」

多くの場合、エンジンの修理や調整はオンウィング(機体に搭載したまま)で実施することができますが、定期的にエンジンを機体から取り外し、世界中にある9カ所のオンウィングサポート施設のいずれかでより「外科的」な修理やオーバーホールを行う必要があります。

キルヒャーは続けます。「私たちのエンジンはお客様のために働き続けます。747フレイターは非常に効率的な航空機です。たくさんの貨物を積み込めることはもちろんのこと、ノーズカーゴドアを開くことで巨大な貨物も積載することが可能です。747フレイターは今後も長期にわたって運用される飛行機であり続けるでしょう。」

機材の長期運用はそれ自体が目標であり、この目標を達成するために、GEnxチームはエンジンパフォーマンスを向上させ、いわゆる「time on wing(エンジンが翼に付いている時間)」を長くするための技術的イノベーションを数多く用意しています。その一例がGE 360フォームウォッシュです。高温で厳しい砂漠の気候にさらされることが多いGEnxなどのエンジンにはダストが焼き付いてセメント状に固着しがちです。この課題を解決する洗浄機として、360フォームウォッシュはニューヨーク州ニスカユナにあるGEリサーチの協力を得て開発されました。360フォームウォッシュによってこうした固着物を分解・除去することで、エンジンのコンプレッサー効率の向上、燃料消費量の削減、CO2排出量の削減、および修理に要する時間の短縮に役立つのです。

また、GEデジタルが開発した「FlightPulse(フライトパルス)」と名付けられたアプリもあります。このアプリは、パイロットが自身の燃料使用量やその他のフライトデータを同僚のパイロットや自分の過去のフライトと比較することが出来るため、運航や効率をより最適化できる余地を自分で見つけられるように設計されています。

アトラス航空が所有するボーイング747をバックに立つデイヴ・キルヒャー(左)とGE Aerospace航空機プログラムバイスプレジデントのマイケル・ジャンシラキューサ。提供:GE Aerospace

GEnxエンジン自体の内部にも改善が重ねられてきました。キルヒャーは次のように説明します。「昨年に私たちのエンジニアリングチームは燃焼器内のホットセクション(高温部分)のハードウェアおよび高圧タービンブレードのアップグレードを完了しました。この部分はエンジンの効率を上げる魔法がはたらく箇所です。このアップグレードで「time on wing」をできるだけ伸ばすことで、エンジンの運用コスト低減に役立つわけです。」

747の生産が終了しても、GEnxエンジンの開発チームはボーイング787ドリームライナー旅客機と787フレイター機で「the engine of choice(選ばれるエンジン)」となることにフォーカスしています。キルヒャーは次のように説明します。「ほとんどのお客様は、787をお選びになる際、GEnx-1Bエンジンとそれ以外の(競合他社の)エンジンのどちらかを選択するオプションがあります。私たちのエンジンの特徴は、787搭載時の公称燃費に比べ少なくとも1.4%優れた燃料消費効率がもたらされることです。これは1機あたり年間40万ドルの燃料費節減に相当します。また、1機あたり年間220万ポンド(約99.8万kg)相当のCO2削減にも役立ちます。これだけでも、より持続可能な未来に向けた私たちのコミットメントの表れです。」

747-8最終号機に最新型のGEnx-2Bエンジンが搭載され、納入が完了したことで、キルヒャーはひとつの時代が終わりを告げたことを目の当たりにしました。ですが、すでに次の時代への歩みは始まっています。

キルヒャーは次のように語ります。「50年近く続いた747の歴史の一部に私たちが携わることができたのはとても光栄なことです。そして、これからもボーイングとの協力を続け、その歴史を担っていきます。そのためには、GEが常に努力してきたこと、つまり、エンジンをさらに改善し、より高効率な、より信頼性の高いものに磨き上げることをこれからも続けることが必要です。すべてはお客様のためです。どうすればお客様にさらなる素晴らしいカスタマーエクスペリエンスを提供できるか。どうすればお客様のビジネスをより成功に導けるか。そしてどうすれば、エンジンを問題なく動かすというシームレスなサービスをお客様にお届けできるのか、私たちは考え続けていくのです。」

キルヒャーが心から満足できるためには、ここからさらに数十年がかかることでしょう。

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