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ヒットの秘訣は音:あのハリウッド大ヒット作のサウンドはどのように作られたか

ニック・ハーム

アメリカ海軍の若き戦闘機パイロットたちの姿を描いたハリウッドの超大作映画のオリジナル版は、1986年に公開され興行的に大成功を収めると、翌年アカデミー賞に4部門でノミネートされました。なかでも評価が高かったのは、“音”に関する主題歌賞、音響賞そして音響効果編集賞でした。

この映画の記憶に残るシーンは、サウンドエンジニアリングによってさらに強い印象を与えるものになりました。冒頭の4分間、航空母艦から戦闘機の発艦と着艦が繰り返されるシーンでは、大ヒットした挿入曲で盛り上がる中、管制室のあるブリッジのすぐ横をかすめるように飛ぶ戦闘機のエンジンから出る轟音が重なりました。さらに、主人公の親友がコクピットからの脱出に失敗するシーンでは、失速を知らせるために鳴り続ける警告音が用いられ、映画の緊迫感をひときわ盛り上げました。

このような高い評価を得た映画の続編のサウンド制作を託される──この高度なミッションはどうやったら達成できるのでしょうか?

今回ミッションを与えられたのは、サウンドデザイン、ミキシング、オーディオ・ポスト・プロダクションを専門とする音響技術の魔術師チーム、スカイウォーカー・サウンド社(Skywalker Sound)でした。

同社の担当チームがジェットエンジンの新たなサウンド・ライブラリーの製作に取りかかろうとした時、アメリカ海軍とパラマウントピクチャーズ(Paramount Pictures)は、戦闘機や旅客機のジェットエンジンを製造する世界トップのメーカーであるGEアビエーションを訪問できるように取り計らいました。ほどなく、スカイウォーカーからの訪問リクエストが、GEアビエーションの幹部であり航空動画ファンでもあるトム・ロッジ(Tom Lodge)の元に届きました。

ロッジはすぐに対応し、スカイウォーカー・サウンドのアル・ネルソン(Al Nelson)リードサウンドデザイナーと打ち合わせに入りました。ロッジは次のように振り返ります。「私たちは彼のニーズについて話し合いましたが、私の推測は外れました。というのも、彼が必要としていたのは、この映画の主役ともいえるF/A-18スーパーホーネット(Super Hornet)に搭載されるGE F414エンジンならではというサウンドではなかったからです。むしろ彼は、前作よりもハイテクな世界観を強調するために、今回の映画の様々な場面で使用されるたくさんのジェットエンジンのサウンドを数多くそろえることに重点を置いていたのです。」

 

GEアビエーションのオハイオ州ピーブルズ(Peebles)のエンジンテスト施設で録音作業するスカイウォーカー・サウンドの音響クルー。トップ画像:オハイオ州シンシナティのランケン(Lunken)空港にて、HF120エンジンを搭載するホンダジェット(HondaJet)の横に立つスカイウォーカー・サウンドのベニー・バート(Benny Burtt、左端)、アル・ネルソン(Al Nelson、右端)の各氏およびGEのダグ・マリンガー(Doug Mallinger、中央左)とダニエル・ビーンズ(Daniel Beans、中央右)。画像提供:GEアビエーション

さまざまなエンジン音を取りそろえるという要望に応えられるのは、GEアビエーションに他なりません。ホンダジェット用の推力2,000ポンドのHF120エンジンから、ボーイング社の最新機777X用の推力10万5,000ポンドのGE9Xエンジンまで、さらにはその間を占めるあらゆる性能のエンジンの製造にGEアビエーションが携わっているからです。

2019年4月、ネルソン氏と同僚のベニー・バート(Benny Burtt)氏は、専用のマイクとコンピューター機材をサンフランシスコ・ベイエリアのスタジオからオハイオ州シンシナティのGEアビエーション本社に空輸しました。そこからさらに目指したのは同じオハイオ州のピーブルズ(Peebles)にあるテストオペレーション施設でした。GEはオハイオ州東部の森にひっそりと佇む7000エーカー(約28㎢:山手線内側の面積の半分弱)の施設で70年近くにわたってエンジンのテストを実施しています。「ジェットエンジンがどのように製造され、テストされるのかを目の当たりにすることは、私たちにとって非常に素晴らしい体験でした。試験設備の規模や計測機器の精巧さは、想像を超え、感動を禁じ得ませんでした」とバート氏は語ります。

ピーブルズでは、スカイウォーカー・サウンドの音響クルーがエンジンテストを実施する技術者たちの綿密な指導に基づき、テストセル内にさまざまな種類のマイクを設置し、丸一日をかけて録音を行いました。例えば、彼らは世界で最も強力な民間航空機用エンジンであるGE9Xのアイドリング状態から最大出力までのサウンドを録音しました。また、天井クレーンが動く時に発する独特な音も録音しました。さらに、GEアビエーションがボーイング787ドリームライナー用に製造したエンジンであるGEnx-1Bの運転音を録音することもできました。

バート氏は次いで、マサチューセッツ州リン(Lynn)にあるGEアビエーションのエンジン施設を訪れ、海軍のMH-60シーホークやさまざまな軍用ヘリコプターが搭載するT700エンジンの運転音も収録しました。そして最後に、映画の主役ともいえる戦闘機のF/A-18スーパーホーネットが搭載するF414エンジンのサウンドをテストセルで録音しました。ロッジは次のように語ります。「GEアビエーションは、米軍、特にアメリカ合衆国海軍と長い歴史があります。私たちは70年以上にわたって米軍の航空機に搭載されるエンジンを供給してきました。今回の映画にもこのような形で貢献できることは光栄なことです。私たちのF414エンジンが、映画の中で用いられる機体の中でも特別な存在であるボーイングF/A-18スーパーホーネットに力強い推力をもたらしている姿を見るのは、とてもインスピレーションに富んだ経験ですね。」

3日間をかけ、スカイウォーカー・サウンドの音響クルーは5種類にわたるそれぞれ独自のサウンドを奏でるエンジン音を録音しました。

ネルソン氏は次のように語ります。「今回GEアビエーションから幅広いご協力をいただき大変感謝しています。皆様の協力と取り計らいのおかげで、通常はアクセスすることすら困難な、非常に特別で、素晴らしいサウンドを録音することができました。」

スカイウォーカー・サウンドのメンバーを案内したGEのチームには、ダン・ミードア、マット・アレン、デイブ・グロス、ブレント・ボッグズ、ジョー・スピルマン、ダニエル・ビーンズ、そしてダグ・マリンジャー(Dan Meador、Matt Allen、Dave Groth、Brent Boggs、Joe Spielmann、Daniel Beanes、Doug Mallinger)も名を連ねています。

ロッジも次のように語ります。「スカイウォーカー・サウンドの皆様と出会い、彼らがいかに多くのプロジェクトを手掛け、多くのサウンドを録音しているのかを知って感動しました。究極の映画体験の裏には、理想的な音源を探求するという創造性豊かなスキルが必要だったのですね。」

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