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水素アイランドへようこそ:中国舟山市コンバインドサイクル発電所の心臓部を担う2基のGE製Hクラスガスタービン

ダイアナ・デリング

中国浙江省・舟山市は上海の南約100マイル(約160km)に位置し、東シナ海の広大な海域に拡がる1,390以上の島々からなる群島にあります。ここは人気の観光地であり、漁業の中心地であり、世界で最も忙しい、物流の盛んな港である寧波・舟山港の片翼を担っています。近年はさらに、中国で最も意欲的な経済開発プロジェクトが次々と承認されています。舟山市に新たな海事産業開発区を設立する政府の優遇政策による取り組みも順調に進んでおり、今後わずか10年ほどで舟山市を「水素アイランド」として、水素をベースとするエネルギー利用の利点を中国全土に示す実証モデルとする計画もその一つです。

舟山市が急成長しているということは、エネルギーの安定供給に対する需要も急速に高まっているということを意味します。この需要に応えるため、国有電力会社である済能(舟山)ガス発電有限公司は、群島最大の島である舟山島でコンバインドサイクル発電所の建設を間もなく開始する予定ですが、その実現に向けてGE Vernovaの技術イノベーションに協力を求めました。同社はGE Vernovaが中国で長期的な戦略的協力協定を締結しているハルビン・エレクトリック(Harbin Electric Corporation:哈爾浜電気股分有限公司)と共同で、GEの9HA.02コンバインドサイクルガスタービン2基の発注を行いました。

「この新しい発電所は舟山がある浙江省における初のガス発電プロジェクトであり、初のHクラスガスタービンプロジェクトでもあります」とGE Vernovaガスパワー・チャイナの大型ガスタービンセールス担当ジェネラルマネージャーを務めるマ・ジュンは語ります。

2025年末までに運転開始を予定しているこの発電所は、舟山に合計1.7GW近くの電力を供給する予定です(一部の電力は他の電源からも供給される予定)。また、9HA.02 DLN2.6e燃焼システムは、体積比で最大10%の水素で運転するというこの発電所の当初の目標を大幅に上回る、最大50%の水素で運転できるように設計されています。

「この低炭素プロジェクトは、舟山の急速な発展による電力需要を満たすだけでなく、浙江省の石炭火力発電所と比較して、よりサステナブルな電力の開発にとっても大きな意味を持つでしょう」とマ・ジュンは語ります。

中国は、遅くとも2030年までにCO2排出量の削減を開始し、2060年には完全なカーボンニュートラルを実現する計画を立てています。そして、ガス発電所は石炭火力発電所と比較してCO2排出量が少ないため、エネルギー転換の進行中も信頼性の高い貴重な電力源であり続けるでしょう。と言うのも、舟山は波力発電や潮流発電の実験なども含め、新たな風力や海洋ベースのエネルギーを開発している一方で、再生可能エネルギーが利用できない場合に需要を満たすためにはガス発電に頼る必要があるからです。そして、新たな発電所は浙江省のグリッド(送配電網)全体の電力供給量を増加することが期待されています。加えて、タービンは迅速なオン/オフが可能であることから、一日を通して電力需要の変化を効率的にサポートすることが可能です。

このようにガス発電所には数多くの利点があります。その中でも評価されている点が、同規模の石炭火力発電所で生成されるCO2排出量に対し、ガス発電所はおよそ50%の排出に抑えることができる点です。さらにGE Vernovaの先進的なHクラステクノロジーを利用すると排出量は3分の1に削減が可能な上、10%の水素混合燃料で運転すると、その効果はより顕著になります。さらに、空気中に放出される水銀、硫黄酸化物、亜酸化窒素も抑えられます。

 

GE Vernova製9HAガスタービンは、現在商業運転されている世界で最も効率的なコンバインドサイクル発電所の心臓部であり、脱炭素化への道における重要な要素となります。トップ画像:舟山発電所の完成予想図。画像提供:GE Vernova

 

「この発電所がフル稼働した場合の1年間で生成するエネルギーと同等のエネルギーを生み出すには、約135万トンの石炭が必要になります」とマ・ジュンは語ります。

新しいコンバインドサイクル発電所は舟山島に中国の第14次5カ年計画の一環として建設された10平方マイル(27㎢)の開発区である舟山ハイテク工業団地に建設されます。この工業団地には、航空宇宙産業、ハイテク港湾設備、新しい海洋エネルギー技術など、それぞれ特定の事業に注力する製造業および研究機関の小規模なクラスターも集積します。

マ・ジュンは次のように説明します。「この工業団地は、政府によって建設された地方産業集積地の一つである舟山海洋産業センター(Zhoushan Marine Industrial Center)の一部となります。同センターはまた、海洋燃料加工、造船などのハブ拠点となる舟山港総合自由貿易区を形成しています。今では登録企業は1万社を超え、舟山港は世界のバンカリング港(貨物船が燃料を補給する港)のトップ10に入っています。」

水素を利用できる発電所が舟山市にとりわけ適している点は、この地域が水素産業に投資し、水素の生産と貯蔵および燃料電池の製造と使用を拡大していることです。すべてが予定通りに進めば、舟山市は再生可能エネルギーと地元で生産された水素を活用するいわゆる「水素アイランド」となり、成長する海洋経済を支え、2035年までにエネルギーの自給自足を実現することになります。

マ・ジュンは次にように指摘します。「工業生産、輸送、発電、その他の分野で水素が利用されることがますます一般的になるでしょう。ついに水素社会が実現するのです。」

国際エネルギー機関(IEA)によると、中国は既に地球最大の水素生産国であり、消費国でもあります。また中国の水素開発に関する国家計画では、水素を生成するため水を電気分解する際に再生可能エネルギー源のみを使用する「グリーン」水素の生産量を2035年までに増やすという目標を掲げています。そのため、舟山で将来にわたってもグリーン水素が活躍することを期待するのは当然と言えるでしょう。

今この瞬間も、GE Vernova とハルビン・エレクトリックは新しいHクラスタービンの納入に注力し、また舟山のこの画期的なプロジェクトに参加できることを誇りに思っています。

マ・ジュンは次にように述べています。「GE Vernovaの最も先進的かつ高効率なガスタービンである9HA.02タービンは、水素混焼をサポートしながら、優れた性能、柔軟性、信頼性を提供します。この新しい発電所は、浙江省のエネルギーインフラの変革とアップグレードにおいて、また電力産業におけるニアゼロ カーボン ミッションの探求において、実証的な役割を果たすでしょう。」

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