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達成しなければならない:サステナビリティのリーダーが語るGEのサステナビリティ・レポート2020年版

トーマス・ケルナー

GEは129年前にビジネスを始めたときから今日まで、常に多くの変化を重ねてきた一方で、脈々と1つのことを続けてきました。それはGEが絶えずイノベーションに注力してきたことです。これにより、世界中の電力会社が多くの人々に電力を供給し、夜の闇を明るく照らす技術がもたらされました。また、最新の医療用画像技術が進歩したことにより、患者を治療する新たな方法を医師が見つけ出すことを可能にしました。さらに、トーマス・エジソンがGEを設立した時にはまだ存在しなかった業種、たとえば旅行業界や航空産業が新たな産業として生まれたことにもGEのイノベーションは貢献してきました。

そして今日では、イノベーションにはさらなる重要な役割があります。つまり、イノベーションによってGEのエンジニアが世界をよりサステナブルなものにしたり、気候変動問題、エネルギー転換、脱炭素化などの迫り来る課題を解決したりするための新たな方策を見出すことにもつながっているのです。さらに、患者さんに応じて診断や治療法をパーソナライズ化し、誰もが十分なヘルスケアを受けられるようにするプレシジョン・ヘルスケアや、よりスマートで効率的な新しい空の旅を実現するという、GEの推進力の源でもあるのです。

「1つですべてが解決できるような画一的なソリューションなどというものは存在しないのです。すべての課題には、個別の状況や経済的要因、そしてさまざまな政治システムやその地域に合わせたソリューションが必要であることを理解しなければなりません。そして、GEは地域や国、都市ごとに異なるそれぞれの課題にふさわしい対処法を見出し、実践できる強みがあるのです」とGEのチーフサステナビリティオフィサーを務めるロジャー・マルテラ(Roger Martella)は述べています。

マルテラは、課題の重要性やその解決にGEがどのように貢献できるかについてより深い知見を有しています。彼はこの数か月間、GEの各事業部門とGEコーポレートにわたる横断的で多様性に富んだチームを率いてGEのサステナビリティ・レポート2020年版の編集に携わってきました。本レポートはGEがサステナビリティについて現在進行中の取り組みと、今後進めるべき工程とを示す100ページの報告書で、7月12日に公開されました。

マルテラは、GEのビジネスのすそ野の広さ、グローバルなリーチ、そして「国際的な違いを理解し、それぞれの状況に合わせて調整したソリューションを提案する」能力により、GEは他社とは一線を画す立場にあると述べています。「私自身、驚きました」と彼は言います。

マルテラは本レポートの公開前夜、GE Reportsのインタビューに応じました。(また、本レポートについてはGEの会長兼CEOを務めるラリー・カルプ(Larry Culp)もLinkedInに投稿しています。投稿の詳細はこちらをご覧ください)

「私はGEに所属する174,000人のうちの1人として今回のレポートをまとめました。彼らは自分が所属する部署のためだけではなく、地球全体にも貢献しています。今回このレポートというソリューションを提案したことは小さな一歩に過ぎませんし、正直その実現には高い壁もあるでしょう。とはいえ、それでも達成しなければならないことも、皆分かっているのです」とGEのチーフサステナビリティオフィサーを務めるロジャー・マルテラ(Roger Martella)は述べています。画像提供:GEレポート。

GEレポート(以下、GER):なぜサステナビリティ・レポートを公開したのでしょうか?

ロジャー・マルテラ(以下、RM):私たち174,000人の全社員は長きにわたり、サステナビリティがGEの企業経営の中核を成すことを理解してきました。なぜなら、取締役会の意見や方針から、課題解決のために必要なテクノロジーを各事業部門が見極めることに至るまで、サステナビリティの観点が必要だからです。このことは社員共通の意識であり、自社に対する誇りにもつながっています。ですが、私たちが社内で果たすべき役割は理解している一方で、サステナビリティに対する取り組みを社外とも共有できているかどうかも、より確かなものにしたいと考えています。サステナビリティ・レポートを公開することにより、お客様やステークホルダーとのパートナーシップをさらに強固なものにできます。そうすることで、GEだけが課題を克服するのではなく、ステークホルダーの皆さんとも協力して喫緊の課題解決を実現できるようになると確信しています。

GER:お客様やパートナーとのコラボレーションについて、もう少し詳しくお聞かせください。

RM:GEはパリ協定に強く賛同しており、各国政府やお客様それぞれの意欲的なCO2排出削減目標を達成できるよう支援しています。昨年、GEは2030年までに自社事業でのカーボンニュートラルというコミットメントを表明しました。これはGEのように大規模かつグローバルに製造業を展開する企業にとって特に大きな意味を持ちます。しかし、GEはさらに先を見据え、販売する製品からのCO2排出量を加えた場合でも、2050年までにCO2排出をネットゼロにするという意欲も持っています。これはScoup3排出量(※)と言われることもあります。こうした排出量削減目標の過程もサステナビリティ・レポートにまとめることにより、お客様とステークホルダーがそれぞれ独自に持つCO2削減目標を達成するうえで、GEがその実現をサポートするために必要なテクノロジーを提供する能力があること、またそのための適切な投資を行っていることをお客様とステークホルダーにお知らせすることができます。これらはすべて、パートナーとの協力体制や、お客様の目標達成のためにテクノロジーを革新するという原点に立ち返ることにつながります。

(※)事業者自らの温室効果ガス排出量だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計したものを「サプライチェーン排出量」という。これはScoup1排出量(燃料の燃焼や事業プロセスなど自社における直接排出)、Scoup2排出量(他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出)、Scoup3排出量(上記2つ以外の間接排出)の3つから構成される。出典:環境省

GEは水素の利用をより広める機会を追求しています、とGEのマルテラは語ります。画像提供:GEガスパワー。

GER:イノベーションは、本レポート全編にわたって共通するテーマですね。

RM:イノベーションは、GEが創業の初日から目標として定めてきたテーマで、GEのDNAの中核となるものです。現在のGEの事業は、地球上で最も差し迫った3つの課題にフォーカスを当てています。一つ目は、エネルギー転換を成功させ、エネルギーセクターを脱炭素化して気候変動問題に対処すると同時に、信頼性のある電力を利用できない10億人ともいわれる人々に、復旧が簡単で持続可能かつ手頃な価格の電力の供給を確保することです。2つ目は、健康的な生活に不可欠な医療サービスへのアクセスがままならない、世界人口の50%を占める層を含め、世界中のすべての人々がプレシジョン・ヘルスの恩恵を受けられるようにすることです。そして3つ目は、最先端の技術によって温室効果ガスの排出を削減することで、よりスマートで効率的な新しい空の旅を実現することです。

これらの3つの課題はそれぞれ違って見えますが、GEが採るアプローチは常に同じです。つまり、GEは世界中の人々の生活の質を向上させるために、最も高効率で、最も先進性に富み、かつ最もアクセスしやすいテクノロジーを常にお客様に提供できるようにしたいと考えています。そして、最新かつ最高のテクノロジーをきちんと提供する一方で、長期的な目標実現とサステナブルな成果を出し続けるために、曲がり角の先にある状況を見越して、今後のブレイクスルーを生み出すテクノロジーに投資しています。これらの挑戦もGEにとって重要かつ有益な機会をもたらすと信じています。

GER:今後のブレイクスルーを生み出すテクノロジーとはどのようなものですか?

はじめに、エネルギー部門に関して言えば、ブレイクスルーを生み出すテクノロジーとして取り上げるのはCO2の回収と隔離です。この2つは、温室効果ガスの排出削減とガスタービンの脱炭素化という長期的な課題に取り組む上で必要な手段の一つです。また、GEのガスタービンがすでにガスと水素の混合物を燃料として利用できることから、水素にも注目しています。GEはさらなる水素の利用およびグリーン水素の製造というビジネスチャンスを追求しています。同時に、次世代の原子力技術である小型モジュール型原子炉開発にも投資しています。さらに、送配電網をさらに強靭なものにするためのテクノロジーも開発していますが、これには再生可能エネルギーから生成した電力をより適切に集約するための物理的なツールと、過酷な気象条件に対処し、送配電網が直面する新たな脅威(サイバー攻撃など)に備えるためのデジタルツールが含まれます。

つぎに、ヘルスケア部門に関して言えば、世界中の誰もがヘルスケアに十分にアクセスでき、あらゆる症状の診断と治療を等しく受けられるようにすることが重要かつ不可欠です。GEはテクノロジーを革新して、世界中のさまざまな状況に対応し、従来は大型だった機器を持ち運びが可能なサイズにしたり、地域的、経済的に異なる条件のもとにある人々がすべてヘルスケアにアクセスできるようにしたり、世界人口の半分にあたる人々が今日でも信頼できるヘルスケアにアクセスできないという状況を改善したりと、世界中のさまざまな状況に対応できるより確かな方策を進めています。これは私たちGEに課せられたサステナビリティのミッションで中心となる要素です。さらに、プレシジョン・ヘルスケアの実現に向けて人口知能も活用しています。

さいごに、アビエーション部門では、過去数十年と比較して燃料消費量とCO2排出量を40%削減することを目指して、ブレイクスルーを生み出す次世代のジェットエンジンとアビエーション技術の開発に取り組んでいます。たとえば先月も、GEはオープンローター設計コンセプトに基づく新型ジェットエンジン開発への取り組みを発表しました。またエンジンだけでなく、サステナブルなジェット燃料を見出すことや、よりサステナブルかつCO2排出量削減のための新たな航空機マネジメントの研究も進めています。

「ヘルスケア部門に関して言えば、世界中の誰もがヘルスケアに十分にアクセスでき、あらゆる症状の診断と治療を等しく受けられるようにすることが重要かつ不可欠です」とマルテラは語ります。画像提供:GEリサーチ。

GER:本当に大きな取り組みですね。どのように実現するおつもりですか?

RM:幸いなことに、サステナビリティはGEの企業経営の中核を成すものです。重要な例として挙げられるのはリーン方式です。リーンであることとサステナブルであることはふたつで一組になるような関係です。リーンであることとは、継続的な改善、効率の向上、リソースのより効果的な利用法を確保することです。それは最終的にGEに成果をもたらし、GEのアカウンタビリティを保つことにつながりますし、私たちが目標に到達するべく正しい方向に進み続けることに役立ちます。このように、リーンであることはGEがサステナビリティにどのように取り組んでいるかということと密接に整合しています。GEは自らの事業運営と同じくらい厳格な方針とともにサステナビリティを推進しています。さらに、GEはテクノロジーを絶え間なく進歩させるとともに、プロセスも継続的に改善したいと考えています。それはソリューションの一部を構成するだけでなく、例えばサプライチェーン全体における人権問題に取り組むことや、資源をより有効に活用し、廃棄物を確実に減らすことも含まれます。そして、最終的には、意欲的な目標を設定したお客様に対し、それを実現するために必要なテクノロジーを提供することにより、GE自らも目標を実現することになるのです。

「アビエーション部門では、過去数十年と比較して燃料消費量とCO2排出量を40%削減することを目指して、ブレイクスルーを生み出す次世代のジェットエンジンとアビエーション技術の開発に取り組んでいます」とマルテラは語ります。上の画像は、CFM社のオープンローターの設計コンセプトを示すものです。画像提供:CFMインターナショナル社。

GER:リーン方式を含めたコンセプトについてちょうど話しているのでお聞きしたいのですが、サステナビリティを巡る大局的なGEのフレームワークとはどのようなものになるのでしょうか?

RM:GEのアプローチを円で表してみましょう。最も外側の層は、GEならではのものです。これは、ビジネス上のミッションを達成することが、これまでに触れたエネルギー、ヘルスケア、そして空の旅に関連するサステナビリティの課題を解決することと同義として存在しています。次の層は、GEが行うすべての意思決定をつかさどるサステナビリティの原則です。これには、GEおよびその関連企業で業務に就くすべての従業員の安全を確保していること、GEが人権を最高レベルで保護していること、エシカル(倫理的)なサプライチェーンを維持していることも含まれます。さらに、(GEが資金提供しているチャリティ団体である)GEファウンデーションを通じて地域コミュニティを活性化し、次世代のエンジニアやリーダーに機会を提供することも含まれます。これには温室効果ガスと気候変動問題に対するGEのコミットメントを含む環境スチュワードシップも含まれますが、そのほかの課題についても積極的にサポートしていくつもりです。これらはすべてGEのサステナビリティ原則を構築するとともに、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも密接に一致しています。

そして、GEにおけるすべての事柄の中心を占めるのが、揺るぎのないインテグリティ(integrity)です。GEの従業員一人一人がこれらの原則を理解しています。すべての意思決定において、ESGと呼ばれることも多い「環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)」の課題への対処がきちんと進んでいることを確認することも含まれます。これらはGEの企業経営の進め方とすべての事業活動の中核ともなります。またグローバル企業として、GEが持つさまざまな視点や幅広いビジネス展開、またその影響力を自覚し、ダイバーシティとインクルージョンにもコミットしています。その他にもやるべきことはまだたくさんありますが、今後はよりダイバーシティとインクルージョンを向上させた職場環境の整備にもコミットしていきます。

GER: あなたはこの数か月間ずっと本レポートの編集に費やしてきました。完成に漕ぎ着けたあなたのモチベーションは何だったのでしょうか?

RM:私は、皆さんや地域コミュニティ、そしてこの地球にとってかけがえのない瞬間にGEの一員であることを本当に光栄に思います。私はGEに所属する174,000人のうちの1人として今回のレポートをまとめました。彼らは自分が所属する部署のためだけではなく、地球全体にも貢献しています。今回このレポートというソリューションを提案したことは小さな一歩に過ぎませんし、正直その実現には高い壁もあるでしょう。とはいえ、それでも達成しなければならないことも、皆分かっているのです。

画像提供:GE

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