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ユナイテッド航空、片方のエンジン1基でSAF 100%の世界初の商業運航を実施

ウィル・パルマー

外から見る限り、ユナイテッド航空が運航したボーイング737 MAX 8には特に変わったところはありませんでした。12月1日に乗客115人を乗せ、シカゴ・オヘア空港からワシントンDCのレーガン・ナショナル空港へごく普通にフライトした同機はこの日、歴史を塗り変えました。乗客を乗せた旅客機として、2基のエンジンのうち1基で100%ドロップインSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を使用した初のフライトとなったのです。

今回のワシントンDCへのフライトに搭乗したユナイテッド航空CEOのスコット・カービー(Scott Kirby)は次のように語りました。「航空業界では代替燃料の生産・購入に向けた取り組みが急速に高まりを見せています。今回のSAFによるフライトは、航空業界の脱炭素化に向けた取り組みとして重要なマイルストーンとなっただけではありません。このタイミングで、業界が一丸となって協力し、気候変動問題という人類最大の課題を乗り越えるためのスケーラブルかつインパクトのあるデモンストレーションを行うことができました。」

12月1日、シカゴ・オヘア空港で滑走路に向かうユナイテッド航空のボーイング737 MAX 8。このデモンストレーションフライトは、機体やインフラに改修を加えることなく、ドロップインSAFによる運航が可能であることを示しました。画像提供:ユナイテッド航空

今回のフライトにはGEアビエーションのCEOを務めるジョン・スラッタリー(John Slattery)も搭乗しました。このジェット機には、GEアビエーションとサフラン・エアクラフト・エンジンズ社が50:50で共同出資しているCFMインターナショナルが開発したLEAP-1Bエンジンが2基搭載されています。GEは自社製エンジン群のSAF利用拡大に向けても研究を進めています。先日エティハド航空ブリティッシュ・エアウェイズ航空が実施したフライトでもSAFを含む混合燃料が使われました。また、GEアビエーションはエミレーツ航空と協働し、2022年末までに100%SAFでのテストフライトも計画中です。

現在、ASTMインターナショナル(ASTM International:SAFの規格認定機関)が定めた国際基準では、航空会社が商業運航の際に使用できるSAFの割合の上限は50%に定められています。そのため、今回のデモンストレーションフライトでは、搭載する1基のエンジンを従来のジェット燃料100%で、もう1基のエンジンをSAF100%で運航しました。なお、両エンジンともそれぞれ約500ガロン(約1,890リットル)の燃料を搭載しました。

今回使用されたSAFは、エンジンや機体に変更を加える必要のない「ドロップイン(drop-in:簡単に交換できる)」であるため、従来からのJet AやJet A-1燃料とも互換性がある燃料です。そのため、航空各社がすでに所有している機材およびその燃料の輸送および貯蔵を担う既存のインフラとも互換性があります。GEアビエーションの航空燃料・添加剤部門のエンジニアリングリーダーを務めるグルハン・アンダック(Gurhan Andac)はSAFと従来のジェット燃料の違いについて、というよりは違いがないことについて「SAFの分子構造を解析しても特定の分子がどの原料から由来するかは判別できないでしょう」と語ります。今回のユナイテッド航空のフライトにも搭乗したアンダックは、バイオ燃料やエンジン用合成燃料の研究とその普及にも重要な役目を担っており、さらに、SAFの混合比100%を目指して航空業界向けの標準仕様を策定する国際タスクフォースの議長も務めています。

SAFについてGEアビエーションが実施してきたテストフライトの中には、これまでにも業界初となったものが数多くありました。初の旅客機によるSAFデモンストレーションフライト(2008年)、大型商用貨物機による初のSAFを使用した大西洋横断飛行(2011年)、初の100%SAF軍用ジェット機飛行(2016年)、そして今年初めにはPtL(Power-to-Liquid)と呼ばれる製造技術を初めて採用し、再生可能エネルギーを利用して水を電気分解して得られた水素と回収したCO2とを合成した液体炭化水素燃料の利用も実現しました。

ユナイテッド航空は今回のフライトで、CFMインターナショナルの他にボーイング社やマラソン社(Marathon)の子会社で100%ドロップインSAFの生産技術を持つバイレント社(Virent)、そして世界初かつ北米で唯一の商用SAF製造企業であるワールド・エナジー社(World Energy)とも協働しました。

SAFへの移行に取り組む航空会社の中で、ユナイテッド航空は最大のコミットメントを果たしていると同社は述べています。昨年春、ユナイテッド航空は「エコ・スカイズ・アライアンス(Eco-Skies Alliance)」プログラムを立ち上げました。このプログラムにより、29社以上の参加企業が今年だけで合計約570万ガロン(約2,158万リットル)のSAF購入に貢献しました。これは約53,000トンの温室効果ガスを削減するのに十分なSAFに相当し、乗客を乗せて3億7,200万マイル(約5億9,870万㎞)超を航行するのに十分な燃料でもあります。

SAFは60種類ほどある原料のいずれからでも製造が可能です。原料には植物油、藻類、グリース、脂肪分、廃棄物の処理過程で発生する物質、アルコール類、糖類、回収したCO2、その他の代替原料やその製造過程で産出する副産物なども含まれます。米国エネルギー省の推定によると、同国内だけで年間500億ガロンから600億ガロン(約1,893億リットルから約2,271億リットル)のSAFを製造できる資源があると推定しています。なお、スタティスタ社(Statista)によると、民間航空会社が1年間に消費する燃料は2019年のピーク時には950億ガロン(約3,596億リットル)でしたが、2021年は年末までに約570億ガロン(約2,158億リットル)に減少する見通しです。また、Air Transport Action Group(ATAG:航空業界のサステナビリティを推進するグローバル連合)と国際航空運送協会(IATA)によると、燃料のライフサイクル全体を考慮した場合、石油からSAFに切り替えることで航空業界は燃料のCO2排出量を最大80%削減することができます。

しかし、これまでのところ航空機が消費する燃料のうちSAFはわずか1%にも満たないのが現状です。SAFへの投資が推進されてより供給力を高めるためには、まず需要が拡大することが重要です。そのため、ユナイテッド航空は今回のフライトが他の航空会社にとって好例となるよう期待を寄せています。CFM社長兼CEOのガエル・メフィスト(Gaël Méheust)は次のように語ります。「ドロップインSAFを利用することは、2050年までにCO2排出量をネットゼロにするという私たち航空業界のコミットメント達成に向けて今すぐにでも採用可能な手段です。CFMの親会社であるGEアビエーションおよびサフラン・エアクラフト・エンジンズ社とともに、こうした意欲的なイニシアティブを実践するユナイテッド航空に賛同し、今後もさらに連携していきたいと考えています。」

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