
Unimpossible Missions – GEの科学者が挑戦 「壁に向かって話した声は、相手に届くか?」
2月11日は、GEの創始者でもあるトーマス・エジソンの誕生日でした。「発明家の日」と定められたこの日、米国では様々な科学関連のイベントが開催されます。GEは今年の記念日を“不可能と思われてきたミッションに挑戦”することで祝福し、それが不可能ではないと証明する動画を公開することにしました。
選んだミッションは3つ。英語圏で「そんなの、不可能だろ!」と言うとき、よく用いられる比喩表現にちなんだものです。相手が全く話を聞いてくれないとき「まるで壁に向かって話してるみたい・・・」と言いますが、今回のミッションでは、壁に向かって話した声をも届けてしまおう、というものです。
Mission #2:Like Talking to a Wall 「壁に向かって話しているみたい?」
GE REPORTSはこのミッションに挑んだ一人、GEグローバル・リサーチの機械エンジニアであるサラ・アンダーウッドの話を聞いてみました。
Unimpossible Missions
壁に向かって話しているみたい? (Like Talking to a Wall)
GE REPORTS:あなたのミッションについて教えてください。
サラ・アンダーウッド(以後、サラ):私はGEのエネルギー事業、アビエーション事業、オイル&ガス事業のプロジェクトに取り組む研究者チームの一員として働いています。私たちは振動、ノイズ測定、ノイズ軽減を専門に研究しています。今回のチーム目標は、コンクリートの壁の片側から朗読する男性の声の振動を感知できるセンサーを開発して、壁の反対側の160ヤード離れた場所にあるスピーカーに振動を選別して送信し、そこ座る子供たちにその声を届けることでした。
GE REPORTS:チームに加わると聞いてどう思いましたか?
サラ:このミッションは想像よりもずっと難しいものになるだろうなと思いました。
GE REPORTS:そうなんですか?
サラ:当初は万里の長城を想定して議論していましたが、適切な選択肢ではないという結論に達しました。一貫性のある媒体ではないからです。万里の長城は岩とレンガでできているので、振動は伝わりにくいんです。コンクリート製であれば、制限要因は壁の厚さと周囲の雑音だけに絞られるんですけどね。
GE REPORTS:この課題にどう対処したんですか?
サラ:平均的な人の声の大きさは約60~70デシベルで、壁に振動を与えます。この振動が壁を通過する際にどの程度阻害されるのか突き止める必要がありました。コンクリートの厚みは少なくとも15センチあると考えていたので、振動は多少阻害されましたが、反対側の壁から振動を感知できないほどではありませんでした。そこで、研究所でいくつかのセンサーを選び出し、壁に取り付けて試してみることにしました。
GE REPORTS:どんなセンサーを選んだのですか?
サラ:レーザー振動計と加速度計を選びました。これらは通常、ジェットエンジンのブレードや機関車エンジン、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)などの振動を測定するのに利用されています。これらのセンサーによって、材料特性や構造健全性などの構成要素を伝える振動を測定することができるんです。大部分は既存のテクノロジーをそのまま利用することができました。
GE REPORTS:ベルリンではどのようなことを行ったんですか。
サラ:1週間滞在し、多くの時間をベルリンの壁のそばで過ごしました。でも、壁のそばで作業したり、壁にものを取り付けたりする許可が下りた時には、実験できる日はすでに1日しか残されていませんでした。ですから手際よく進める必要がありました。
GE REPORTS:研究室でのテストと異なっていたのはどのような点でしたか。
サラ:研究室での作業より、ずっと大変でしたよ。12月でしたし、実験を行った日は寒くて雨も降っていたんです。市販のワックスを利用して加速度計を壁に取り付けることを計画していましたが、冷気でワックスが固まってしまいました。そこで、ワックスを柔らかくするためにヘアドライヤーを使用することにしたんです。こんなこと、研究室ではありえませんから(笑)
それ以外の大きな問題は背景の雑音でした。壁のすぐそばを路面電車や自動車、人が行き交っているんです。壁は地中深くまで埋められていますから、路面電車が通るとセンサーが感知しきれないような多くの振動が発生しました。
GE REPORTS:どのようにして対処したんですか?
サラ:朗読する声をスピーカーから流すことができる、静かなタイミングを待ちました。また、研究室で利用しているものと同じデータ収集ソフトを使って測定された振動を選別し、背景の雑音を取り除いたんです。
GE REPORTS:子供たちの反応はどうでした?
サラ:もっと驚いてもらえるものと思っていました!でもきっと、私たちのやっていたことをよく理解できていなかったんだと思います。壁の前にオシロスコープを置いて、スピーカーから音が出るたびに振動が分かるようにしていたんですが、子供たちはむしろそれを見て喜んでいましたね(笑)