
小さな発電所:GEがサンディア研究所と協力し、太陽光発電と蓄電池のベストな組み合わせを支援
グレガー・マクドナルド
いつものこととはいえ夏の旅行計画を立てるときに頭を悩ませる大問題の1つが天候です。ですが、天候は旅行の計画だけでなく、これまで当たり前だと思っていた私たちの生活や考え方、たとえば信頼できる電力がいつでも確保できるかどうか、ということにも影響を及ぼしています。そこでもし、いくつかの企業や地域コミュニティが自ら小規模な発電所を運営し、天候に左右されることなく、送配電網への依存も抑えることができたとしたら、どうなるでしょう。
かつては驚くべきことだったかもしれませんが、電力会社だけでなく、企業のなかには太陽光発電パネルや蓄電池を設置して自分たちで発電・蓄電することで、地域のマイクログリッド(小規模な送配電網)を構築しようという動きがすでに始まっています。
そして現在、GEリサーチとGEリニューアブルエナジーはこの動きをサポートしようと取り組んでいます。プロジェクトの中には、サンディア国立研究所(Sandia National Laboratories)および米国エネルギー省(DOE)の太陽光エネルギー技術局(Department of Energy’s Solar Energy Technology Office)と協力しているものがあります。このプロジェクトでは「バッテリー・エネルギー蓄電システム(以下BESS:Battery Energy Storage System)」として知られる400キロワットアワー級の容量と、2時間充放電可能な蓄電システムを設計、構築、およびテストするために175万ドル(約2億4千万円)が投じられています。計画ではこの蓄電システムを、ニューヨーク州アルバニー郊外にあるGEのニスカユナ・リサーチキャンパスで、PVソーラーアレイ(太陽光パネルの構成単位。パネルを複数枚並べて接続したもの)と組み合わせて実地試験を行うことになっています。今回のプロジェクトを率いるGEリサーチの主任システムエンジニア、アーメッド・エラサーは次のように話すとともに、ニスカユナで開発中のBESSユニットのようなソリューションについても説明します。「太陽光発電やその他一連の再生可能エネルギー関連のリソースに携わる業界が、これまでにないペースで成長していることを目の当たりにし、期待に胸が高鳴ります。こうしたソリューションが送配電網の信頼性と強靭性を確保する上で重要な役割を果たしていくことになるでしょう。」
(YouTube: 英語のみ)
BESSを利用することでどのように企業が電力を自ら生成・蓄電できるようになるかを説明するGEリサーチのプロジェクトリーダーを務めるアーメッド・エラサー。トップ画像:GE初の再生可能エネルギー蓄電ユニットの前に立つGEリサーチチームのフィル・ハート、ナヴィーナン・ティアガラジャン、ビル・オルーク、そしてエラサー。同蓄電ユニットは、ニスカユナ・リサーチキャンパスにある12MVAのより大規模な「エネルギーの未来テスト施設」の一部を構成しています。画像・動画提供:GEリサーチ
GEはこれまでも各電力会社と協力しBESSを用いて再生可能エネルギー由来の電力を送配電網に送出してきました。近年はさらに、太陽光発電パネルとリチウムイオン電池の価格が低下しているため、商業・産業界でもBESSシステムの導入が拡大しています。これらの新システムは「電力メーターの後ろ側(Behind-the-meter:BTM)(※)」に設置され、こうした蓄電施設の所有者によって制御・運営されています。自身のマイクログリッドを構築することで、電力会社が大口需要家に対して通常料金に上乗せして請求する「デマンドチャージ(日本の“法人向け契約電力料金”に類似)」と呼ばれる高額な割り増し電力料金を回避できることもメリットなのです、とエラサーは説明します。
※BTM:電力会社が電気料金を計算する「電力メーター」を軸に、蓄電施設が顧客側にあると「ビハインド」、電力会社側にあると「フロント」と呼び分けられる。
米国太陽光エネルギー産業協会(The Solar Energy Industries Association)は、太陽光発電の総設備容量のうち、BTMタイプのシステムが昨年のわずか11%から2025年には30%近くを占めるまで成長すると試算しています。また、DOEエネルギー情報局(Energy Information Administration)によると、米国の太陽光発電と蓄電システム合計の年間増加ペースは、2020年のわずか2ギガワットから、2023年には8ギガワットに達する見込みです。
これに関し、エラサーは次のように説明します。「昨今は学校、病院、スーパーマーケット、および中小企業なども、屋上に太陽光発電システムを設置し始めています。しかし、蓄電池がなければ太陽光発電システムで生成される電力の価値を十分に活用することができないのです。その理由のひとつが、余剰に発電した電力を送配電網に戻す必要が多いこともありますが、加えて、それが満足できない価格でしか買い取ってもらえないことがあげられます。自分で消費できる自前の電力をなぜわざわざ送配電網に安値で戻さなければならないのでしょうか。また、BESSを利用することで電気料金の変動や電力会社が請求するピーク時割り増し料金を回避できるのもメリットになるのです。」
現在、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせたシステムの最適な構成を探るために多くの研究が行われています。GEリニューアブルエナジーのハイブリッド部門の最高技術責任者(CTO)を務めるマイク・ボウマンは次のように説明します。「例えば、業界では蓄電池の最適なサイズを見出すことに取り組んでいます。ですが、最適なサイズは蓄電池の種類、価格、およびお客様の電力利用状況によって異なります。しかも、太陽光発電は毎日その日の最も太陽が高い位置にあるときに最大発電量を発揮しますが、その時を基準に蓄電池のサイズを決めたくはないですよね。」GEはさらに、これらのシステムに組み込まれるソフトウェアやその他のハードウェアが蓄電池に左右されることがないように配慮しています。つまり、蓄電池の化学的性能は今後も進化し続けるので「GEはそうした進化にも対応できるようにしたいのです」とボウマンは語ります。
蓄電池は太陽光発電のペースに後れを取るわけにはいきません。太陽光発電は猛烈な速さで利用が拡大し、2017年から2021年までのわずか4年間で世界的に倍増し、今や日本の総発電量に匹敵する電力を世界に送出しています。