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必要なのはスピード感:新たなパートナーシップで、速さが強みの3Dプリンティング技術の普及に弾みをつける

ジェイ・ストウ

金属3Dプリンティング(アディティブ・マニュファクチャリング)が誕生したのはそう昔のことではありません。ですが、その比較的短い年月のうちに3Dプリンティングはエンジニアが設計・生産できるものをがらりと変えました。もちろん、マシンの効率性を高めようとして突飛なコンセプトをあれこれ考え出したデザイナーはこれまでにも存在したでしょう。しかし、その図面に対し、ビジョンを形にするのが仕事の同僚たちは決まってこう質問しました。「でもそれ、本当に作れるの?」と。

答えは大抵「ノー」でした。ところが、金属3Dプリンティングが登場し状況は一変しました。というのも、金属3Dプリンティングの技術を使えば、レーザーや電子ビームによって金属粉末の薄い層を結合させることで、複雑な構造のパーツも作り出せるからです。しかも多くの場合、従来の鋳造や鍛造といった手法と比べて時間とコストを抑えることもできるのです。

GEはこの十年間、アディティブ・マニュファクチャリングの技術を磨き、航空機用エンジンやガスタービン、医療用スキャナーなどの部品を製造してきました。さらに、「GEアディティブ」を立ち上げ、金属3Dプリンターの開発やプリンター用粉末の提供、急成長する金属3Dプリンティング産業へのコンサルティングサービスなどを専門とするビジネスを始めました。

しかし、複製パーツを作るために金属3Dプリンティングを活用する、というのはこの分野のほんの一面でしかありません。デザイナーやエンジニアは金属3Dプリンティングを活用し、開発を迅速に進めてアイデアを「素早くプロトタイプ化」し、実際の条件下でテストし、より良い製品にしています。

GEアディティブのポートフォリオの中で、迅速なプロトタイプ開発と生産という二つの目標の達成を支えている製品の一つが「バインダー・ジェット」です。レーザー式のプリンターよりも少ないエネルギーで、より速く、より多くの部品を製造することができます。

バインダー・ジェット技術では、平らに敷き詰めた金属粉末に独自開発の液状結合剤を噴射しながら動くプリンターヘッドが用いられます。つまり、一層ごとに「のり付け」することで、複雑な形状の部品を作り出します。バインダー・ジェット方式では、レーザーを使って金属を溶解するのではなく、結合剤を噴射して金属粉末を部品の形状に整えます。そのプロセスが終了すると、結合していない粉末の中から成形体を取り出し、工業用オーブンで焼結して強度と耐久性を上げます。

トップ・上部画像:GEアディティブは、インディアナ州を代表する経済開発機関であるインディアナ経済開発公社(IEDC)とともに金属バインダー・ジェットに関わる官民パートナーシップを結ぶことを発表しました。このパートナーシップは、インディアナ州の製造業セクターの長期的な成長を目指す大規模な取り組みの一環となります。バインダー・ジェット技術では、平らに敷き詰めた金属粉末に独自開発の液状結合剤を噴射しながら動くプリンターヘッドが用いられます。つまり、一層ごとに「のり付け」することで、複雑な形状の部品を作り出します。画像提供:GEアディティブ

この技術は、製造業における特定のセグメント、たとえば自動車業界にとって大変魅力的です。この業界では、素早く安定的に部品を量産化する能力が非常に重視されるため、その魅力が一層高まります。こうしたニーズに応えるため、GEアディティブはインディアナ経済開発公社(IEDC)との官民パートナーシップを発表しました。このパートナーシップにより、スマート・マニュファクチャリング・ハブにGEアディティブのバインダー・ジェット技術を提供することで、21世紀の製造技術を学ぶ社会人や研究開発に取り組むテックイノベーターやスタートアップ、製造業者を支援します。

なぜインディアナ州なのでしょうか。それは、同州には8,500もの工場があり、米国でもっとも製造業が集中しているからです。また、同州の自動車セクターはGDP換算で全米第2位の規模を持ち、年間130万台を超える自動車・小型トラックを生産しています。「インディアナ州はテクノロジーに多額の投資を行っています」とGEアディティブのチーフ・テクノロジー・オフィサーを務めるクリスチャン・ファーストス(Christine Furstoss)は述べています。「長年ラストベルトの一部だったインディアナ州には、優れたサプライヤーが多数存在します。同州の得意分野にとことん取り組み、バインダー・ジェットの活用にしても、当社の機器に導入したい新たな技術にしても、インディアナ州と共に協力し合い、将来的には機器用部品のサプライヤーになってもらう。これは、まさに大チャンスです。」

そのチャンスを掴むため、GEアディティブは来年夏にオープン予定のエマージング・マニュファクチャリング・コラボレーション・センター(EMC2)にバインダー・ジェット・プリンター1台を提供します。インディアナポリスのダウンタウンの端に位置する16テック・イノベーション地区(16 Tech Innovation District)に建設予定のEMC2は、GEアディティブが進めるバインダー・ジェットのベータ版開発プロジェクト用研修センターの一つとなり、研修用や製造委託先用に最先端の設備が利用できる環境を提供します。「これはショールームではありません」とファーストスは言います。「本当のコラボレーションのための施設です。」

GEアディティブのイノベーション・リーダーを務めるジョシュ・ムック(Josh Mook)は、GEアビエーションの最新エンジン用金属3Dプリンター製部品の開発に携わった人物です。彼もファーストスに同感だと言います。「産業界とのコラボレーションは、当社の戦略においてまさに中核をなします。当社は、実用的なソリューション開発を支えてくれる戦略的パートナーを見つけ出すことを重視しています。もし、来年ソリューションを市場に展開するとしたら、その初日から実際にバリューを提供できるようにすることがとても重要なのです。」

ベータ版開発プロジェクトにはこれまで、カミンズ(ディーゼルエンジンメーカー)やワブテック(鉄道用部品メーカー)、サンドビック(エンジニアリングツール・金属材料の製造・販売)など、ハイテク業界や自動車セクターから6社のグローバル企業をパートナーとして迎えています。これらの企業はGEアディティブと緊密に連携し、バインダー・ジェット技術の商品化をどう進めるかについて検討しています。工場でのバインダー・ジェット技術の新たな活用方法をともに検討することで、原材料やオートメーション、ソフトウェア開発、さらには人工知能といった分野の進歩につながる可能性があるとGEアディティブは考えています。

肝心なのはスピードです。バインダー・ジェット技術を市場に投入するという観点に加えて、市場自体においてもスピードは重要です。自動車業界での品質管理は航空業界とは大きく異なります。航空業界もアディティブ・テクノロジーの活用が始まっている分野の一つですが、部品の数量(航空機は数百万点であるのに対し自動車は数千点)も求められ、生産スピードも違います。「機械学習や人工知能を活用して、部品を組み立てている最中に品質検査が行える新しい手法。今後も開発を続けていくためにこれらの技術に関する鍵となるパートナーを見つけられることを期待しています」とファーストスは言います。

こうした期待に加えて、ファーストスはラストベルトが広く知られるもととなった工具業界との協働も視野に入れています。「何でもかんでもアディティブで作れるわけではありません」とファーストス。「プレス業も鍛造業もなくなることはありません。ですが、当社が工具業界と協力することで、工具の製造プロセスを短縮することはできないでしょうか。お客様がアディティブ技術を導入する際の障壁は何か、当社は本気でヒアリングしたいと思っています。そして適切な形でお客様と連携し、そうした壁を打ち破るお手伝いをしたいのです。」

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