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「The Initials of a Friend」:GEのモノグラム・ロゴの歴史

ウィル・パルマー

2021年秋、GEは分社化の計画を発表し、ヘルスケア、エネルギー、アビエーションの各ビジネスにフォーカスを絞った3つの独立した上場企業となる計画を発表しました*。そして7月18日、GEは計画されている分社化後に誕生する3社の社名を発表しました。GE HealthCare(GEヘルスケア)、GE Vernova(GEベルノバ)、そしてGE Aerospace(GEエアロスペース)です。130年にわたり刻まれたイノベーションの歴史を背景に、この3社はそれぞれ各業界のリーディングカンパニーとしておなじみのGEという名称と、“G”と“E”のイニシャルが入り、トーマス・エジソンにまで遡ることができる、あの有名な丸いモノグラム・ロゴを継承します。

今後、GEのモノグラムは3つの新会社で異なる紫、緑、青の色合いを用い、それぞれが新会社のカラースキームを反映するものの、色以外は現在とまったく同じデザインです。

ところで、GEのモノグラムはどのようにして世界中で最も良く知られたロゴの一つになったのでしょうか。

後にGEのモノグラムにまで進化したデザインの誕生は、1892年、ニューヨーク州スケネクタディでの会社設立にまで遡ります。その春、J.P.モルガンは、スケネクタディのエジソン・ゼネラル・エレクトリック社(Edison General Electric Company)とマサチューセッツ州リンのトムソン&ヒューストン社(Thomson & Houston Co.)の合併を提案し、ゼネラル・エレクトリック社(The General Electric Company)が誕生したのです。

誰が最初にデザインしたのかという謎には諸説ありますが、中でも長年受け入れられてきたのがGEのカタログ部門のアーサー・L・リッチ(Arthur L. Rich)という社員が考案したという説です。1927年にGEモノグラム誌(GE Monogram)に掲載されたリッチ自身の記事によると、彼の手書き文字は抜群に上手だったので、知人であるG.E.ゲベスト(G.E. Gebest)がリッチの地元のオハイオ州ザンスビルに立ち寄った際、持ってきたバイオリンケースに自分のイニシャルを描いてくれるように依頼しました。「ある日、ゲベストがやってきて、私の『美しい手書き文字』で彼のイニシャルであるG.E.G.をケースに書いてくれと頼んできたんです。」

1899年、GEがこのロゴの著作権を取得したいと考えた際に、このデザインの発案者を探し出そうとしましたが、はっきりした答えは得られませんでした。リッチは、会社の幹部が何年も前にシーリングファンのモーターを覆うガードのデザインを考えてくれと頼まれたことを思い出し、その時にまつわるいきさつを次のように記しています。「ある晩、『ゼネラル・エレクトリック』らしいデザインは何だろうと考えていた私は、無意識のうちに日頃使う字体でGEというイニシャルを書き、ゲベストのために以前作った同じようなモノグラムをすぐに思い出したのです。そこで、その周りを一筆書きでリング状にぐるりと囲み、さらに4つの曲線を内側に伸ばして入れてみたら、いい感じになったんです。」

しかし、その間に何人もの人がこのできごとを起源とする説に疑問を呈し、競合する説が次々と出てきたのです。そう語るのはGEの歴史に関するアーカイブを所蔵するニューヨーク州のSchenectady’s Museum of Innovation and Scienceのコレクション・展示担当ヴァイスプレジデント、クリス・ハンター氏(Chris Hunter)です。「まったく新しい説というものさえいまだに出てくるんですよ」と彼は語ります。

いまや伝説となった「G」と「E」をしたためるために最初に紙とペンをとった人物が誰であれ、このシンボルは、1898年にGEのシーリングファンから吊り下げられた照明用ペンダントに使用されたのが最初と言われています。そのアールヌーボー調のロゴは、現在私たちが目にする「GE」とほぼ同じ字体だったものの、周りを囲む飾りリングは、その後何度も変更されてきました。

当時、GEは照明器具をはじめとする消費者向け製品の販売を開始していました。これは、GEが米国内および国外で建設していた送配電網事業を補完する事業でしたが、この2つの事業は両輪として並行して展開されていました。そこでGEは、製品と広告を結びつける「エンブレム」が必要だと考えたのです。

GE創設時の重役も務めたJ.R.ラブジョイ(J.R.Lovejoy)は1899年に次のように記しています。「ファンモーターにはシンプルなモノグラムを使用していますが、これは他のすべての商品でも活用できます。会社の名前としては商標を必要としませんでしたが、ディーラーや販売店に取り扱われるGEの商品には、そのパッケージや箱に特徴的なマークを付けることが必要だったのです。」こうしてGEのロゴは、1899年に米国特許商標庁に出願され、1900年に登録されました。

その後数十年にわたりモノグラムはGEの広告の中で使われ続けたものの、広告代理店BBDOのブルース・バートン氏(Bruce Barton)が「The Initials of a Friend(友人のイニシャル)」と題した雑誌広告を展開した1923年までは本格的に活用されることはありませんでした。

この年、照明用ランプから列車のエンジン、家電製品に至るまで広告が展開されました。「GとEの2文字を、電気で動く多くの家電や道具に見つけることができます。これらの製品は、暗闇を明るく照らし、あなたの生活を楽にします。GとEの2文字は単なる商標ではありません。この2文字はサービスの象徴であり、友人のイニシャルとも言えるのです。」こうして、GEのビジュアル・アイデンティティは、21世紀の言葉で言うと「viral(SNSによる口コミであっという間に広がる)」したのです。

GEのロゴは、当時ハリウッドの映画スターでのちに大統領を2期務めたロナルド・レーガン(Ronald Reagan)がホスト役を務めた「ゼネラル・エレクトリック・シアター」のテレビシリーズで、1950年代を通じて郊外の家庭用テレビ向けにも映り続けました。1964年のニューヨーク万博のポスターにも赤で表示され、GEが後援するプログレスランドと呼ばれたディズニーのテーマパークを宣伝しました。このテーマパークはすぐに日の目を見ることはありませんでしたが、後にフロリダ州オーランドに建設されたディズニーワールドのEPCOTセンターのモデルとなりました。

このロゴがいかに人々の意識に定着したかは、1980年代に入り、アートとして表現されるようになったことからも明らかです。1985年、ニューヨークのトニー・シャフラジ・ギャラリー(Tony Shafrazi Gallery)は、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)とジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)のコラボレーション展を開催し、その中にGEのモノグラムを使ったシリーズも展示されました。「General Electric with Waiter」という作品では、ウォーホルがロゴをシルクスクリーンで描き、バスキアがネオンレッドのペイントを加えて、モチーフとしていたずら書きのような自動車とドリンク用トレイを運ぶウェイターが描かれました。

1909年から2004年までGEモノグラムは黒い背景に白い文字で構成され線の太さとリングの周りの「ディンバット」の形だけが変更されてきました。2004年のリニューアルでは、より温かみのある親しみやすいイメージを目指し、淡く明るい色調のロゴに変更されました。2004年以来変わらないGEモノグラムのフォルムは、2022年現在、正式なデザインであるミディアムブルーに変更されています。

今世紀に入り、新たなビジネスへの参入に伴いGEのモノグラムはスポーツの世界にもおよび、ますます多くの場面で見かけるようになりました。2017年、GEはボストンを本拠地とするNBAのボストン・セルティックスのデータおよび分析パートナーとなり、3シーズンの間、チームの緑のユニフォームに白いパッチでGEロゴが使用されました。

1909年から2004年までGEモノグラムは黒い背景に白い文字で構成され線の太さとリングの周りの「ディンバット」の形だけが変更されてきました。2004年のリニューアルでは、より温かみのある親しみやすいイメージを目指し、淡く明るい色調のロゴに変更されました。2004年以来変わらないGEモノグラムのフォルムは、2022年現在、正式なデザインであるミディアムブルーに変更されています。

今世紀に入り、新たなビジネスへの参入に伴いGEのモノグラムはスポーツの世界にもおよび、ますます多くの場面で見かけるようになりました。2017年、GEはボストンを本拠地とするNBAのボストン・セルティックスのデータおよび分析パートナーとなり、3シーズンの間、チームの緑のユニフォームに白いパッチでGEロゴが使用されました。

印象づけていくことになります。

注記:

グレン・マクラ氏(Glenn Macura)の調査、および本記事の執筆にご協力いただいたMuseum of Innovation and Science in Schenectadyのクリス・ハンター氏に感謝の意を表します。

画像提供:Museum of Innovation and Science in SchenectadyおよびGE

*これらの予定については、一部地域では法律によって義務付けられた協議の結果の対象となる場合があります

**インターブランド社『Best Global Bland 2021』による

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