ロゴ

修理の匠:シンガポールの修理工場がアジアの電力供給をさらに拡充

アジア太平洋地域では、5000万人近い人が電気のない暮らしをしています。この人々に電力を供給するにはどうすればいいのでしょうか?各国の政府や企業はこの難題を解決しようと、何十年にもわたって取り組んでいます。どうやらその解決に、GEとシンガポールに新設されるGEのHA型ガスタービン修理技術開発センターが貢献できそうです。

GE製の発電装置は世界の電力の3分の1以上を生み出しており、GEは電力供給についての豊富な知識を有しています。その知識は発電装置の設計と送電網の構築にとどまらず、それらの設備の維持管理も含みます。ここでシンガポールの出番です。教育レベルの高い労働力と大規模な港に注目したGEが、この国に工場を設置したのは1969年のことでした。

今回、HA型ガスタービン修理技術開発センターが新設されることになったこの施設は、過去半世紀にわたり、主に故障した発電装置やガスタービン、蒸気タービンの修理を担ってきました。しかし、アジアの人口と電力需要が膨らみ電力へのアクセスが不可欠になる中、GEは同地域への支援の拡充が必要であることに気がつきました。

先日、GEはシンガポールの既存施設に最大6,000万米ドルを投資すると発表しました。この投資は、新たに加わる最大160人の熟練工の技能研修と、より高度な修理技術を開発する研究開発センターの設置に充てられます。これにより、記録を次々と塗り替えてきたGEのHAガスタービンなどの最新技術を含む複数の装置の修理が可能になります。

GEガスパワーアジアのプレジデント、ラメシュ・シンガラムは、「この新しい施設により、地域内のお客様へのサポートを拡充し、グローバルなサプライチェーンへのアクセスと24時間のサービスを提供できるようになります」と述べています。

今回の新たな投資により、GEはシンガポールのHA型ガスタービン修理技術開発センターに約160人の作業員を加えることができます。
同センターでは、ガスタービンブレード、ローター、航空機転用型タービン(ジェットエンジンを転用した発電装置)部品の修理を行っています。

最上部および上部画像提供:GEパワー

GEが開発したHAタービンは2種類あります。米国のほか、日本、韓国、フィリピン、台湾を含むアジアなどの60ヘルツ向けの7HAと、欧州、中国、インドなどの50ヘルツ向けの9HAです。2016年、9HAタービンを初めて導入したフランスのEDFブシャン火力発電所が送電端効率62.22%を記録し、 ギネス世界記録に認定されました。その2年後には、7HAガスタービンを導入した 日本の中部電力(現JERA)西名古屋火力発電所が送電端効率63.08%を記録しました。

これはどれくらいすごいでしょうか?ほんの10年前には、発電効率が60%を超えるのは、音速の壁を破る、あるいは1マイル(1.6キロ)を4分で走ることと同じレベルの偉業だと考えられていました。しかし、2014年に状況は変わり始めます。GEが超高効率のHAガスタービンシリーズ(Hはhigh-efficiency=高効率、Aはair-cooled=空冷式を表す)を発売すると、新記録が次々と打ち立てられるようになったのです。

この技術の最新モデルは「7HA.03」と名付けられ、さらに高いレベルを目指しています。HAの排気エネルギーを利用する蒸気タービンと合わせれば、天然ガス1立方フィート(0.03㎥)から発電できる電力を、先行機種の7HA.02と比べて0.4%増やすことができます。

ガス価格がたいへん高いアジアでは、この最新モデルにより、7HA.02型と比べて400万米ドル近くを節減できる可能性があります。HAが世界で最も急速に普及しているガスタービンになったのも不思議ではありません。これまでに、18カ国40社以上から合計101基の受注を獲得しています。そのうち3分の1近くがアジア太平洋地域に設置済み、もしくは受注済みです。アジアの成長軌道を見れば、この地域に導入されるHAタービンの比率が拡大することは確実です。

アジアにおいてHAタービンの更なる普及が待ち望まれています。冷暖房や調理に使う安定した電力を利用できない環境にあるアジアの人々は、主に薪を燃料として使っています。薪は空気を汚す上に非効率で、森林破壊にもつながります。電力アクセスの拡大と、すでに電力を利用している人々の需要拡大への対応に向けて、アジア諸国では今後10年間で400GW以上の発電能力の拡大が見込まれています。これはドイツの電力量の2倍近くに相当する量です。この大半は再生可能電力が占めることになりますが、必要不可欠な140GW前後は安定性のある天然ガスで賄われる見込みです。

現時点では、電力会社などがHAタービンの保守点検を必要とする場合、米国のサウスカロライナ州グリーンビルにあるGEの修理工場に依頼しなければなりません。しかし、今回のシンガポールへの投資によって、この状況が変わります。HAタービンを保有するアジアの企業は、拡充されるシンガポールの施設に点検を依頼できるようになります。「電力に関しては、お客様企業は20年先を見越して投資判断をします。ですから、当社には信頼できる有能なエンジニアがおり、リアルタイムでお客様をサポートできるということを周知することが重要です」とシンガラムはいいます。

総面積3万7000平方メートルに及ぶGEのシンガポールの施設では、現在も250人の作業員がガスタービンブレード、ローター、航空機転用型タービン(ジェットエンジンを転用した発電装置)部品の修理に当たっています。今回の投資により、GEはさらに複雑なHAタービンの修理を担当する約160人を新たに加えることができます。

新しい作業員の一部は、パワーノズルやブレードなどのHAのハイテク部品の修理を迅速化する方法の開発に取り組むことになります。優先度の高いものとして、部品のコーティング方法や冷却システムの再穿孔の方法の改善があります。2021年までに、アジア太平洋地域のお客様企業の平均修理期間を、現在の4カ月から2カ月短縮することを目標としています。

このようなHAガスタービン修理における大きな進歩は、アジアの電力供給を環境負荷の少ない方法で大きく拡大するために不可欠です。天然ガスは燃焼による汚染物質の排出が最も少ない化石燃料であり、HAガスタービンは太陽光発電や風力発電などの再生可能電力を補完する電力源として極めて重要だとシンガラムは説明します。「特にアジア地域では、HAガスタービンは多くの国にとって救世主になりえます。短時間で起動することで再生可能電力を補完する電力源として機動的に活用でき、一種のセーフティネットを提供することができるからです」

 

メール配信メール配信