
フォード生産方式の次へ。GEの場合は「ブリリアント・ファクトリー」
大量生産が製造業に革命的な変化を起こして以来、製造業のビッグデータやソフトウエアをベースにした
GEの『ブリリアント・ファクトリー(BrilliantFactory)』が製造業を新たな形へと変化させようとしています 。
「小さな仕事に分けていけば、何事も特に難しいことはない」
ヘンリー・フォードがこう語り、T型フォードの大量生産で製造業に革命的な変化を起こしてから200年あまり。ソフトウェアやデータ、アナリティクスの急激な進化は今、製造業を新たな形へと変化させようとしています。『ブリリアント・ファクトリー』とも呼ばれる製造業の新たな変化。いったい何がそんなに『ブリリアント』なのか?GEグローバル・リサーチでグローバル・テクノロジー分野のディレクターを務めるクリスティーン・ファルストスに、GEが目指す次世代の製造業について聞きました。
GE Reports: 『ブリリアント・ファクトリー』とは?
クリスティーン・ファルストス: 『ブリリアント・ファクトリー』は、常に最新のテクノロジーを導入し、リアルタイムなデータ活用でオペレーションを最適化する、GEの“考え方”です。優れたセンサーや管理システムによって、かつてないほど大量のデータを収集することが可能になりましたよね。先進ソフトウェアや分析技術でこれまで以上に高度なデータ分析を行うことも可能です。たとえば、工場内でのプロセスがどれだけ有効に機能しているかを把握できれば、より適切に対応可能です。リアルタイムで事態を把握、対処し、何かあっても、最高品質を維持しつつ期限どおりの納品を実現する。これが『ブリリアント・ファクトリー』です。
GEグローバル・リサーチのグローバル・テクノロジー分野ディレクター、クリスティーン・ファルストス
画像:GEグローバル・リサーチ
“考え方”と言ったのは、世界中に二つと同じ工場はないから。GEは世界中に400の工場を展開していますが、照明機器から発電用のターボ製品、医療機器に至るまで、個々の工場がそれぞれのオペレーションで様々な製品を製造しています。作っているものも違えば、工場のニーズもさまざま。異なる工場に対しても、『ブリリアント・ファクトリー』の考え方を用いれば、多様なソリューションを備えたツールキットを構築できます。ある工場にとってはデータ収集のためのセンサー、データ分析プログラムの一種かもしれませんし、別の工場では問題発生時にマシンを切り替え、リアルタイムで適合させる管理システムかもしれません。
ですから『ブリリアント・ファクトリー』は、恒常的な業務の変化に対応し 状況やタイミングに合わせた最適なソリューションを提供するための技術を活用した取り組み、と言っていいかもしれないですね。
GE Reports: なぜ今、『ブリリアント・ファクトリー』なのでしょう?
クリスティーン: 本格的に導入できるようになったのはここ3~4年、『インダストリアル・インターネット』が出現して膨大なデータ管理が可能になってからのこと。これまで製造過程では収集不可能だった貴重なデータも、今では大量に集めることが可能になりました。こうしたデータを送信・保管し、その重要度を判別し、分析する。このプロセスが、『ブリリアント・ファクトリー』の実現に非常に重要だからです。
GE Reports: 『ブリリアント・ファクトリー』の効果は?
クリスティーン: 生産性や売上総利益を追求し、成果や信頼性だけでなく、オペレーションや即応力でも業界最高水準の素晴らしい製品を提供するための取り組みが『ブリリアント・ファクトリー』です。もし、この取り組みをGE全体で実現できれば、サプライチェーンの生産性を1%向上するだけで、GE全体で最大5億ドルもの節減につながります。
GE Reports: 将来的な可能性についてはどうでしょう?
クリスティーン: 今は活用できるテクノロジーが見え始め、ようやくスタートラインにたったところ。真のデジタル化に向けてやるべきことは山積しています。たとえば、まだ私たちはデジタル・スレッド(プロセスで実行される連続的な処理の流れ)と完全に連動しているわけではありません。これまでに、製品設計のハンドブックに掲載している設計ルールや材料特性をデジタル化しました。これによって、マシンの稼働状態はどうか、切削工具は適切な状況で使用されているかどうか、といったことを情報収集できます。
例えば、何らかのミスで正常に機能していない箇所が発覚したケースを考えてみてください。わざわざ設備を解体して確認しなくても、設計の意図、ルールや過程を瞬時に見直し、顧客の設計意図や期待をすべて確実に満たすために、どのように調整を施すべきかが分かるようになります。
データ分析に数日あるいは数週間を費やすこともなく、こうした判断が数秒間でできるようになるんです。ゆくゆくは、こうした最適化に向けた意思決定が、工場だけでなく、個々のプロセスレベルにまで浸透していくでしょう。これこそが『ブリリアント・ファクトリー』の実現だと考えています。