
スイッチが切り替わる:送配電網業界のグローバルリーダー2社が電力業界の脱炭素化を支援するための取り組みに合意
サム・ウォーレー
トーマス・ケルナー
高電圧変電所とはいたるところで見られる施設です。発電された電力を長距離にわたって伝送したり、家庭や企業で使用したりできるよう電圧を調整しています。各地の高電圧変電所は約半世紀にわたり、消弧(しょうこ:電極間に起こる弧状の放電を消すこと)機能を併せ持つ高機能な絶縁体を利用することで、極めて限られたスペースでの維持管理を可能にしてきました。ただ、その絶縁体として六フッ化硫黄(SF6)と呼ばれるガスを使用していることが問題視されています。大気中に何千年もの間残留する懸念があり、世界で最も厄介な温室効果ガスの一つだからです。今後、各国の発電事業者はどう対応したら良いのでしょうか。
GEリニューアブルエナジーのグリッドソリューション部門は解決策を見出しました。この度、業界内のもう一方の雄である日立ABBパワーグリッド社とともにSF6ガスを使用しない初の開閉器を導入し、両社は環境問題の解決に向けて協働することになりました。「アースデイ(地球の日)」の前日の4月21日(水)、両社はSF6の代替となりより環境にやさしいガス絶縁体の技術開発に関し、特許を相互利用する非独占的なクロスライセンス契約を締結したと発表しました。この合意により、電力会社と産業界は温室効果ガス排出量をさらに削減できるようになります。
SF6の代替となるのが、GEのg³ガス(「g-cubed」と発音)です。これはSF6と同等な絶縁および開閉性能がありながら、SF6の地球温暖化係数(※)を99%以上低減する絶縁および開閉器向けガスです。またg³ガスに代替しても、変電所は従来のSF6用機器と同様にコンパクトな寸法を維持し、性能を確保した機器を設置できる点も評価されます。
※地球温暖化係数(GWP: global warming potential)ある温室効果ガスが地球温暖化にもたらす効果の程度を、CO2の当該効果に対する比で表したもの。CO2のGWPを1としたとき、六フッ化硫黄ガスは23,900になる。出典:環境省
g³絶縁および開閉器向けガスは、GEのグリッドソリューション部門が3M社と10年以上共同で進めてきた研究開発の成果です。 GEグリッドソリューションのCEOを務めるハイナー・マークホフ(Heiner Markhoff)は次のように述べています。「発電事業者は自らの環境への影響と地域社会や周囲の環境に与える影響について、ますます意識するようになっています。本日の画期的な合意は、これらのお客さまの温室効果ガス排出量削減を支援するという我々のコミットメントを強化するものです。」

現在、23の主要な電力会社がすでにGEのg³ガス絶縁機器を高電圧ネットワークに採用し、送電網においてCO2に換算すると100万トン相当温暖化ガスが削減されました。これは約476,000台のガソリン車が1年間路上から姿を消すことになります。
合意に基づき、両社はSF6フリーなソリューションに関連する補完的な知的財産を共有することになります。その一方で、両社はそれぞれのガスソリューションの製品開発、製造、販売、マーケティングおよびサービス活動を完全に独自に行います。また、両社はそれぞれの知的財産に独自にライセンスの条件を付与し設定することで、業界および公正な競争のためのサプライヤーベースの多様性も保っていきます。「今回のクロスライセンス契約は、カーボンニュートラルな未来をめざし、エネルギー転換を加速させるためのコミットメントの一環であり、お客さまのニーズに応える標準的なソリューションの提供をめざすものです」と日立ABBパワーグリッド社の高電圧機器事業部門のマネージングディレクターを務めるマルクス・ハイムバッハ(Markus Heimbach)は述べています。
今回の合意は電力業界にとって、SF6ガスからの代替移行と、よりクリーンな送配電網の構築を今後何世代にもわたり世界中で可能にする標準的なガスソリューションを提供するための、まさに歴史的なマイルストーンになりました。