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スイス連邦エネルギー局が今冬の電力不足解消にGEのエアロデリバティブ・タービンを採用

ウィル・パーマー

アルプス山脈にある何百もの湖に恵まれたスイスでは、電力の60%近くを水力発電でまかない、さらに30%を原子力発電、残りのほとんどは再生可能エネルギーでまかなっています。ですが、今冬予想されるさらなる電力需要に対応するため、スイスはGEのテクノロジーに着目し、このたびエアロデリバティブ・タービンの導入を決定しました。

この冬懸念される電力不足に対応するため、スイス連邦エネルギー局(The Swiss Federal Office of Energy)はGEガスパワーと4年間の契約を締結しました。運搬が可能なTM2500エアロデリバティブ(航空機用エンジン転用型)タービン8基をリースし、一年で最も寒い時期を乗り切るためです。

ボーイング747、767、エアバスA310、マクドネル・ダグラスMD-11に搭載されているGEのCF6ジェットエンジンのテクノロジーから生まれた「TM」(トレーラーマウントの略)タービンについて「その名の通りトレーラートラックに積載して迅速に運搬できるうえ、数日で設置できます」と説明するのはGEガスパワーのエアロデリバティブ ビジネス担当ゼネラルマネージャー、アマン・ジョシです。TM2500は、設置が完了すればわずか5分で出力の増減が可能になるので、燃料のムダな消費を抑えることもできます。また、燃料の天然ガスが不足した場合でもさまざまな種類の燃料で運転が可能であり、ディーゼル燃料あるいは水素混焼、さらにはSAF(持続可能な航空燃料)を混合したジェット燃料などが例に挙げられます。このような特長が評価され、TM2500は世界中で300基以上が導入され、累計600万時間を超える運転時間を記録しています。

非常に早い立ち上がりが可能なTM2500エアロデリバティブガスタービン。トップ画像:スイスのベアにあるGEマニュファクチャリングセンター。画像提供:GEガスパワー

このTMガスタービンが期間限定で稼働する予備発電所は、スイス・チューリッヒから西に約20マイル(約30キロメートル)のアールガウ州ベア(Birr)にあるGEマニュファクチャリングセンターに設置される予定です。8基のTMタービンはそれぞれ30MW以上、合計250MWの電力を送配電網に供給する予定です。基礎部、水タンク、燃料タンク、変圧器など送配電網への高電圧接続に対応する関連インフラは2023年2月までに整備される予定です。また、タービンユニットは想定される最大需要期に合わせて順次出荷されます。今回の契約は2026年の冬まで継続される見通しです。

こうした電力不足が生じている理由として、現在スイスには予測不可能な異常事態がいくつも降りかかっていることが挙げられます。フランスの多くの原子力発電所の運用停止、ウクライナ紛争を機に起こった欧州エネルギー市場の混乱、さらに昨冬から今夏にかけての干ばつなどから、今後も同国には新たな電力供給源が必要となると予想されます。また、スイスは太陽光発電システム、風力発電、地熱発電など、再生可能エネルギーによる発電能力増強をとりわけ重視しており2050年までに国内で消費するすべての電力を再生可能エネルギーでまかなうことを目標としています。

GEガスパワー・スイスの最高技術責任者(CTO)を務めるクリスチャン・フェルホーヴェンは次のように語ります。「電力需要がますます高まってきています。スイスでは電気自動車が急速に普及し、住宅用暖房の熱源も化石燃料から、電気を必要とするヒートポンプに変わりつつあります。そのため、より多くの電力が必要とされているのです。」

こうした背景からも、今回のTM2500ガスタービン導入への取り組みはすぐにまとまりました。ジョシは次のように語ります。「スイスが直面する問題を解決するためにチームが一丸となって迅速に取り組んでいる姿を目の当たりにして、私はとてもうれしく感じています。」

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