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需要と供給バランスをより適切にーIoTアプリで再エネによる電気をもっと家庭へ

短時間で、複雑な問題解決を開発者に課すハッカソンと呼ばれる手法は、コンピュータープログラマーにとってはオリンピックのようなものです。このハッカソンに参加するチームは通常は、賞金やプロフェッショナルや仲間からの賞賛のために競い合います。しかし昨年の秋、崇高にも地球を良くするための行動を提案するチームがいました。

サンフランシスコで昨年開催されたGEの「Minds+Machines」イベントにて、産業向けIoTの実用的なアプリ開発を狙いとした第1回目のAppathonが行われ、約100名の参加者が計30時間、競い合いました。マイクロソフトのシニア・プログラム・マネージャーChristian Bergは当時を振り返りました。「極めて短時間で優れた価値を生み出すことが求められました。そこで私たちはレーザーのようにフォーカスして取り組んだのです。」

Bergとマイクロソフトの4人の同僚、Mike Zawacki、Maarten van de Bospoort、Jenna Goodward とShirley Wang(いずれも中国出身)によるチームは「ブリング・ユア・オン・デバイス(「自分の機器を持ち込む」の意。英語の頭文字を取ってBYOD)」部門で、その名もずばり、BYOデバイスという名のアプリを開発し勝利を収めました。このアプリは、系統における電力需要と再生可能エネルギー由来の発電量から、電化製品を使うのに最適な時間を提案し、結果的に再エネ由来の電力消費を最大化させよう、というものです。

このBYODアプリは増え続けるIoTデバイスを活用しています。このBYODアプリは、電気自動車、プリンター、食洗機、携帯電話、洗濯機、冷蔵庫、照明器具やノートPCといった多くの家電・IoT機器にダウンロードすることができ、この結果、より多くの機器がネットワークにつながります。すると、このアプリはさらに改善され、よい情報を提供することが可能となります。

マイクロソフトのチームが開発したこのアプリは、Predix(プレディックス)で集めたデータを活用し、最適な充電時間や消費・放電時間を決定し、機器がより賢く電力消費をおこなうように指示します。このアプリは現在の電力需要を判断し、ある期間における、再エネ由来の発電された電力の割合を考慮します。マイクロソフトの再生可能エネルギー・シニアプログラム・マネージャーのJenna Goodwardは次のように述べています。「このアプリは世界中の機器に、電力を使うのに最適な時間を知らせる信号を送信します。」 例えば、このアプリを入れていれば、ノートパソコンの電源コードが午後10時にコンセントに接続されても、午前3時までは充電は始まらないようになるのです。また、100%再エネで発電されている場合、サーモスタットには、ビルの冷房を過剰におこなわないよう終日アラームが表示されるといった具合です。

チームは当初、ブレインストーミングで2つの可能性のあるアイディアを検討していましたが、最終的にはBYODアプリは何百万人も利用することができる拡張可能性があるという点で、際立っていました。

このBYODアプリは様々な要因を考慮します。系統に供給される再生可能エネルギーの最大値、一般家庭向けにおける電気料金、消費履歴など、そしてもっともクリーンでコスト効果が高いのはいつかを予想し、アプリが搭載されている機器に電力を供給します。

(写真提供:ゲッティイメージ)

マイクロソフトの上級開発者であるZawackiは「需要と供給を一致させるチャンスです。」と述べています。BYODアプリを多くの機器に導入・活用すると、電力会社は需要の大きな変化を受けにくくなります。例えば、夏の暑い午後6時頃、人々が帰宅しエアコンのスイッチをいれる頃には一般的には電力使用量が急増しますが、BYODアプリはエアコンで家をすこし暖かくし、電力消費の急激な山を減らすようにアラームを出します。こうすることで系統をより効率的にし、エアコンの運転コストもより下がることが期待されます。

このアプリはまた、発電事業者が電力需要の山を平準化させるため「シナリオ」をつくります。例えば、アプリに接続された食洗機や衣類乾燥機には人々が帰宅時間を迎える前にゆっくりと動くように指示をする、また帰宅する頃には電気自動車により十分な電力が蓄えられるように指示します。さらにPredixを使用して収集されたデータを通じて、晴れている日に電気代が一時的に下がるような場合には、ノートパソコンとヒーターはすぐに充電をおこなうよう信号がアプリから送信されるようになります。

これからは、株式市場のように電力需要の上下を予想するアプリを、開発することもできるかもしれませんね。

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