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太陽と砂の大地に水を:太陽光発電で海水を淡水化、サウジアラビアに新鮮な水を

クリス・ヌーン

「水、水、見渡す限り、だが飲める水は一滴もない」と老水夫が大海原のただ中で喉の渇きに苛まれる場面がサミュエル・テイラー・コールリッジ(Samuel Taylor Coleridge)による幻想的な物語詩「老水夫行(The Rime of the Ancient Mariner)」の一節に描かれています。時は下り、幸いなことに私たちは海水を飲用水に転じる方法を手に入れました。水資源に乏しく、脱塩淡水の世界最大生産国であるサウジアラビアを見てみましょう。砂漠が多く降雨量が少ないサウジアラビアでは、紅海とペルシャ湾の海水を脱塩し、1日あたり約500万立方メートル(13億ガロン)の飲用水が生産されています。これはオリンピックサイズのプール2,000杯に匹敵します。

ですが、逆浸透膜法や蒸発法を使って海水を新鮮な飲用水に変えるプロセスには大量のエネルギーが必要であり、サウジアラビアも例外ではありません。実際に紅海沿岸の「ヤンブー4(Yanbu-4)」など、サウジアラビア最大の海水淡水化施設が大規模な発電所に隣接しているのもそのためです。その一方で、ヤンブー4の大型拡張プロジェクトにより、2023年の稼働開始時には淡水生産量が1日当たり45万立方メートル(1億1900万ガロン)増加する予定です。当然さらに電力が必要になりますが、どこから供給されるかというと、ほかならぬ「ヤンブー4」の施設内に設置される発電容量20MWの太陽光発電所なのです。

GEグリッドソリューションの中東・北アフリカ・トルコ地域担当の社長兼CEOを務めるバーナード・ダガー(Bernard Dagher)は次のように説明します。「ヤンブー4は、サウジアラビアで初めて再生可能エネルギーを利用して海水から真水を得る統合型逆浸透膜法プロジェクトになります。このプロジェクトは、同国のサステナビリティを促進するとともに、メッカやメディナなど各都市で増加し続ける淡水需要にも応えるという、同国政府が描くビジョンに応えるものです。」

ヤンブー4は、サウジアラビアで初めて再生可能エネルギーを利用して海水から真水を得る統合型逆浸透膜法プロジェクトになります。トップ画像提供:GEリニューアブルエナジー。上部画像提供: ゲッティ・イメージズ。

GEグリッドソリューションは、ヤンブー4に電力を供給するための変電所建設を受注したばかりです。GEリニューアブルエナジーのテクニカル・セールス・ディレクターを務めるモハメド・ガッド(Mohamed Gad)は「ヤンブー4に供給される電力は、どんな配電設備を通って来ても、すべてこの変電所に集約されます」と言います。紅海沿岸では年間約4,000時間近くも太陽が輝くため、その光で発電した電力を余すことなく淡水化プラントに利用するためにはこの変電所が重要になります。

この太陽光発電所で発電する電力は、ヤンブー4にとって、カーボンフリーなエネルギー源で発電するボーナスのような電力であるとガットは話します。というのは、今回の拡張プロジェクトにより、プラントの運転に際しては引き続き国内送電網からの電力を使用する一方で、晴天時には施設内の太陽光発電所が稼働することで、送電網から取り込む電力を最大20MW抑えることができると予想されているからです。つまり、この変電所があることで、ヤンブー4が真夜中に送電網からの電力をフルに使用する際も、あるいは真昼に太陽光エネルギーで発電された電力を補完する際も「電力源の切り替えは全くスムーズで安定したままです」とガッドは言います。

変電所は、あらゆる送配電網にとってカギとなるテクノロジーです。変電所は、頭上の高圧送電線からの高圧電流を各家庭が引き込めるように電圧を下げ、家電製品を安全に使用できるようにする、人間でいうと神経回路のような施設です。ヤンブー4でもまったく同じことが行われています。その違いは、変電所を通った電力が動かしているものがコーヒーメーカーやノートパソコンなどの家電製品ではなく、海水淡水化プラントで稼働する強力なポンプであることだけです。これらのポンプは、1日にオリンピックサイズのスイミングプール180杯分の海水を淡水化設備に設置された分離膜に通すことで塩分を濾過し、何百万ガロンもの飲用水をサウジアラビア国内の水道網に送り出しています。

淡水化施設のポンプ群を安全に稼働させるために、GEの380/110kVガス絶縁開閉装置(Gas-Insulated Switchgear、GIS)が設置された変電所に接続する巨大な変圧器が、送電網を流れる超高圧電流を降圧します。また、この変圧器は、日中に淡水化施設内の太陽光発電所で発電された電力も円滑に取り込むことができるので、結果的に海水淡水化プラントが従来の送電網から取り入れる電力を抑えることにも役立ちます。

ヤンブー4へ信頼性の高い電力を安定して供給することは、世界で最も水資源に乏しい国(の一つであるサウジアラビアに新鮮な飲用水を絶え間なく供給するために非常に重要です。サウジアラビアが飲用水の約半分を海水淡水化プラントに依存している背景には、年間を通してまとまった水量を確保できる河川がなく、地下水や地表水といった水源も不足しているという事情があります。

そのため、サウジアラビア政府もヤンブー4がもたらす成果に強い関心を寄せています。というのもサウジアラビアでは、同国の総エネルギー消費量の約20%を巨大施設である海水淡水化プラントが占め、しかも送電網を流れる電力はそのほとんどを石油とガスに依存しているからです。こうした状況を打破するため、サウジアラビア政府は国内に降り注ぐ大量の太陽光エネルギーの有効利用を将来的にもさらに推し進める予定で、2032年までにさらに41GWの太陽光発電設備を建設することを公約しています。

ガッドは、また次のように語ります。「ヤンブー4プロジェクトの受注獲得に際しGEの競争力が有利に働いたのは、民活型海水淡水化プラント事業(IWP)であるラービグ3(Rabigh-3)シュケイク3(Shuqaiq-3)への電圧を調節する2つの変電所を納入した実績があったからです。この2か所のIWPは、合わせて1日あたり約100万立方メートルの水を水道網に送り出します。私たちはGEのイノベーティブな製品である380kVガス絶縁開閉装置がサウジアラビアの人々のニーズに応えることができることを嬉しく思っています。」

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