ロゴ

スムーズな移動: 米国最大の港をデジタルハブに

米国の児童文学作家、イラストレーター、そして「ビジータウン」物語の作者として知られるリチャード・スカーリー氏がロサンゼルス港を描こうとしたら、さぞや複雑なイラストになったことでしょう。「アメリカの港」として知られるこの米国最大の港湾施設では、船舶、鉄道車両、コンテナ、トラックが昼夜問わずひっきりなしに行き交い、荷物を積み降ろしています。遠く離れた米国のスーパーマーケットチェーンであるターゲットやウォルマートの店舗や、アマゾンの倉庫に運ばれる商品の積み降ろしを調整することは、非常に大変な仕事であり、色鉛筆では描ききれません。

特に、これらすべての荷物を運搬するトラック運転手にとっては大変な仕事で、港に到着するまで担当する仕事の内容が分からないこともしばしばです。ある典型的な一日を例に挙げると、ドライバーは空の40フィート輸送用コンテナを載せて港に到着し、運んで来た空のコンテナを降ろして商品が積載された別のコンテナをピックアップできる場所を12ものウェブサイト(各港湾ターミナルにつき少なくとも1つのサイトがあります)を検索して探すのです。

なにしろロサンゼルスであるため、このプロセスは常に時間や渋滞との戦いです。あるトラック運転手が動けなくなると、海運会社は次の手段として近くにいる別のドライバーに荷物を託すこともあります。「トラック運転手たちは、できるだけ早く空いているコンテナを返却して商品を積んだコンテナをピックアップし、高速道路にのりたいと考えています。荷物を早く送り届けられれば、もうひとつ仕事ができるからです」と、GEトランスポーテーションのトランスポート・ロジスティクス担当副社長のジェニファー・シェプフェルは言います。「ロジスティクスの問題はトラック運転手の生産性を著しく低下させます。」

しかし、この課題を解決するプロジェクトが現在進行中です。昨年5月、ロサンゼルス港はGEと提携し、物流を効率化するための6ヶ月間のパイロット・プログラムを実施することとなりました。まずはGEのソフトウェアにより、ある特定のターミナルに発着する船舶の位置や入港、船荷を引き取るために必要なトラックや貨車の利用状況についてのデータを集積しました。データを整理し、可視化することによって関係者の調整業務がより効率的になり、パイロット・プログラムは大成功でした。そのため、今度はそのソフトウェアをロサンゼルス港全体に導入し、ロングビーチ港では3ヶ月間のパイロット・プログラムを実施しています。

「ポート・オプティマイザ」と呼ばれるこのソフトウェアは、さまざまなソースからデータを取り込み、これらを1つのプラットフォームで機能できるよう統合します。例えば、米国ミズーリ州にある都市「セントルイス」を表す略語は会社によって異なる場合があります。そのまま「セントルイス」と呼ぶ会社もあれば、「STL」という略語を使用する会社もあります。 ポート・オプティマイザは機械学習アルゴリズムを活用し、入ってくるデータを整理して標準化するため、同一のものと認識します。

このソフトウェアは、ユーザーが安全で個別にアクセスできるよう設計されており、価格などの重要な競合情報は表示されないようになっています。このことは、通常は競合相手となる会社に対して、パイロット・プログラムを共同で実施することを説得する上での決め手となりました。「データ提供者がデータの所有者であることを明確にする必要がありました」とシェプフェルは言います。「我々はデータを売ろうとしているわけではなく、「ポート・オプティマイザ」の機能の向上のためだと理解を求めました。」

最初のパイロット・プログラムの結果、ロサンゼルス港では入港する船舶を2週間も前から把握することができるようになりました。これまでの入港2日前とは対照的です。このような透明性によって調整業務が改善され、ロサンゼルス港全体で効率が8~12パーセント向上しました。プロセスを通じて、トラックのターンタイム改善、鉄道車両計画の改善、船荷を移動する作業スピードの全体的な向上、コンテナあたりのタッチポイントの減少が実現しました。

「私たちの目標は、世界中の大部分の港でこれを利用してもらうことです」と、GEのジェニファー・シェプフェルは言う。「参加企業が増えるほど、豊富なデータが得られ、私たちがグローバルサプライチェーンにもたらす価値と効率が向上します」           記事冒頭と上の写真:ロングビーチ港

最初のパイロット・プログラムからのフィードバックをもとに、「スマート・トラック・スケジューリング」というサービスがプログラムに参加する全ターミナルに新たに導入されます。具体的には、トラック会社は1台のダッシュボードを使って、ロサンゼルス港とロングビーチ港の参加ターミナルにおける物流の状況を即時にリアルタイムで見ることができます。「運転手は1つの画面で2つの港の状況を見ることができます」とシェプフェルは言います。「これにより、トラックの配車係は1日に3時間もの業務時間を節約できるのです。」

ロサンゼルス港とロングビーチ港は米国総輸入量の40パーセントを占めています。しかしシェプフェルによると、GEはポート・オプティマイザの導入を他の港にも呼びかけています。最終的にすべての港が情報を共有し、それによって、ターゲット、ウォルマート、アマゾン、その他の何千もの顧客企業がいつでも自社商品の位置を確認できるようになる可能性があるのです。「私たちの目標は、世界中の大部分の港でこれを利用してもらうことです」と、GEのジェニファー・シェプフェルは言います。「参加企業が増えるほど、豊富なデータが得られ、私たちがグローバルサプライチェーンにもたらす価値と効率性が向上します。」

メール配信メール配信