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Shipping Sunshine: GEとIHIがアンモニアをよりクリーンなエネルギー源に転換する方法を探る

グレガー・マクドナルド

日本は高度経済成長を遂げた先進国です。ですが、エネルギー自給率は低く、石炭、石油、および液化天然ガスなどの輸入にコストをかけざるを得ません。もっとクリーンなエネルギーを輸入する方法があるとしたら、しかも日本だけでなく、アジア全域に対象を広げられたらどうでしょうか。

この問題への予想外の解決方法が「アンモニア」です。株式会社IHIとGEはことし1月、アンモニアを燃料として利用する技術を共同で開発するための新たな覚書を締結しました。両社の目標は、2030年までにGEの既存の大型ガスタービンがアンモニア100%で安全に燃焼できるようにし、CO2排出量を削減することにあります。これはIHIが掲げる「燃料アンモニアの社会実装」というより幅広いビジョンにつながります。つまり、水素キャリアとして有望視されているアンモニアが、エネルギーの貯蔵・輸送手段として活用される社会を実現することであり、IHIでは「Shipping Sunshine」という表現が用いられています。

GEはこの2年間、IHIと協力しながら日本でアンモニアを燃料として利用するフィージビリティスタディに取り組んできました。アンモニアは農業用肥料として豊富に利用されており、その成分である水素と窒素は燃料としても有望視されています。また、可能性がある方法としては、アンモニアをガスタービン内で直接燃焼することで、天然ガスに代わる発電用燃料として燃焼する方法が挙げられます。ことし1月、GEとアンモニア燃焼技術のリーディングカンパニーであるIHIは、GEの大型ガスタービン6F.03、7Fおよび9Fがアンモニアを燃焼できるようにするレトロフィット(後付け改修)パッケージの開発に合意しました。

アンモニアという新たな燃料でも運転可能になることは、天然ガスを使用するタービンを改修するだけでなく、ガスタービンに関連する広範囲のエコシステムにも影響をおよぼします。GEのエネルギー事業ポートフォリオを結集するGE Vernovaの一部門であるGEパワーでエマージェント・テクノロジー・ディレクターを務めるジェフリー・ゴールドミアは次のように述べています。「GEはお客様に発電所全体のシステムを提供しています。アンモニアを採用することは、発電所システム全体がアンモニアで安全に稼働することを確認しなければならないことを意味します。」

アンモニアの利用法には「エネルギー・キャリア(エネルギーの輸送・貯蔵手段としての化学物質)」として用いることも挙げられます。この方法には2つの選択肢があり、1つ目としては前述の通り燃料として日本などの国に輸送され、ガスタービンで直接燃焼します。2つ目としては運んできたアンモニアを分解あるいは分離して水素を取り出し、今度はその水素をタービンの燃料として利用することです。

当然ですが、この利用法には多くの課題があります。1つはアンモニアと水素それぞれの輸送コストの比較検証で、GEとIHIが研究を続けてきました。両社の結論は「アンモニアの輸送の方が安価」ということです。水素を輸送するには液化する必要があり、そのために-250℃という極めて低い温度まで下げなければならず、より高コストになります。ゴールドミアは次のように説明します。「その上、現在のところ液化水素運搬船は世界で1隻しかありません。しかもその1隻も、実証実験のために建造された船に過ぎません。」

一方、アンモニアを運ぶのは簡単です。アンモニアを液化するには-30℃まで冷却するだけで済みます。しかも、アンモニアはすでに世界中に輸送網が出来上がっています。「現在、世界中で1,500万トンから2,000万トンのアンモニアが輸送されています」とゴールドミアは述べています。(参考:液化天然ガスは液化するのにおよそ-162℃まで冷却する必要があります。LNGの輸出量は2022年に米国だけでも約7,400万トンでした。)

さらに大きな課題は、CO2をあまり排出せずにアンモニアを製造する方法です。IEAが最近発表したレポートによると、通常のアンモニア製造プロセスには化石燃料が使用されることから大きなCO2排出源となっており、エネルギー分野での全CO2排出量の約1.3%を占めていると指摘されています。また、同レポートでは水素を輸送する手段としてアンモニアを使用する場合の経済性を検証しています。さらに、同IEAレポートの焦点のひとつは、電気分解またはメタン熱分解を利用してアンモニアを製造する方法です。これらはより低いCO2排出量で水素を製造する手法とされ、最終製品に含まれるカーボンインテンシティ(炭素強度)を少なくすることができます。

このような従来の方法よりさらにクリーンなアンモニア製造技術は存在します。しかしIEAは、こういった代替技術ではアンモニア1トン当たり10%から100%のコスト高になってしまう可能性があるものの、同じことは電気分解による水素の製造や、メタンの水蒸気改質に炭素回収と分離を組み合わせるといった技術にも言えるのです。ゴールドミアは次のように説明し、結論付けます。「重要なのは、燃焼時にほとんどあるいは全くCO2を発生させない燃料のうち、どれが最も低コストで供給できるか、という点です。私たちのこれまでの研究から導かれる予想に基づけば、アンモニアはより低コストの選択肢になるでしょう。」

そしてゴールドミアは、GEがアジアで100年以上にわたって事業を展開してきた点を踏まえると、さらに広い視野を持つ必要があるとして次のように説明します。「アジア各国は炭素を含む化石燃料の輸入に依存しており、日本はその代表格にあります。日本、シンガポール、韓国など、ここ数年で急速に低炭素燃料の重要性について考える国が増えています。そして、アンモニアは、これまでの分析に基づくと、合理的な選択肢であるとみなされているのです。」さらにGEガスパワー ジャパン プレジデントの戸村泰二は次のように述べています。「今回のIHIとの覚書は、脱炭素へ向けた日米間の協力関係として象徴的なプロジェクトの一つとなるでしょう。GEは、今後も日本の脱炭素社会の実現へ向けて全力でサポートしていきます。」

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