
サステナビリティレポート:世界のエネルギー効率を高めるというミッションに注力
クリス・ヌーン
今この瞬間から60秒の間に、ガスタービンや風力タービンから水力発電にいたるGEの発電テクノロジーによって、世界の数百万世帯を1時間賄うことができる電力が生み出されます。と同時に、GEまたはそのパートナー企業によって製造されたジェットエンジンを搭載した航空機が2秒に1機のペースで空に飛び立っていることから、60秒の間ではおよそ30機を数えることになります。そう考えると1分間という時間はいかにも感動的です。一方、その裏側ではGEのエンジニアや科学者たちが、これらの先端技術をよりエネルギー効率に優れたものに発展させ、世界中のお客様や政府の脱炭素化を支援するために尽力しています。
GEはこのたび「2022年サステナビリティレポート」を発表しました。サステナビリティはGEの戦略およびオペレーションにおいてとりわけ重要視されており、今回のサステナビリティレポートでも詳しく説明しています。3年目となる今回の年次レポートは、GEの掲げるサステナビリティの目標と優先課題に着目し、気候変動、製品の安全性と品質、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンなどに関する進捗状況を報告するものになっています。また、来年初頭にGEがGE AerospaceとGE Vernovaというさらなる2つの上場企業へと分離独立する準備を進めているなかで、本レポートの重要性はさらに増しています。GE会長兼CEOおよびGE Aerospace CEOであるラリー・カルプは次のように述べています。「すべては、新しい技術をイノベートする私たちのユニークな能力から始まります。最も差し迫ったサステナビリティの諸課題に対処するために、世界が私たちの新しい技術を必要としています。そして、各ビジネスが担う独自のミッションにフォーカスを絞ること、それはGE Vernovaにおいては世界の電化と脱炭素化をより推進することであり、GE Aerospaceにとっては『新しい空の旅』をさらに切り開くことですが、そうすることで私たちはより多くのチャンスを得られます。すでに分社化が完了したGE HealthCareにとっては、どこにいてもヘルスケアを得られる世界をつくることを意味します。」
GEのテクノロジーの多くはすでにクラス最高の性能を誇り、より持続可能な未来を導く助けとなっています。たとえば、史上最強を誇るGEの13MW級洋上風力タービンHaliade-Xは、そのブレードが1回転するだけで英国の一般家庭の電力を2日間賄うことができます。また、ガスタービンにはCO2排出量を削減するために水素混合ガスで稼働可能なタイプもあり、日が射さない、あるいは風が吹かないといった時に不足する電力を補うことで再生可能エネルギーの更なる利用を後押ししています。一方、GEのエンジニアたちは世界各地でイノベーションに富んだカーボンキャプチャー技術に取り組んでいます。さらに、アビエーション分野ではGE Aerospaceがオープンローター技術やハイブリッド電気推進飛行、低炭素の持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel:以下SAF)分野に関する今後の技術を探求しています。その成果は、たとえばGE9Xジェットエンジンにすでに現れています。同エンジンはこのクラスで最も燃料効率の高いエンジンであるにもかかわらず、記録を塗り替える134,300ポンドもの推力を誇り、巨大なボーイング777Xに搭載されても十分以上の推力をもたらすからです。
ターゲットの達成、ゴールの設定
GEは2020年のCO2排出量目標(ターゲット)を前倒しで達成できました。そのため、2030年までに自社オペレーション内でカーボンニュートラル (スコープ1および2排出量と呼ばれる)を達成するという新たな目標(ゴール)を設定することが可能となりました。目標達成は順調に進んでおり、このことはGEの2022年CO2排出量が、進捗状況の追跡に用いる2019年のベースラインから28%の削減を達成したことにも示されています。
GEはまた、2050年までに自社の事業だけでなく、お客様が販売した製品に関わるスコープ3排出量も含めて排出量ネットゼロ企業になるという、より幅広く野心的な意気込みも表明しています。しかしGEは、自らのテクノロジーが2030年までにより進歩を遂げることには楽観的である一方、2050年の排出量ネットゼロという意欲的な目標を達成するにはそれだけでは十分ではないことも承知しています。そのため、GE AerospaceとGE Vernovaの二つとも、現在、電力事業および航空事業の両分野で必要とされる進歩を実現するため、次世代のブレークスルーテクノロジーに投資しています。実際に、2022年は研究開発に42億ドルを投資しました。
GEのチーフ・サステナビリティ・オフィサーのロジャー・マルテラは次のように語ります。「GE AerospaceとGE Vernovaがともに、ビジネス面では株主に成功をもたらし、サステナビリティという点でもネットゼロに向けた行動を加速する世界が最も必要とするソリューションを開拓できることを確信しています。」
GE Vernova:電化と脱炭素化
GE Vernovaのテクノロジーは世界の電力の約30%を生み出しており、より持続可能で、信頼性が高く、手頃な価格のエネルギーを提供するというトリレンマ(※)の解決に貢献する重要な役割を担っています。事実、GE Vernovaは2022年も世界の電化と脱炭素化におおきく貢献することができました。たとえば、オランダにおけるHaliade-Xプロトタイプ風力タービンは2022年に3年間のプロトタイプオペレーションを完了した一方、北米向けの最新の3.4MW陸上風力タービンの製造に着手しました。また、2022年11月にエジプトで開催されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)では、LM6000エアロデリバティブ(航空機用エンジン転用型)ガスタービンが水素と天然ガスとの混合ガスで稼働し、アフリカ大陸で初めて水素混焼による発電が行われました。さらにGEとフランスのテクニップ エナジー社(Technip Energies)は、ガス火力発電所におけるカーボンキャプチャーソリューションの研究開発に着手しました。
※エネルギーのトリレンマ:「エネルギーの安定供給(Energy Security)」、「経済効率性(Economic Efficiency)」、「環境への適合(Environment)」の3つを同時に達成する難しさを表す
その一方で、送配電網(グリッド)に携わる主力製品の製造は、エネルギーを大量に消費するプロセスでもあります。しかし、GE Vernovaはこのジレンマを解消するため、自社の製造拠点向けに再生可能エネルギーを調達したり、ムダをなくして段階的に改善を進めるシステムであるリーン方式を活用したりするなど、2030年の製造現場でのカーボンニュートラルという目標に向けて前進しています。2022年には、ガスパワービジネスにおいてリーン方式を採り入れる研修を実施したことにより、照明、冷暖房空調設備、圧縮空気、輸送などのエネルギー消費が24拠点にわたって削減され、合計で4,300万キロワットアワーの節電を実現しました。
GE VernovaのCEOであるスコット・ストレイジックは次のように説明します。「私たちは、脱炭素化と電化という目標は相互にインクルーシブであると考えています。エネルギー転換の推進と気候変動との闘いにおける進歩は、同時にエネルギー安全保障の進歩も伴うものでなければなりません。このように考えると、長期的な業界の追い風にも恵まれていることから、今後10年間でさらなる投資を呼び込むでしょう。そして、GEはお客様と協力してこうした取り組みを主導できるユニークなポジションにあるのです。」
GE Aerospace: 新しい空の旅
ジョイント・ベンチャー・パートナーとの技術も含めてGE Aerospaceのテクノロジーを利用した30億人近くの人々が、2022年の1年間に空の旅に出かけました。GE Aerospaceとサフラン・エアクラフト・エンジンが50:50で共同出資している合弁会社であるCFMインターナショナルの製品ラインにおいて、空力学、エンジンアーキテクチャ、材料技術が進歩したことにより、1970年代から80年代に製造されたエンジンに比べて現在の航空機エンジンは燃料消費量が40%少なく、CO2排出量も40%削減されています。GE Aerospaceのオープンローター、ハイブリッド電気推進、電気推進コンセプトなどの先進アーキテクチャを含む次世代エンジン技術群は、今日の最新鋭ナローボディ航空機向けエンジンと比較して、少なくとも20%の燃費改善を実現する見通しも立っています。その一環として2021年6月、GE Aerospaceとサフラン・エアクラフト・エンジンはCFM「RISE(Revolutionary Innovation for Sustainable Engines)」プログラムと呼ばれる技術開発プログラムの立ち上げを発表しました。このプログラムは、2030年代半ばまでに就航する可能性のある将来のエンジン向けに、一連の新たなディスラプティブ・テクノロジーを実証し、成熟させるものとなります。
GE Aerospaceはまた、100%SAFの認証および利用の拡大に向けた業界の取り組みも支援しています。SAFは植物由来の原料や油脂、その他の代替原料から生成することができます。現在、GE Aerospaceおよびそのパートナー企業が製造するすべてのエンジンは、認証済みSAF混合燃料で運用することができます。ですが、GE Aerospaceはさらに一歩先を行き、Passport、HF120、GEnxなど、さまざまなエンジンで100%SAFのテストに成功しています。この燃料は、化石燃料に比べてライフサイクル全体でCO2排出量を最大80%削減することが示されており、2050年までに排出量ネットゼロを目指すGE Aerospaceの主力技術の一つになると見込まれています。さらに、回収したCO2や再生可能エネルギーで生成された水素から合成するような新たなアプローチを用いたSAFは、ライフサイクル全体のCO2排出をゼロにする可能性すら秘めていることも評価されています。
ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの推進
今回のレポートは、GEの2022年ダイバーシティレポートと一体化されて編集されており、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平)、インクルージョン(個性や特徴を認め合い、ともに活動すること。包摂)(以下DEI)におけるGEの取り組みを紹介しています。また、進捗状況をより共有しやすいよう、他の大企業が採用する方式に沿った内容となっています。
GEのチーフ・ダイバーシティ・オフィサー兼バイスプレジデント兼チーフ・オーディット・エグゼクティブを務めるブランディ・トーマスは次のように述べています。「GEではDEIを重視しています。それは、多様なチームと多くの視点が『Build a world that works』を実現するソリューションを生み出すために不可欠であるという信念に基づいているからです。お互いに協力することで、すべての従業員が受け入れられ、尊重され、帰属意識を感じることができる、インクルーシブな文化を育むことができるのです。」
今回のレポートは、長期的かつ持続可能なDEIの進展を実現するために、透明性、アカウンタビリティ、コミュニティという3つの柱に対してフォーカスを当てているほか、GEのrepresentation(社会における多様性が社内にも適切に反映されているか)およびpay equity(同一価値労働同一賃金)に関するデータの透明度を明らかにするものになっています。
レポート全文はこちらからご覧ください(英語のみ)。
画像提供:GE Vernova