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“完全な”リサイクルを目指して:GEとパートナー企業が取り組む風力タービンブレードの再生利用

クリス・ヌーン

風力発電は急速に普及しつつある再生可能エネルギーの一つですが、もともとカーボンフットプリント(※)が少ないとはいえ、風力発電業界がCO2排出量の削減努力をしていないわけではありません。風力発電においてCO2排出量削減をさらに進める方法の一つが、原材料の調達や製造プロセス、風力発電所への部材輸送法など、風力タービンのライフサイクル全体から廃棄物を削減することです。そしてまさに、GEリニューアブルエナジーは風力タービンの世界的大手メーカーとしてこの問題を解決しようとしています。

※Carbon Footprint:製品やサービスの原材料調達から生産、流通、廃棄・リサイクルまで、そのライフサイクルを通して排出されるCO2の量

昨年末、GEリニューアブルエナジーはヴェオリア・ノースアメリカ社(Veolia North America, VNA)と合意に達し、米国内の陸上タービンのアップグレードあるいはリパワーリング(小型の旧型タービンを高出力の新型に置き換えること)の際に取り外されたタービンブレードをリサイクルするという画期的な契約を締結しました。風力発電用タービンブレードはグラスファイバーとバルサ材の複合素材で造られていますが、VNA社はライフサイクル終盤で取り外されたブレードを細断し、世界中で利用されるコンクリート原料の中でも最も一般的であるポルトランドセメントの製造プロセスで活用するのに適した素材を生成します。その結果として、リサイクル材を使うことで無垢の石炭、シリカ、石灰石の消費を削減し、CO2排出量を27%削減することを目標にしています。

GEリニューアブルエナジーは、欧州でも同様の戦略を展開しようとしています。この6月にはドイツおよびフランス‐スイス企業との間で、欧州の陸上タービンのうちライフサイクルの終盤にある数基からブレードを共同で解体・粉砕するための予備的な合意に達しました。米国の事例と同様に、各パートナー企業は役目を終えたタービンブレードのグラスファイバーと充填剤をリサイクルしてセメントの原料として活用するとともに、ブレードから回収した有機物をセメント製造の際の燃料源として利用します。

GEはこの手法でセメントを製造すると、従来のプロセスと比較して20%もCO2排出を削減できると述べています。GEリニューアブルエナジーのCEOを務めるジェローム・ペクレス(Jérôme Pécresse)は今回の契約について次のように述べています。「これは私たちにとって心が躍る新たな取り組みです。欧州の風力発電業界に最新かつ高度な循環型ライフサイクル手法を導入する手助けにもなるのですから。」

米国内においてVNAは、セメント業界向けに単独でGEの陸上風力用ブレードに処理する役割を担います。しかし、米国と比較して欧州は多くの国々で構成されているという違いがあるため、アプローチの仕方は異なります。「GEリニューアブルエナジーは、お客様に最適なソリューションを実現するために国ごとに適切なパートナー企業を見出し、欧州全体の事業をまとめようとしています。したがって、それぞれにアプローチはかなり異なりますが、私たちはその国ごとにふさわしいやり方を採用します」とGEリニューアブルエナジーのオンショア ウィンド インターナショナルのプロジェクトマネージャー兼サステナビリティリード職を務めるマリーナ・リオナール(Marina Lleonart)は語ります。

風力タービンのリサイクルは、欧州でも計り知れない成長事業になる可能性があります。この6月、風力発電の業界団体である欧州風力協会(WindEurope:所在地ブリュッセル)は、寿命を終えた風力発電用タービンブレードを廃材として埋め立てることを欧州全体で禁止するよう要請し、「複合素材の持続可能なリサイクル技術の開発をさらに加速させる」べきだとしています。

トップ画像および上部画像:GEリニューアブルエナジーはドイツおよびフランス‐スイス企業との間で、欧州の陸上タービンのうちライフサイクルの終盤にある数基からブレードを共同で解体・粉砕するための予備的な合意に達しました。トップ画像提供:GEリニューアブルエナジー。上部イメージ提供:Veolia社。 

欧州では、2025年までにライフサイクルを終える陸上風力発電所が大陸全体で合計発電容量約30GWにのぼり、そのうちの半分以上である16GWを占めるのがドイツ国内の施設です。ドイツを本拠地とするネオワ(neowa)社はセメント原材料の生産を行う企業ですが、同国内で寿命を迎えるGE製陸上風力ブレードの大部分である最大90%を解体、撤去、細断し、セメント製造に用いる細断済みペレットの生産を担います。「私たちはこの分野における長年の経験をGEリニューアブルエナジーと連携させ、風力タービンブレードをスマートな方法で廃棄物処理することで次の世代へつなぐという高度なリサイクルの手助けとなれることをとても嬉しく思っています」とネオワ社のマネージングディレクターを務めるフランク・クロール氏(Frank Kroll)は述べています。

さらに、2050年までにネットゼロのCO2排出を目指している欧州のセメントメーカー各社も、さらに持続可能かつ循環型ソリューションを開発することで再エネ業界でより積極的な役割を果たすことに意欲的です。大手セメントメーカーのラファルジュホルシム(LafargeHolcim)社のグローバルイノベーションセンター(Global LafargeHolcim Innovation Center)を率いるエデリオ・ベルメジョ氏(Edelio Bermejo)は、こうした取り組みがセメント業界にインパクトを与える可能性があると認識しており、次のように述べています。「サステナビリティは経営戦略の中核であり、また、再生可能エネルギーと循環型経済のサポートはビジネスの最優先事項に当たります。GEリニューアブルエナジーと実施する今回のコラボレーションはこれら両方の目標を同時に達成できるため、非常に楽しみにしています。」

くわえて、GEリニューアブルエナジーと各パートナー企業は、細断したタービンブレード廃材を建設に不可欠なコンクリートの新たな材料として用いる可能性も模索しています(補足:コンクリートはセメントに砂や砂利などを加えて作られます)。ニューヨーク州ニスカユナでGEリニューアブルエナジーのテクニカルリーダーを務めるアルヴィンド・ランガラジャン(Arvind Rangarajan)は「コンクリートに使う砂利は、寿命を終えたブレードの小片で代替できる可能性があります。ブレードを粉砕して、道路や建築物の基礎となるセメントと混ぜ合わせて利用するという場面が、今後どこでも見られる光景になるかもしれないのです」と語ります。細断されたブレード片が、欧州でも道路の舗装に利用できる可能性があると彼は述べているわけです。砂利の代わりとして寿命を終えたブレードの細断片を利用することは、細断されたブレード部材が新たな風力タービンのコンクリート基礎部やタービンタワーの骨材として再利用される可能性につながるため、タービンのリサイクルが完全な循環型に進化する可能性も出てくるのです。

別のプロジェクトでは、GEリニューアブルエナジーとラファルジュホルシム、そして3Dプリンターメーカーのコボド(COBOD)社の3社が協働して風力タービンの基礎部の建設にコンクリート材の3Dプリンティング技術を活用しています。この3Dプリンティングに使われるコンクリートに寿命を終えた風力タービンのブレード小片を混ぜることが可能になるのでしょうか?「そこまでたどり着くにはまだ時間が必要でしょうが、実現すれば完全な循環型経済のまさに好例になりますね」とランガラジャンは語りました。

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