
レジリエンス:困難の時を乗り切る
新型コロナウィルスが私たちに与えた教訓は多く、安定した電力が持つ重要な役割もその一つです。危機的状況において、その重要性は一層高まります。病院の明かりや医療機器の稼働が途絶えることの無いように、あるいはインターネットやソーシャルメディアを通じて人々がつながりを保てるように、このコロナ禍で電力は欠かせないものとなっています。
しかし、まさに今、発電所の運転や開発を担う企業は前代未聞の制約を受け、業務に支障が出ています。その原因は新型コロナの感染予防措置によるもので、国境の封鎖や国際航空輸送の制限、サプライチェーンの断絶、職場での勤務制限が挙げられます。
とはいえ、発電所の試運転や補修、整備は続けなければなりません。それを実現するには、現在の供給状況をオンラインで確認し、将来の需要を満たすために新しい発電能力を上乗せするための先進技術や新たな運用方法の構築が必要です。
GEガスパワーは先日、アジアを含む世界各地のエキスパートを集めてパネルディスカッションを開催し、革新的なリモート戦略や技術について議論しました。また、コロナ禍においてお客様や地域の社会や経済をどのように支援してきたかについて事例の共有も行いました。
しかしながら、エキスパートの誰もが常に「安全」を何よりも重視しているという点は一致していました。
「私たちの地域もコロナの打撃を受けて、極めて迅速に対応する必要に迫られました」とGEガスパワーのアジア地域プレジデント兼CEOを務めるラメッシュ・シンガラムは説明しています。「ですが、安全が最優先だという意識を忘れたことは一度もありません。新規発電所の建設や定期点検を実施している現場、GEのオフィスや各種施設にいる人々を含めて、アジアでは2,000名を超える従業員を抱えています。」
「従業員の安全がしっかりと確認できたら、その次はお客様のサポートを最優先としました。」
数カ月に及ぶロックダウンを受けて、発電所の運転事業者は年内後半まで延期できる定期点検作業の確認を始めました。続いて、2020年後半に予定されていたもののうち、2021年に延期できるものの優先順位を検討しました。さらに、すでに進行中の点検作業や発電所の試運転プロジェクトを継続する一方、突発的な補修作業も効果的かつ効率よく行う必要があることを認識しなければなりませんでした。
顧客対応においてGEが重要視したのは、お客様との緊密な連携を保つことでした。具体的には、作業スケジュールやその方法に関するコンサルティング、数百万時間に及ぶ全世界でのガスタービン運転経験に基づく提言、GEの最先端の遠隔エンジニアリング技術を活用したデータ収集・現場点検などが挙げられます。
定期点検、補修、試運転の継続
その成果として、GEガスパワーはこの6カ月間に数多くの発電所の定期点検、補修、試運転をサポートしました。世界全体で3月から8月の間に運転を開始した案件は14件で、3,900メガワット(MW)相当に上ります。年初からこれまでに着手した主定期点検は259件で、2020年1月~6月の当初の計画の80%に達しています。
アジア地域では、2020年前半にサービスチームが対応した顧客案件は177件(うち主定期点検48件)、現場に派遣した作業員の数は計1,300名を超えました。また4月以降、アジアでは6件の顧客サポートセッションをリモートで行ったほか、GEのデジタルツール(Mentor Visual IQ)を用いたボアスコープでの点検作業15件をリモートで実施しました。
「はじめのうちは、それぞれの状況に応じた専門技術が本当にリモートで得られるのか、お客様に疑問を持たれていました。ですが、世界各地にいる当社のエキスパートの中からお客様のニーズに沿った人物を選んで対応できるということ、またそれをスピード感を持って難なく実現できるということを何度も繰り返しお見せしてきました。」
「こうした状況では、私たちはいつも課題を乗り越える方法を探します」とシンガラムは言います。続けて技術的な観点から次のように述べました。「この危機の中で、私たちの手元にある遠隔エンジニアリングツールの活用が加速しました。誰が現場にいても、またエキスパートが世界のどこにいても、こうしたツールのおかげで作業スピードを上げたり、技術者による必要なサポートを受けられたりするかをお客様に直接感じていただくことができました。」
例えばGEでは、インタラクティブなプラットフォーム「HelpLightning」を活用し、お客様が必要な時に必要な場所でリアルタイムに技術サポートを提供しています。また、ガスタービンの内部点検には遠隔操作型のボアスコープを活用し、GEのガスタービン遠隔監視・診断チームがお客様の既存設備のパフォーマンスに関する分析結果を提供しています。

こうした技術は、定期点検のタイミングを見極めるのに役立つだけではなく、定期点検や補修の実施にも活用されています。パンデミックのさなかでロックダウンや移動制限が実施された今春、GEは中国での9FB型ガスタービン用動翼の取り付けや台湾での同様の事例など、アジア各地での1,000件を超える案件にHelpLightningを活用し、定期点検作業のサポートを行いました。
ほかにも、マレーシアではHelpLightningを用いて現場のエンジニアと離れた場所にいる技術エキスパートをつなぎ、定期性能テストを実施しました。入口案内翼(IGV)を点検した際には、あるタービンにおいて翼がずれていることが分かりました。こうしたずれは、そのままにしておくとタービンの強制運転停止にもなりかねません。
さらに、遠隔エンジニアリング技術は発電所の試運転作業を進めるのにも活用されました。韓国では、設置プロセスに立ち会う予定だったエキスパートが現場に行けなくなりましたが、HelpLightningを用いることで世界トップレベルのエキスパートの助けを借りながら現地チームが作業を終えることができました。
サプライチェーン効率化のためのリーン・サポート
遠隔エンジニアリング技術はエキスパートの力を現場に届けるのに大きな役割を果たしましたが、そのほかにもGEはある手法を用いて、パーツや備品が確実に顧客のもとに納入されるサプライチェーンの実現を図りました。その手法とは「リーン・アクション・ワークアウト」というものです。これにより、業務全体の改善を継続的に行うことができ、結果として作業時間の短縮や品質の向上、効率性の向上につながります。
パンデミック以前に導入されたリーン・ワークアウトはアジア各地のGEの現場や施設で実施され、定期点検や建設現場の予備パーツの管理、修理センターでのパーツや備品の輸送などの改善に活用されてきました。
気候変動問題に与える影響
コロナ危機への対応に注意が向くことが多い今日ですが、発電所の運転業者やデベロッパーは、気候変動問題や再生可能エネルギーへの転換が自社の事業に長期的に与える影響についても認識しています。「GEの技術はアジア地域全体の900GWの発電容量のうち約3分の1を担っています」とシンガラムは述べています。「私たちはこの転換のダイナミックな動きを感じています。」
こうした脱炭素化の未来への動きは、ガス発電が持つ重要な役割を示唆しています。特にオーストラリアなどのマーケットでは近いうちにそう見込まれていますが、風力や太陽光による発電容量が増えるにつれて、安定的かつすぐに給電可能な電力へのニーズは高まる一方です。比較的CO2排出や燃料コストを抑えられるガス発電が送電網の安定化に有用な技術であることは、これまでに実証されている通りです。
また、今後10年で発電容量を400GW近く増やす必要があることも、アジアにおけるガス発電推進の主な要因です。背景には、日本などでは原子力発電の未来が見通せないことや、台湾や韓国などで原子力発電所や石炭火力発電所の廃止を進めていることがあります。さらに各国政府は、ASEAN諸国の無電化地域で暮らす約5,000万人の人々に電気をもたらすための取り組みも進めており、これもさらなるガス需要の拡大要因となっています。
危機の時には、必ず困難が生じます。しかし同時に、新しいソリューションを生み出すチャンスももたらします。GEは従業員の健康と安全を守りながら、工夫を凝らして新しいテクノロジーの活用方法を見出すことで、お客様の発電所建設の進行や必要な補修作業の実施、定期点検の継続を支えてきました。このように、よりクリーンで信頼性が高くコスト効率の良い技術を活用し、安定した電力をアジア全域に届けることで、GEは持続的な経済成長を遂げるアジアの未来への躍進に貢献しています。