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完璧なツール:ガスタービンメンテナンスにリーンでデジタルなアプローチを欧州や中東へ

アマンダ・シュパック

GE製ガスタービンは世界中に約7千基設置されており、当然、一基ごとに定期点検を行う必要があります。数年に一度、数週間にわたって保守サービスおよび修理を実施し、時にはアップグレードも行うために、タービンが設置されている発電所自体が稼働停止(以下「アウテージ」:outage)になります。そして、アウテージに先立って多くの準備作業が求められます。当然のことながら細心の注意が求められる上、技術面にも環境面にも対応する必要があります。必要書類、たとえば技術仕様書、必要な部材や工具のリスト、安全面での規則、図面、データシート、品質管理書など、まるで百科事典のような量の文書も必要です。

ヨーロッパでGEのサービスオペレーションビジネスを率いるスティーブン・ミラーと、メンテナンスを実施するチームを監督するポール・ドネリーにとって、定期点検時のメンテナンスを行う2千人以上もの担当者がヨーロッパ大陸、中東、そして世界各地に散らばっているという事実がさらに状況を複雑にしています。「広大な地域、幅広い言語、さまざまな文化の違いを踏まえなければなりません」とミラーは説明します。

Live Outage と呼ばれるイノベーションに富んだ新たなデジタルツールの試験運用に大きな期待が寄せられている理由の一つがここにあります。Live Outageとは、保守サービス担当者が指1本で操作可能な上、投入する機器や部材の何千もの写真や動画とともに、手順や文書をすぐに呼び出せるデジタルプラットフォームで、昨年米国で導入に成功し、発電所のアウテージ期間を大幅に短縮するとともにお客様にとっても安全性と品質を向上させることに成功しました。Live Outageは現在、ヨーロッパと中東に設置されたGE製9Fガスタービンに展開されています。GEガスパワーのフィールドサービスビジネス部門を担うフィールドコア社(FieldCore)のオペレーションディレクターでLive Outageの開発に携わったジェレマイア・スメドラは次のように述べています。「文章で説明しにくい場合、写真や動画はさらに効果を発揮します。」

Live Outageを搭載した大型のタッチスクリーンモニターとタブレットが、従来の何千枚もの紙の文書を含む大量のバインダーに代わって活用され始めています。これまでの紙による文書では、印刷してページ順に並べて照合し、発電所全体に配置された数十人のメカニックやフィールドエンジニアに配布する必要がありました。それに対し、技術文書に加えて必要な写真や動画も配信できる新たなプラットフォームの機能は、特に作業員の母国語がそれぞれ異なる場合に大きな利点となります。文章による説明が必要な場合でも、Live Outageを活用することで簡潔な用語による指示や、把握しやすく分類されたチェックリストを呼び出すこともできます。また、AIを搭載した翻訳ソフトウェアのおかげで、作業員は英語、アラビア語、スペイン語、イタリア語、およびその他の言語に簡単に切り替えることができるのです。

リーン方式の好循環

リーン方式と作業員からのフィードバックを活用し、現在の文書システムを21世紀型にする方法としてスメドラのチームはLive Outageを開発しました。彼らは何千ページもの指示書や仕様書をデジタル化し、わかりやすく、すぐに呼び出すことが可能なチェックリストとして体系化しました。

これで、世界中のどの現場でも標準化された手順とベストプラクティスが再現できるようになりました。スメドラによると、追加の作業や緊急の作業を除いた主要な作業で、すでに20%から25%の時間短縮が見られるということです。(この年末までに、米国内のGE製7Fガスタービンで行われた約80件のアウテージで経験を積んだ作業員たちは、今後60カ国以上で700件を超える大規模アウテージ案件に携わる予定です。)発電所にとってサイクルタイムの短縮は、より早期に運転を再開し、発電、送電、そして収益を生み出すことを意味します。これまで発電所のアウテージ期間には6週間を要していたものが、Live Outageを活用することで、例えば4週間で済む場合も出てきたのです。

グラフィックとトップ画像提供: フィールドコア

新たなプラットフォームを採用し、浸透させることは容易ではなかったものの、既に多くの作業員が試しているだけでなく、積極的に改善点を提案しています、とスメドラは説明します。例えば、ある作業員は指示書の一連の項目中にあるべき工具が抜けており、そのために工具の保管場所までの不必要な動線が発生した点を指摘しました。この例を含め、合計すると、保守サービス担当者などの従業員は2,500件以上の提案をアプリに投稿し、その結果1,000件以上の修正が実施されました。ミラーは次のように語ります。「私にとってリーンとは、毎日、改善点を特定することが組織的に絶え間なく行われる文化をいかに推進させるかということを意味します。それは無駄を取り除きながら、常にお客様にバリューをもたらそうとするフィードバックの好循環なのです。」

作業員にもお客様にもさらに良いものに

指示をより合理的なものにし、従業員のフィードバックを実装することは、効率が改善するだけでなく、作業員の安全をより一層確保することにもつながります。ガスタービンの重量は何十トン、何百トンにもなり、無数のパーツで構成されています。コンポーネントによっては、高温で過酷な条件下で動作するものもあります。その一方で、時計のように部品と部品を人間の髪の毛の太さ以下の精密さで組み合わせなければならないのです。さらに、タービンの各ユニットの完全性と保守サービス担当者の安全を確保しながら何百ものタスクを進める必要があるのです、とスメドラは説明します。

Live Outageはまた、発電事業者に対しタービン周辺で発生している事象をこれまでにないほど可視化します。ミラーは次のように説明します。「品質になにか問題が発生した場合、世界中のGEのタービンを稼働する事業者からフィードバックを得ながら、その原因を突き止め、解決をサポートできる仕組みも備えています。GEのお客様は、こうした透明性の向上を非常に高く評価してくださっており、お客様とより対話を深め、充実させることで、より良い成果をお客様にもたらすことができるのです。」

GEガスパワーは、ヨーロッパと中東でLive Outageを展開するとともに、7Fシリーズに続いてGEで2番目に大きいガスタービンである9Fガスタービンの情報を追加し、編集しているところです。ミラーによると、フィールドサービス担当者はこれまでにヨーロッパで4件の9Fガスタービンのアウテージでの試験運用を完了しており、2023年にはさらに15回のアウテージを実施する予定になっています。

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