
効率的な低炭素発電:CO2削減に取り組むマレーシアでGE製9HA.02タービンが世界初の商業運転開始
ダニエル・クルーガー
アジアの新興国はジレンマに直面しています。経済成長を推進するためにより多くの電力が必要な一方で、これまで何十年も依存してきた石炭火力発電から発生するCO2排出量を削減する必要もあるからです。先日GEが発表したホワイトペーパーによれば、石炭から天然ガスに切り替えれば発電所のカーボンフットプリントを60%削減できる可能性があります。しかしながら、都市密度(urban density:特定の都市における人口密度)や地理的条件がネックとなって、大規模な風力発電所や太陽光発電所という選択肢を選べない国や地域もあります。
急成長を遂げているマレーシアを例として見てみましょう。同国はCO2排出量を2030年までに45%削減することを目標としています。人口3,300万人を抱えるこの国は、山や丘が多い島々と一つの半島からなり、大規模な風力発電所や太陽光発電所の建設に適した開けた陸地はほとんどありません。
マレーシアの大手電力会社Southern Power Generation(SPG)はこの難題を解決するため、GEガスパワーの先進的なガスタービンを導入することにしました。このタービンは天然ガスやその他の燃料(バックアップとしての石油系燃料を含む)を利用して、大量の低炭素電力に効率的に変えることができます。SPGは今月、2基の9HA.02タービンを世界で初めて発電に使用する電力会社となりました。
これらのタービンは、すでに発電効率の世界記録を樹立しているGE製ガスタービンの最新機種です。天然ガスと水素を最大50%(体積比)ずつで混焼させることができる燃焼システムも備えており、SPGは将来的には水素などの低炭素または無炭素燃料を活用することも可能になります。

SPGは、シンガポールからわずか数マイル(3~4キロ程度)のマレー半島南端に位置する工業都市パシル・グダンに出力1,440MWの発電所を新設しました。この発電所では、マレーシアの300万世帯に必要な電力を賄うことができます。発電形式はいわゆる「コンバインドサイクル発電」で、ガスタービンは発電を行うだけでなく、蒸気タービンに熱を供給し、発電容量をさらに増やすことができる仕組みです。「実用可能な低炭素技術を利用できることが重要なポイントになっています」とSPGのハジ・ノア・アズマン・ビン・ムフティ(Dato’ Haji Nor Azman bin Mufti)会長は指摘します。「GEとは長年に渡る信頼関係にあり、そのHA技術がマレーシアの増加する電力需要の充足に役立つとともに、同国が必要とする長期的なエネルギー保障に貢献してくれると確信しています」。
パシル・グダンの発電所のコンパクトな構造には他にもメリットがあります。まず、パシル・グダンと同じような設置面積の狭い場所にこの種の発電施設を建設できることです。タービンはモジュール型コンテナに収められて届くため、比較的短期間で設置することができます。(GEとSPGは2018年にタービン設置契約を締結しました)また、各ユニットは迅速な点検とメンテナンスができるように設計されています。
GEパワーでプロジェクト遂行支援リーダーを務めるクリストフ・デュフォー(Christophe Dufaut)は次のように説明しています。「このガス発電技術は今後何年も業界の最先端であり続けるでしょう。この発電所によって、SPGは比較的狭い敷地で大量に発電できるだけでなく、設備投資や運用、メンテナンスの面でもコストを抑えることができるのです」。