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送配電網のオーケストレーション:GEのGridOSが新時代の送配電網を構築する電力会社をサポート

グレガー・マクドナルド

かつての送配電網は、現在よりもずっとシンプルに運用されていました。大規模発電所から電力を送出し、余剰電力が発生すれば電力事業者は出力を抑えて、ある程度予測可能な需要変動に対応してきました。しかし、今日の送配電網は極めて対照的で「誰でも飛び入り参加が可能」という状況にあります。現代の送配電網には風力発電や太陽光発電施設などの電力が増えつつありますが、これらの出力は変化が大きいものです。その上、数百万という家庭において、屋根には太陽光発電パネルが、地下室にはバッテリーが設置され、電気自動車も利用されています。このように、電気の流れは発電所から企業や家庭へという一方通行ではなくなりました。さらに、気候変動によって異常気象が頻発するという不安定性が、送電網が抱える複雑さに拍車をかけています。

複雑に流入する電力をすべてうまくコントロールするにはどうしたらいいでしょうか?天気を例に考えてみましょう。送配電網事業者は、暴風雨の発生を見越してその頻度や強さを予測する最新の手法を絶えず備え、いざという時に最も必要とされる場所に、適切なリソースを投入できるようにする必要があります。また、暴風雨のただ中でもできるだけ多くの利用者に安定した電力を届け続けるために、信頼性の高い送配電網を構築しなければなりません。さらに、暴風雨が過ぎ去った後も、停電を迅速に復旧するためにエネルギー市場においてプロアクティブにそして確実に、新たな調達ルートやリザーブから電力を早急に確保することが重要です。そのため電力事業者は、エネルギーデータのほかにも送電、配電、およびエンドポイントに至るまでの送配電網全体を把握して対処し、相互接続性、セキュリティ、および情報処理能力を持つ総合的なソフトウェアを備えることが求められます。

これに関し、GEデジタルのCEOを務めるスコット・リースは次のように述べています。「信頼性が高く、持続可能で、手頃な価格の電力を供給し続けるには、早急に送配電網を近代化することが必要です。ですが、ソフトウェアによって前進を加速させなければ、世界が必要とするスピードで送配電網の近代化を実現することはできません。」

GEデジタルは、長年にわたってこれらのソリューションの開発とテストを繰り返してきました。そして現代の急激に変化する電力事情に対応する洗練された包括的なソフトウェア ソリューションを磨き上げてきました。その結果生まれたのがソフトウェア・プラットフォーム「GridOS」です。GridOSは計画、運用、およびトランザクション処理にまたがる新たな中央集権型のグリッド・オーケストレーション・ポートフォリオで、電力システムの進化に合わせて適応し続けていきます。

GEデジタルのグリッドソフトウェア担当ゼネラルマネージャーを務めるマヘッシュ・スダカランは次のように説明します。「私たちは送配電網におけるソフトウェアの活用法を根本的に変えようとしています。送配電網に電力を供給する存在は、データセンター、太陽光発電設備をもつ企業、マイクログリッド、風力発電所、都市やコミュニティ、そして私たち個人ユーザーまでもが含まれます。ですが、このような電力の多くは再生可能エネルギー由来であり、断続的な流入であるため柔軟性が求められます。これらのエンドポイントでは、電力システムから電気の取り出しおよび戻し入れの2つを行っているからです。」

GEデジタルグリッドソフトウェアのチーフプロダクトオフィサーを務めるショーン・モーザーは次のように説明します。「異常気象に対処するために必要な送配電網のレジリエンスに加え、プロアクティブで自動化された最新のネットワーク型グリッドがなければ脱炭素化目標は実現できない、というのがGEの基本的見解です。オーケストレーション・ソフトウェアは、よりクリーンなエネルギー源を確実にフロントラインに送出するために不可欠です。これにより、必要なときに必要な場所で電力を利用できるだけでなく、CO2排出量を削減する機会を最大化することができます。問題は、送配電網側の準備が整っていないことです。送配電網は重要かつ不可欠であり、エネルギー転換を実現するための強力なツールとなります。ですが、現状ではそうなっていません。今のままではボトルネックとなり、制約要件になってしまいます。必要なのは、ハードウェアとソフトウェアのより良い融合です。」スダカランも次のように述べています。「GridOSは、運用技術と情報技術という2つの側面をより適切に統合するシステムです。」

GEデジタルでは、すでにGridOS関連のソリューションで課題解決に取り組んでいます。重要な課題の一つが「予測」です。GEデジタルグリッドソフトウェアのプロダクトマネジメント担当バイス プレジデントを務めるジャン=マルク・ムーランは次のように説明します。「GEは、北欧の電力会社および事業者が、翌日に現れる可能性のある需給の不均衡をより正確に予測できるよう支援しています。AIとML(機械学習)テクノロジーを利用して予測を行っているのです。」モーザーも次のように説明します。「これまで、電力消費量と発電需要は事前の予測が可能でした。しかし、非常に多くの新たなデバイスや新たなエネルギー源が送配電網に接続される今日では、状況を事前に把握することは従来に比べはるかに困難になっているのです。」

さらに、昨今の異常気象は予測をいっそう難しいものにしています。気候変動が激しくなることで従来の送配電網のコンフォートゾーンから大きく外れてしまうからです。たとえば、テキサス州では近年2度にわたって極寒の影響を被り、カリフォルニア州では猛暑が送電網に同様の打撃を及ぼしています。米国エネルギー省のデータによると、2011年から2021年までの10年間で5万人以上の顧客に影響を及ぼした停電事例報告数は、その前の10年間に比べ60%以上増加しました。ますます不安定になる環境の中で、GridOSは信頼性の強化によりフォーカスを当てています。

GridOSのポートフォリオは「ソフトウェア」と「プラットフォーム」という2つの側面で捉えることができます。1つ目のソフトウェアとしては、風力発電や太陽光発電、電力会社、送配電事業者、発電所を含む電力をエンドツーエンドでオーケストレーションするために必要なAI/ML主導のインテリジェンスを提供するよう設計されています。2つ目のプラットフォームとしては、将来のアプリケーションやイノベーションを実現するための基盤となるデータ、接続性、セキュリティを提供します。さらに重要なこととして、エネルギー転換を確実に実現するためのプラットフォームとしても機能することが挙げられます。モーザーは次のように説明します。「ボトルネックを回避し、GridOSを構築するために、まずは必要な機能を洗い出し、次にそれらの機能を構築するところから始めました。その結果、これらの機能をお客様が利用できるようにできただけでなく、望んでいた通りの成果を実際に導き出せました。これが大きな自信につながりました。GridOSは、私たちが得たこれらの学びを取り入れ、現在我々が進めているすべてのことにも適用できているのです。」

テクニカルな側面を見ても、GridOSにはいくつかの重要な機能が投入されています。最も重要なことは、きわめて現代的でインターネット的な「ゼロトラスト」セキュリティモデルを採り入れていることです。これは従来のセキュリティモデルを完全に打破する、常に確認するコンセプトを備えた一連の原則です。かつての送配電網では、セキュリティとはいわば粗末に築かれた城郭とその周りの壕のような関係のシステムで運用され、外部の脅威から内部の接続を保護していました。しかし、これほど多くの参加者が存在し、非常に複雑化した送配電網では、この仕組みはもはや不可能です。これについてムーランは次のように説明します。「この新たなモデルはフィンテック、つまり金融技術では典型的に活用されてきたのですが、電力業界ではなじみがなかったものです。何事においても思い込みを避け、継続的に監視するツールを使って、ルールが正しく実行されていることをひたすら確認することが重要なのです。」接続がハンドシェイクされるときには、ハンドシェイク自体とその確認が必要です。あるいはモーザーの表現を借りれば、「このソフトウェアは、あなたが誰なのか、あなた本人と一致するのか確認するのに役立つわけです。」

プラットフォームとしてのGridOSは、データを処理するだけでなく、収集した情報をディスプレイに表示し「一枚のガラスシート」のようにユーザーに届けることも可能であるとムーランは説明します。GEではこれを「Federated Grid Data Fabric」と呼んでいます。一方、モーザーも次のように説明します。「例えば、どの車両がいつ充電される可能性があるか、あるいはいつ放電する見込みかといったたくさんの情報を利用可能なデータにまとめる方法なのです。最善の意思決定を可能にするためには、すべてのデータをまとめ、IoTとしてコンテキスト化できることが本当に重要なのです。」GridOSプラットフォームの優れた点は、万華鏡のように千変万化するインテリジェント グリッド アプリケーションのパターンをホストできることであり、アクティブ管理、あるいは自動化された送配電網管理を担うコントロールルームを最新化することができることです。

最後に挙げる特長は、GridOSはハイブリッドクラウド・アーキテクチャを採用し、一連のアプリケーションを最適化・拡張して、ネットワーク上でそれらを必要とするお客様に即座に提供できることです。「これはクローゼットや小さな部屋に収まるサイズのシステムではありません。最小でもデータセンター1カ所程度のサイズの構成が必要なのです」とモーザーは説明します。GridOSは、AWSなどのクラウドパートナーと協力して情報管理を進化させています。ユーザーのニーズに対応し、休むことなく稼働し続ける大規模ソフトウェアをサポートするために不可欠だからです。

グリッド オーケストレーション ソフトウェアはあらたな扉を開きました。指揮者が大編成のオーケストラで交響曲を指揮するのと同じように、電力会社がユニバーサルな基準と技術を利用して電力をオーケストレーションできるようにします。モーザーは次のように説明します。「私たちが成し遂げようとしている重要な特徴の一つは、これを高度にカスタマイズされた手法で構築された特注の学術的なソフトウェアから、エンタープライズソフトウェア的なものに発展させることです。他のミッションクリティカルな制御システムと同様に再現性が高く、高度に安定し、均一性に富んだ、非常にレジリエンスなシステムを構築することを目標にしています。」

交響曲から生まれる和音や音質のように、新たなアイデアやインプットは一方向からしか出てこない、ということは有り得ません。GEはソフトウェア ソリューションの利用を一方的に押し付けるのではなく、お客様のイノベーションの力も活用したいと考えているのです。「GEはお客様のイノベーションも今まで通り引き出したいのです。私たちはこのシステムをよりセキュアに、よりコントロール下に置けるようにしながら、実際にはお客様によって構築できる安定したエコシステムレイヤーとインターフェイスを備えることを目指します。」電気の流れがそうであり、音楽におけるアルペジオもそうであるように、GEはイノベーションにも双方向なフローを望んでいるのです。

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