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英国でのSMR導入に向け、大きな一歩を踏み出したGE日立

ウィル・パルマー

多くの国々と同じく、英国でも急ピッチで風力、太陽光その他の再生可能エネルギーによるCO2排出量の削減とエネルギー安全保障の強化に向けた取り組みが進んでいます。同時に、多くの国々と同じく、英国でも原子力エネルギーがさらに存在感を増しつつあります。英国ではすでに電力の約15%を原子力発電が占めていますが、2050年までに原子力による発電容量を現在の3倍である24GWに増強する見通しです。これにより、旧式のガス冷却炉を備える原子力発電所の廃止を進めながら、将来の電力需要の約25%を原子力で賄うことが可能になります。こうしたエネルギー安全保障上の目標を達成するために、英国は新世代原子炉の導入にも力を入れています。その中には、GE日立ニュークリア・エナジー社(GE Hitachi Nuclear Energy、以下GEH)が設計した小型モジュール原子炉(Small Modular Nuclear Reactor、以下SMR)「BWRX-300」も含まれています。

2022年12月、GEHは英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(以下BEIS)にBWRX-300 SMRの包括設計審査(GDA: Generic Design Assessment)に関する申請を提出したことを発表し、英国でのSMR建設開始に向けて大きな一歩を踏み出しました。これにより、英国の規制当局はGEHが設計した新たな原子力発電所が安全性、セキュリティ、および環境保護基準を満たしているか審査プロセスに入ることになります。

BEISが先頃発表した2023年1月のポリシーペーパーには次のように記されています。「英国政府は、安全で安価な脱炭素エネルギーシステムを支える低炭素エネルギー源として、大規模原子力発電所と並んでSMRが重要な役割を果たすことができると考えています。SMRはサイズがコンパクトでモジュール化されており、オフサイト製造も可能なため、柔軟に配備することが可能です。」

エネルギーミックスにおいて原子力発電の存在感を高める、という点は、英国政府がエネルギー安全保障と気候変動に対処するために2020年に発表された「グリーン産業革命のための10ポイント・プラン(Ten Point Plan for a Green Industrial Revolution)」にも含まれています。

GEHの先進原子力部門担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるショーン・セクストーンは次のように説明します。「私たちはBWRX-300が英国にとって脱炭素化とエネルギー安全保障の目標を達成するための理想的なテクノロジーであると確信しています。また、カナダと米国の規制当局はBWRX-300の建設に関する予備的設計審査について協力することに合意しています。今回のGDAプロセスを通じて、英国の規制当局との協力関係を築くことができると期待していますし、さらには各国の規制当局との協力も可能になることを願っています。」

SMRは、出力が最大300MWの原子炉と定義されています。こうした小型原子炉は、従来の大型原子炉よりも迅速な設置が可能な上、単位あたり出力コストも低減できると見込まれています。

SMRの中でもGEHのBWRX-300への関心は世界中で高まりつつあります。2021年12月、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション社はカーボンフリーの電力を送配電網に供給することを目指し、2030年までの稼働を予定するグリッドスケールSMRの技術パートナーとしてGEHを選定しました。また、2022年6月にも、カナダ・サスカチュワン州のサスクパワー社が2030年代半ばまでに建設を見込むSMRとしてBWRX-300を選択しました。

また、ポーランドでもオーレン・シンソス・グリーン・エナジー社が、2030年代初頭までに少なくとも10基のBWRX-300 SMRを同国に配備する意向を表明しています。さらに、SMRに注力するスカンジナビア初のプロジェクト開発会社であるスウェーデンのシャーンフル・ネキスト社はGEHとBWRX-300の設計に関する予備的覚書を締結しています。

2022年2月には、テネシー川流域開発公社が脱炭素化目標の達成に向け、先進的な原子力技術を探求する新たなイニシアチブに同意しました。この「New Nuclear Program」は、テネシー州のクリンチ・リバー発電所および「将来ほかのサイトにも展開可能なポテンシャルがあるかを検討するため」に最大2億ドルを拠出する予定です。

GEHは、2007年以来、英国における新規原子力発電所プロジェクトの許認可申請手続きをサポートする企業であるジェイコブス社から支援を得ており、今回のGDA申請準備においても同様のサポートを受けています。これに関し、同社の原子力担当バイスプレジデントのドーン・ジェイムズは次のように述べています。「今回のGDA申請に伴う弊社とGEHとの尽力は、英国のエネルギー安全保障を確かなものにするための協力体制であり、サステナブルな世界を構築するという私たち両社の目標をより進展させることでしょう。」

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