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リーンで品質を極める:よりパワフルな未来に向けて焦点を絞るGE Vernovaの陸上風力発電ビジネス

ダイアナ・デリング

ジョアンナ・ウェリントンは米国内にあるGE Vernovaの風力タービンの1基に新たなギアボックスを取り付けることを承認しようとしていました。しかし、彼女はサブコンポーネントの製造プロセスに気になるところを見つけたため、承認をいったん中止しました。彼女がリーダーを務めるGE Vernovaの陸上風力発電ビジネスのとある部門は、最近その名称をMajor Components ExchangeからMajor Components Upgradesに変更しました。これは、既存のタービンの部品を交換する際は、交換する元の部品よりも高品質の部品(アップグレードされたもの)でなければならないという新たなコミットメントを部門名に反映したものとなります。今回のギアボックスの取り付けがこの社内コミットメントに適うものかどうか確信が持てなかったため、ウェリントンは「ラインをストップする」決断を下しましたが、それは品質に関連する懸念を抱いた場合、陸上風力発電部門のすべての社員はそうするように現在奨励されているからです。

「私の仕事は問題にバンドエイドを貼るのでなく『薬を注射』できているかを確認することです。タービンを触って作業するたびに、より良いものにすることが目標です」とウェリントンは語ります。

GE Vernovaのフロリダ州ペンサコーラのタービン製造施設のチームメンバーは、製造欠陥ゼロを目指して、リーン方式に沿ったイマーシブ型の継続的改善トレーニングである「カイゼン」イベントに定期的に参加しています。トップ画像:ニューメキシコ州のウエスタンスピリット風力発電所にある2MW級のタービン群のうちの1基の上に立つメンテナンスクルー。本記事中のすべての画像提供:GE Vernova

ウェリントンの「ストップ」指令は、彼女の懸念が解決されるまでプロジェクトがそれ以上進まないことを意味しました。迅速なグループディスカッションが行われ、手持ちのコンポーネントも検証しました。その後、陸上風力発電関連部品におけるフルフィルメントのリーダーであるキアステン・グレゴリーが、問題部品の出荷を停止するよう彼女のチームメンバーに指示し、より高品質の部品を現場に回すことができました。その結果、ウェリントンは自信を持って承認(サインオフ)することができた上、最終的に、問題のサブコンポーネントはより優れた品質のものに置き換えられました。

CTO(最高技術責任者)兼エンジニアリングリーダーを務めるトム・フィシェッティ(Tom Fischetti)は次のように説明します。「私たちは、すべての社員が自分の仕事に自信を持ってサインオフしてほしいと考えています。製品設計およびエンジニアリングに携わる社員をはじめ、すべての社員は現在、あらゆる段階で自分の決断に責任をもってサインオフしています。人は間違いを犯すものですが、このプロセスにより、時間をかけて作業を見直し、安全性、品質、その他すべてについて想定と分析が的確に行われているかどうかを確認できるのです。」

ウェリントンとグレゴリーは問題を迅速に解決すること、ひいてはお客様に付加価値をもたらすことにこだわり続けています。これは単なる手続き上の微調整にはとどまらない、GE Vernovaの陸上風力発電ビジネスで起きている事業全体の革新の一部なのです。安全性を確保することはもともと常に譲れない最優先事項でしたが、約1年前に陸上風力発電ビジネスの新CEOに就任したヴィック・アバーテが製品の設計、製造、保守サービス手法を合理化することを会社のミッションとして定め、リーン方式に沿った一連の管理ツールを導入し、安全性、品質、納期そしてコスト(Safety, Quality, Delivery&Cost、以下「SQDC」)の「Q」により重点を置くようにしたのです。エンジニアリングから製造、サービス、パフォーマンス管理に至るまで、アバーテと共に決意を固めた幹部たちは、陸上風力発電ビジネスをより効率的で、かつ収益性の高いオペレーションへと変革するためにオーバーワークをいといませんでした。そしてその成果はすでに現れています。

 

Zero-Defect(無欠点)目標と世界最高の稼働率を誇る製品

 

世界の風力発電業界にとって数年間の困難な時代を経て、GE Vernova陸上風力発電ビジネスの品質への新たなるコミットメントが重要な時期を迎えています。需要の顕著な高まりも見込まれており、米国の陸上風力タービン市場シェアをリードしてきた同ビジネスは、50か国以上に約5万5千基の陸上風力タービンを設置してきました。SQDCに重点を置く一方で、それでも生産量を増やすことは必須となります。アバーテによると「今後10年間で世界の風力発電容量は倍増する」とのことです。これはGE Vernovaの陸上風力発電ビジネスが今後10年間で2桁の成長を見込むことを意味します。

陸上風力発電ビジネスの製造部門を率いるフランク・バウアは次のように語ります。「私たちは世界最高の稼働率を誇る製品群を確実に提供できる体制を整えています。それは製造段階から始まります。品質保証に関してはGE Vernovaの生産施設を『最終関門』と見なしています。私たちが掲げる目標はZero-Defect、つまり製造工場から現場に出荷される製品の不良を文字通りゼロにすることです。」

これは実に高い目標を設定することになるわけですが、バウアは近年、GEのビジネス全体に導入されている継続的改善システムであるリーン方式を通じて達成できると確信しています。品質管理の問題は、インダストリアルプロセスでは常に発生するとも彼は説明します。その対処の仕方によってすべてが違ってくるというわけです。

 

陸上風力発電部門の「主力」製品ラインの一つである3MW級タービンの上に登ったメンテナンスクルー

バウアはさらに次のように説明します。「品質のためにラインをストップするというのは、これまで安全のためにラインをストップしてきたのと同じように、私たちはシンプルに問題をはっきりさせ、対処できるようにしているに過ぎません。重要なのは、問題に対処するときには解決ツールとスキルを活用し、非常に体系化された手法で取り組むことであり、同じことが繰り返されないようにすることなのです。」

2022年にアバーテが発表した『基本に立ち返る』戦略に沿って、陸上風力発電部門は主力製品の戦略をリードしています。同部門はこれまで約40種類の風力タービンタワーの設計を受注していましたが、今後はさらに最も信頼性が高く、収益性の高い製品の提供に注力することにしました。3MWプラットフォームおよび6MWプラットフォームの高性能な主力製品により注力することで、ポートフォリオの簡素化および合理化を図りつつ、より優れた品質と将来のイノベーションのための強力な基盤を実現することができました。

2021年にGEに入社したバウアは、自動車業界で長年サプライチェーンの管理に携わり、リーン生産方式の専門知識を磨いてきました。1960年代にトヨタで初めて開発された生産効率を高め、無駄を省き、少ないリソースでお客様により多くの価値を提供するカイゼンと呼ばれるリーンの原則は、今や自動車業界では標準となっており、バウアは陸上風力発電部門の製造現場、そしてそれ以外でもでリーンの原則のプレゼンスを高めることを使命としています。

「リーン方式は品質だけでなく、安全性、納期、コストを改善するために必要なツールを私たちに提供してくれます」とバウアは言い、それを証明するデータも次のように紹介しています。2021年当時、GE Vernovaのペンサコーラ・タービン製造プラントで製造されたユニットのうち、71%が一度目のテストで最終検査に合格しました。2023年には同じ項目が91%に達し、年末までに95%という目標を達成する見込みです。

 

最適な出力と効率を目指して

 

タービンが検査に合格して風力発電所に運搬されると、フリート・パフォーマンス・マネジメント(Fleet Performance Management:以下FPM)チームの作業が始まります。FPMチームは、すべてのGE Vernova製タービンが可能な限り高い効率で稼働するよう、リアルタイムで性能データを監視し、必要に応じてソフトウェアやテクニカルアップグレードを施し、即座に技術的な支援を提供します。

エグゼクティブディレクターを務めるアラン・ラムが率いるFPMチームは、世界で最も稼働率の高い陸上風力発電所を確立することを唯一のミッションとして、アバーテとラムによって今からほぼ1年前に結成されました。ラムは次のように説明します。「私たちはフリート内のタービンがどのように性能を発揮しているか、その目と耳の役割を果たすビジネス部門を必要としていました。こうして、私たちが学んだことを組織の他の部門にも還元し、部門を超えて協力しながら業務をより深く理解し、最適なソリューションを実装できるようになるのです。」

 

ペンサコーラで製造される風力タービンは、50か国にわたり合計で101GW以上の電力を創出する世界規模の風力タービン群の一角を担っています

 

6か月にわたる計画とその実施を経て、ことし5月に新たなグローバル・リモート・オペレーション・センター(以下ROC)がニューヨーク州スケネクタディに開設され、これまで複数の拠点で実施されていた作業が1か所の集中ハブに統合されました。「現在、この1か所から世界中にある2万3千基の風力タービンを遠隔操作できるため、スケールメリットと専門知識の両方を提供できます」とROCのリーダー、マシュルバ・タスニームは述べています。

風力タービンフリートのパフォーマンス・エンジニアリングをグローバルに率いるジョン・ホートンも次のように説明します。「これまでは世界中に複数のチームを配置し、異なる手法、ツール、プロセスをそれぞれ活用していたのですが、実は本質的に同じことを行っていました。ROCがこのたび開設されたことで私たちは1か所で、ベストプラクティスと共有された知見に基づく、1つの統合的なシステムを運用できるようになりました。」

ホートン、タスニーム、そして陸上風力発電部門のグローバル・オペレーション・ディレクターを務めるマーク・タフトの3人は、3人ともリーン・デイリー・オペレーション・チーム(Lean Daily Operations Team)の一員であり、効率化と無駄の削減を目的とした取り組みにおける連携を図っています。(“無駄”(waste)とはお客様にとって付加価値を生み出さない活動や支出を指します。)その成果はこの1年間で既に現れています。リーン・デイリー・オペレーション・チームはタービンの故障などシステム全体の不具合を30%削減し、チームが問題の報告を受けたタービンを送配電網に再接続するのに要する時間を20%短縮する手法を見出しました。

タービンのパフォーマンス・データも継続的に収集され、proactive optimizationとして知られる分析が実施されます。エンジニアはデータ内のパターンを把握すると、それを使用して潜在的な問題を未然に防止し、タービンの性能を向上させる新たな手法を見出すことができます。

「私たちはデータと保証の請求や発生する技術的問題を検証し、問題が大きくなる前の小さな段階で検出しています」とタフトは語ります。これにより、問題が現場の技術者によって対処が必要になる前に修正できるようになるのです。

 

品質へのこだわりでスタートする毎日――アカウンタビリティと共に

 

もちろん、ビジネスの変革には、全体の調整が必要です。その目的を達成し、多くの課題のなかで継続的な改善を最優先に行うために、陸上風力発電部門の幹部メンバーはCEOのアバーテとともに、毎日午前8時ちょうどから始まる「Lead With Quality(品質でリードする)」会議に出席しています。ラムとフィシェッティが進行役をつとめるこの会議は毎日約1時間続きます。単純なステータス報告にとどまらず、顕在化しているまたは潜在的な品質問題、未達または達成された目標についての詳細な議論も含まれます。

この会議についてタフトは次のように説明します。「私たちは毎日、調査したり解決したりしなければならない課題を抱えて会議室を後にします。これにより、各部門で別々に業務を進めるのではなく、全員が一つの目標に向かって一緒に歩むことができます。そして結果的に全員がアカウンタビリティを担うことになるのです。」

陸上風力発電部門の各チームは昨今、カスタマーレスポンスの迅速化や保証請求件数の削減など、自らの責任に関連するKPIに基づいて、具体的で測定可能な四半期目標を設定しています。各チームとも「ラミネーテッドカード」として知られるデジタルフォームでこれらの目標に取り組んでいます。ラミネーテッドカードとは数十年前のリーン方式用語で、1枚の紙に耐久性を持たせ、内容を書き換えられないようにする最善の方法がラミネート加工することだった時代の名残りです。彼らは朝のミーティングで「ラミネートされた」目標を共有し、議論を重ねます。

 

米国南西部の施設で100MW以上の電力を生成するGE Vernova の陸上風力タービン群

 

新たな目標達成フレームワークの開発にも携わったウェリントンは次のように述べています。「目標を設定した後、私たちは日々のパフォーマンスを測定し、それを毎日、毎週公表しています。もし計画通りにいかないことがあれば、その理由を調べます。そして学んだことを今後に活かします。これを私たちは何度も繰り返すのです。」

これらはすべてとてもシンプルなことのように聞こえますが、ビジネスのオペレーション手法をできるだけシンプルにすることもアバーテの最優先事項の1つです。たとえば、製品ラインの合理化は、陸上風力発電部門が米国のより多くの地域で利益を上げられるようになり、これまで進出できなかった海外市場に拡大する機会があることを意味します。アバーテによると、地域ごとの設計のバリエーションをなくすことで、彼の部門は「2024年に向けて5億ドルの原価削減」できるようになったのです。

タフトは、この新たなアプローチが状況を一変させたと語り、さらに次のように説明します。「仕事の優先順位の付け方が変わり、我々のビジネスや業界にとって重要な問題を後回しにするのではなく、真に解決するのに役立っています。私たちはいったん立ち止まって品質に今一度フォーカスすることで、自分たちにとって本当に最適な製品を見出してきました。私は陸上風力発電部門で12年以上勤務していますが、最高の年がこれから重なっていくことを実感しています。」

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