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リーンの道: カルプCEOがGEのリーン改革の進捗情報を説明

ジェイ・ストウ

ラリー・カルプがGEの会長兼CEO就任時に発表した中で最も重要な取り組みは、リーンマネジメントというコンセプトを導入し実践することでした。カルプは会長兼CEOのポストに就いて2周年を迎えた時、社員や一部のメディア関係者に対してGEが導入したリーンマネジメントのこれまでの進捗状況を説明しました。カルプは最初からリーンはGEにうってつけの概念だと考えていました。「会社を経営するにはリーンの原則を実践するしかない。私が知る限り、それが唯一の方法です」とカルプは話します。

多くの経営理念と同じく、リーンにも独自の用語と考え方があります。しかし、リーンはあらゆる原則を生み出した概念である「継続的改善」と一体化できるものです。「継続的改善」は、日本語をそのまま使って英語でも「カイゼン・kaizen」と呼ばれています。カイゼンは、向上のための努力を毎日続けることを意味し、会計部門にも製造現場にも適用できる概念です。カルプはリーンについて「それは単に複数のツールのセットというものではなく、もはや生き方そのものなのです」と述べています。

カルプは30年前、ビジネススクール在学中に初めてリーンに出会いました。しかし、リーンについて学び、仕事に応用し始めた時に、自分がこれまでの人生の中でリーンの重要な教えの多くをすでに体験していたことに気づいたとカルプは語ります。「リーンの土台を成す中心的な思想の多くは、中学時代のバスケットボール部のコーチに言われたこととほとんど同じです。コーチは『上を目指し続けなければ、落ちるだけだ』と言っていました。それは、私たちが練習に取り組むよう指導するためのセリフでした。ただ、コーチのこの言葉はカイゼンの理念である継続的改善の本質をかなりうまく捉えています。これこそ、私たちがGEに浸透させたいことのひとつです。」

カルプとリーン推進チームの面々は、リーンをピカピカの新品として紹介することはせず(リーンは実際に、新しい考えではなく数十年前から実践されてきたものです)、体系的に展開していきました。「リーンに関する言葉の一部には、ありふれた言葉として乱用される恐れがあります」とカルプは説明します。「私たちが本当にやりたいのは、リーンの理念を業務の中で運用できるようにし、ここボストンにある取締役会の会議室だけでなくGE全社にいる社員全員にリーンの原則を業務の中で実践する方法を理解してもらうことです。」

カルプはこの目標に向けた努力を示すために、プレゼンテーション中にリーンマネジメントのエキスパートであるGE社員を2名紹介しました。1人はGEコーポレートで財務担当シニア・リーン・リーダーを務めるアンジー・ノーマンです。彼女はこの秋まで駐在していた英国のGEアビエーションの生産施設でムダ取りを教える短期集中コースを実施しました。ノーマンが紹介したバリュー・ストリーム・マッピング(VSM)をはじめとするリーンの概念のいくつかは、GE社内全体で広く使用されています。その一方で、「プル(pull)」(顧客の需要のスピードに合わせて作業すること)など、まだ非常に新しいリーンの概念もあります。しかし、ノーマンのチームが削減し改善したムダな時間と労力の量がリーンのパワーを証明しています。ノーマンが担当したイギリスの生産施設は、在庫量・サイクルタイム・移動時間を削減し、労働生産性を大幅に高めることに成功しました。ノーマンの言葉を借りれば「リーンは一時しのぎの改善策ではなく、長期にわたる旅」なのです。

もう1人はGEデジタルでリーン及びオペレーション担当責任者を務めるベッツィ・ビンガムです。ビンガムは日本人が「現場」と呼ぶ場所の重要性を詳しく解説しました。日本人がいう「現場」とは、自分のデスクから離れて生産現場やオフィスのホワイトボードをはじめとする職場のあらゆる場所に足を運んで工程を見て回り、生産の状況や不具合が起きている部分を自分の目で確認することを指します。カイゼンを行うために重要なのは、問題の根本原因を見極め、解決するための対応策を考え、考案した改善策を「標準化して継続させる」ためのプロセスを展開することだとビンガムは話します。これをやらない限り、同じ問題の解決を何度も繰り返す羽目になるのです。バリュー・ストリーム・マッピング(VSM)(業務工程中のすべての手順を割り出し、それらが付加価値を生み出しているか否かを判定するツール)を活用し、新たな評価基準を導入することで、2020年のGEデジタル全体に対するデジタルグリッド部門の貢献利益を前年比30%も高めることができたとビンガムは報告しました。

カルプは記者たちから多岐にわたる質問を受けました。例えば「リーンはイノベーションにどのように応用できますか?」「リーンは現在、GE社内でどのくらい広く実践されていますか?」「これから出てくる課題にはどのようなものがありますか?」などです。また当然ながら「顧客や株主たちがリーンの効果をGEの財務諸表上に見られるようになるのはいつ頃になりますか?」という質問もありました。

「私が継続的改善の精神に則って、長きにわたって学びそしてGEで見てきた事実から言えることは、前進していれば次の機会が見えてくるということです」とカルプは語りました。「コロナ禍を抜け、よりノーマルな経営環境になる頃には、GEはお客様や投資家にとってより強く、より良い企業になっている、私はそう確信しています。」

カルプはさらに次のように付け加えました。「GEが世界に築いてきたさまざまなビジネスとその技術的なリーダーシップは当社の収益の半分を占める大きな成果でもありますが、これらに目を向ければGEが1桁台後半の利益率を確保できるようになると確信しています。この予測はこの第3四半期中には実現しないでしょうし、2021年中でも難しいでしょう。しかし、アンジーとベッツィが皆さんに説明したさまざまな取り組みが重なり合い、近い将来に実現できるはずです。私たちにはやるべき仕事をこなす時間が必要ですが、しかるべき時に皆さんに結果をお見せすることができます。私たちは必ずやり遂げます。」

最上部の画像: 工場を視察するラリー・カルプCEO。この写真はコロナが流行する前に撮影されたもの。 画像提供: GE

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