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レーザーで見えないところまでお見通し:3Dプリンティング技術の向上とコスト削減にリーン方式が切り込む

アラン・S・ブラウン

トーマス・ケルナー

もう2017年のことになりますが、当時世界最強だったジェットエンジンを転用して、数千世帯をまかなうのに十分な発電量の発電用タービンを開発したことでGEのエンジニアチームは世界を驚かせました。この出来事は多くの注目を集めましたが、開発チームはそこで満足しませんでした。タービンの改良を目指し、新たに組まれたチームは新しいイノベーションを生み出そうとしました。核となる4つの金属部品を3Dプリンティング技術で製造することにより、コストの観点だけ見ても従来の製造方法で作ったものと遜色がないことを証明したのです。

「これはゲームチェンジャーになる技術です」とGEアビエーションのアディティブ・マニファクチャリング(金属3Dプリンティング)部門リーダーを務めるエリック・ガトリン(Eric Gatlin)は言います。彼はさらに「部品を丸ごと新技術で造形したものに置き換えるのはこれが初めてだったのですが、従来の鋳造に比べ、アディティブ技術を用いる方が安価だったのです。コスト競争力が確実にあることを裏付けるために、外部ベンダー4社に同じ部品の見積もりを依頼したのですが、GEのアディティブ・マニファクチャリング、すなわち3Dプリンティング技術を用いる方がより低コストに製造できることがわかったのです」と語りました。

このプロジェクトはGEの変革を推進する力であるリーン方式の多様性を示す新たな一例ともなりました。20世紀に日本から採り入れたビジネスフィロソフィーであるリーン方式は、継続的な改善という考え方を基本にしています。そして、これまでも半世紀にわたって米国の企業でも目覚ましい成果を上げてきました。GEはリーン方式をさらに浸透させ、製品の製造過程やお客様へのサービスの改善、在庫の削減やオフィス業務の簡素化など、今ではイノベーションをさらにスピードアップすることに役立っています。

簡単に言えば、アディティブ・マニュファクチャリングは、コンピューターファイルのデータを基に、一度に一層ずつプリンティングすることで金属部品を作成できるため、これまではコストがかかりすぎる、あるいは絶対に設計不可能だった特殊な形状の製品もエンジニアが思い描けるようになりました。また、この技術を使えばより軽量な、或いは今回で言えば製造コストが割安な部品をつくることも可能です。たとえば、GE9Xはボーイングの777X新型ジェット旅客機向けにGEが開発した世界最強のジェットエンジンですが、3Dプリンティング技術を活用した部品が組み込まれ、燃料消費率の向上に役立っています。さらに、GEの新型ターボプロップエンジンであるCatalystの開発に取り組んでいるチームは、3Dプリンティング技術を活用して855個あった部品をわずか10個程度に集約することを可能にし、前にもましてテクノロジーを進歩させることになりました。

GEアビエーションは先頭に立ってアディティブ・マニュファクチャリング技術の開発を進めてきました。GEアビエーションはオハイオ州シンシナティにある本社近くにAdvanced Technology Centerを開設したほか、アラバマ州オーバーンに産業用3Dプリンティング工場を建設したのです。

このアラバマ州の工場ではこれまでの常識を打ち破る最新事例がありました。コロナウィルス・パンデミックの発生が生産スケジュールに影響を及ぼした際、オーバーンのチームは新しいプロジェクトに取り組む余裕が生まれたことに気づいたのです。すべてのきっかけはガトリンと彼のチームが3Dプリンティングで造形可能な部品の候補を選ぶ年次レビューが済んだときから始まりました。「私たちは常に製品のコスト削減を目指して見直しを行っており、私たちが外部から購入する何百もの鋳造品もその対象です。その際には『さらに競争力を高められないか?』『1年前にはできなかったことでも、直近は技術的に実現可能になっていることはないか?』と確認し続けているのです」とガトリンは言います。

そこで、彼らは世界最強のジェットエンジンの一つと称されるGE90の技術を転用して開発したLM9000ガスタービンにもさらなる見直しを行いました。カイゼンとして知られる一連のリーン方式の活用がここでも発揮され、ガスタービンの4つの部品を3Dプリンティングで製造してみたらどうかという考えにたどり着きました。

チームはさまざまな側面から検討を重ね、新旧部品のサイズや形状、機能、素材、およびGEアビエーションの所有する3Dプリンターの能力などについて多角的に精査しました。GEアビエーションのシニアプロジェクトマネージャー兼プロジェクトリーダーを務めるジョセフ・ムーア(Joseph Moore)は「私たちチームの目標は、これまでの生産方法の延長線上で勝負するのではなく、常に見直し、円滑に進まない箇所を見つけ出すことでした。航空業界向けの鋳造品生産に投資ができる外部サプライヤーは数少なく、彼らが時代遅れの技術や独自のコストモデルに依存しないで済むような選択肢が必須になります。なぜなら、アディティブ・マニュファクチャリングでより低コストに部品を生産することができれば、すぐにも経費を節約でき、今後も無駄なコスト増を避けることができるからです」と述べています。

トップ画像:GEアビエーションのアディティブ・テクノロジー・センター(Additive Technology Center)のエリック・ガトリン。画像提供:GEレポートのトーマス・ケルナー。上部画像:GEアディティブとGEアビエーションはリーン方式を活用し、GEアディティブのConcept Laser M2 Series 5プリンターで形成可能な4つの部品を特定しました。これら3Dプリンティングされた4つの部品は、従来の鋳造部品と比較して35%ものコスト削減を実現したことに加え、さらに優れている点として設計から生産までの工程に10か月しか要しなかったことが挙げられます。画像提供:GEアディティブ。 

2020年2月までGEアビエーションとGEアディティブのエンジニアで構成されたチームは協働し、まず3Dプリンティングでコストを節減できる可能性があると考えられた鋳造部品を180点に絞り込みました。つぎに、これらの部品をいくつかのグループに分類し、従来の製造法と3Dプリンティングした場合を比較してコストを算出しました。

そのわずか1か月後、チームはすべての要件を満たす4点の部品を特定し、オーバーン工場とも協働して計算上のコストが正しいかどうか確認しました。「私たち工場の現場にいる人間が、今回のようなプロジェクト、つまりGEアビエーションのアディティブ・テクノロジー・センターによる低コストでの量産プロセス開発に参加するのは初めての経験でした。このプロジェクトが従来と違ったのは、生産工場がスタートラインから参画できたことです。ここにいるような現場のエンジニアにもプロジェクトに関わる機会が巡ってきたのですから」とオーバーン工場のシニアプロジェクトマネージャー兼プロジェクトリーダーを務めるジェフ・エッシェンバッハ(Jeff Eschenbach)は述べています。

エッシェンバッハが率いるグループは、GE Additive Concept Laser M2 Series5プリンターを揃え、部品の生産に取り掛かりました。M2はGEの最先端3Dプリンターの一つで、従来の一本のレーザー光線を照射する仕様のプリンターに比べ、二本のレーザー光線を照射し、溶解させた金属層を素早く重ね、融着させることで複雑なビルドを処理できます。400ワットまたは1キロワットのいずれのモードでも、M2のレーザー照射は造形速度が速いばかりでなくパワフルでもあります。M2のレーザー照射は、コバルトクロム超合金粉末から1回のパスで50ミクロンの厚さの層を生成できるのです。さらに驚くべきことに、この3Dプリンターは直径3.5インチ(約9cm)、高さ6インチ(約15cm)の部品を造形するための鍵となる21,000立方センチメートルの大型ビルドチャンバーも備えています。

チームはM2の性能を最大限に活用すれば、一度に4点の部品をプリントでき、生産性も高められ、さらにコストも削減できるという、製造における3つの要素を完璧に備えていることを実現してみせました。「私たちは前もって、承認済みの合金を使用すると決めていました。また、扱いに慣れていることもあり、生産現場でもM2を選択しました。大規模な設計変更の必要はなく、部品を正確にプリントできるようにいくつかの調整を加えるだけでした。さらに、チームが素早く動けるようにできるだけ多くのステップを簡素化しました」とガトリンは述べています。

このアプローチはうまくいき、3Dプリンティングされた4点の部品は従来の鋳造品と比較して35%ものコスト削減を実現しました。さらに優れている点として設計から生産までの工程に10か月しか要しなかったことが挙げられます。通常、鋳造プロセスを利用したガスタービン部品の製造には12〜18か月以上かかります。「3Dプリンティングされた部品をこれまでの部品と1対1で置き換えました。効率向上のための再設計や部品の再編成も不要でした。その結果、迅速に置き換えができました」とガトリンは語りました。 こうしてついにプロジェクトは新たな境地を開きました。GEアディティブのシニアテクニカルリーダーを務めるケリー・ブラウン(Kelly Brown)は次のように述べています。「ビジネスの観点からも、オーバーン工場での成功はGEがこれまでにない新たな力を手に入れたことを示しました。これからも3Dプリンティング技術を活用し、GEは新たな部品のラインナップをより充実させていきます。」

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