ロゴ

今こそ アディティブ・マニュファクチャリング(金属3Dプリンティング)に注目を

ジョン・フラナリー GE会長兼CEO
―これは、ジョン・フラナリー本人が記し、5月3日にLinkedInに投稿した記事の抄訳です―

「これまでの設計技術者は、『こんな形状のパーツ?果たして工場で設計通りに製造できるのか』と常に自問してきました。アディティブ・マニュファクチャリングを活用することで、今ではこのような制約はなくなり、従来ならば突飛に思えた形状も現在は完全に製造可能になりました。今の我々にとっての新たな目標は、真に最適な設計を実現することです。」ファブリツィオ・ブッシ(GEアビエーション、3Dプリント製の航空機用シャフトエンジン「GE CATALYST」のエンジニア)

今やアディティブ・マニュファクチャリング(付加製造)は、GEの事業分野の一角を占め、各産業界に大きな影響を与えています。私たちはその可能性に大きな期待を抱いています。

この5月に初開催となった「Industry In 3D」というイベントで米国のビジネス誌ファストカンパニー社のエディターであるボブ・サフィアン氏と有意義な話をしました。何十人ものイノベータ、顧客、科学者、そしてNASCAR(全米自動車競争協会)ドライバーのブラッド・ケセロウスキー氏も参加したこのイベントでは、アディティブ・マニュファクチャリングにおけるベストプラクティスを共有し、この技術が提供する機会について議論しました。

少し背景の説明をしましょう。3Dプリンティングを含むアディティブ・マニュファクチャリングという製造技術は、設計者を様々な制約から解放し、強靱かつ軽量、高度な機能性を持ち、より低いコストで製品を作ることを可能にします。金属3Dプリンタは、直接デジタル・データから任意のパーツをプリントすることができます。アディティブ・マニュファクチャリングでは、レーザーや電子ビームを用いて薄い層状の材料を溶融して1層ずつ重ねていき、「付加加工」つまり素材を付加することにより最終部品を作り上げます。これに対して、従来の方法で部品を作成する場合、マシニングによる切削加工やカービングなどの削り出しや、主にその他の「除去加工」プロセスを用います。アディティブ・プロセスを導入することで、企業の製造方法や事業運営を変革できます。なぜなら、品質、効率性、製造作業能力を大幅に向上させ、在庫コストを削減し、開発時間を短縮できるからです。

アディティブ・マニュファクチャリングが未だ初期段階にあることに疑問の余地はありません。コンサルティング企業のA.T.カーニー社が実施した調査によると、3Dプリンティングを使用して作られている製造部品の比率は世界で1パーセント未満です。しかしA.T.カーニー社は、2021年までに3Dプリンティングの市場価値が88億ドルから3倍の260億ドル以上になると予想しています。調査企業のスマートテック社によると、「過去4年間では、3Dプリンタ、プリンティング材料、ソフトウェア、3Dプリンタによる造形サービスにおよそ133億ドルが費やされと報告しています。しかし、次の10年間には、これらのプロダクト領域だけで2,800億ドル以上の投資が見込まれているのです。」

私は、この技術が業界を根本的に変革させると確信しています。航空宇宙、医療、自動車、エネルギー、その他の産業界の顧客に対して、確実に生産性や業績の向上をもたらせます。

ただし、どんな変革についても言えることですが、変わるためには時間や忍耐が必要であり、慣れ親しんだ手法から、脱却するマインドが求められます。

私たちは最近、「GEグローバル・イノベーション・バロメーター」意識調査を実施し、世界の経営者2,000人以上を対象に、「イノベーション、技術、並びに仕事の将来を形作るものは何か」について質問しました。アディティブ・マニュファクチャリングに対するメッセージは非常に明確でした。各社ともアディティブ・マニュファクチャリングの将来性に期待はしているものの、予想される変革があまりにも大きいと言うのです。回答の一部をご紹介します。

  • 世界の63%の管理職は、アディティブ・マニュファクチャリングの有望性に期待しており、好影響を与えると予想しています。
  • 91%が、アディティブ・マニュファクチャリングは創造性を向上させるだろうと回答しました。
  • 89%が、商品の市場投入が加速するだろうと回答しました。

同時に次のような回答がありました。

  • 53%が、アディティブ・マニュファクチャリングはまだその潜在力を発揮しておらず、より多くの教育や不安要素の払拭が必要であると回答しました。
  • 「3Dプリンティングはすでに企業に影響を与えている」と回答したのは、14%だけでした。

アディティブ・マニュファクチャリングの将来性と、技術の受入れや普及とのギャップは大きいのです。

二の足を踏んでいるビジネスリーダー、顧客、イノベータ、学生たちに私がお伝えしたいのは、「創立126年の当社ができるのであれば、皆さんでもできる」ということです。

GEの各事業部のチームやGEのグローバル・リサーチ・センター(研究開発センター)では、すでにアディティブ・マニュファクチャリングの効果を実感しています。2つの例を挙げましょう。1つめは、航空業界です。GEの新たな航空機用ターボシャフトエンジン「GE CATALYST」では、従来工法では855個の部品から構成されるところ、金属3Dプリンティングを使ってたったの12個に集約統合しました。このエンジンの構成部品の3分の1以上を3Dプリントで量産しています。アディティブ活用により達成できたこのエンジンの新設計によって、同クラスの他のエンジンと比較して燃料燃焼は20%削減、出力も10%向上しました。電力事業では、HAタービン向けの燃料ノズルの試作から実機テストに活用しています。私たちは、金属3Dプリンティングを活用して新たな形状構造を形成することで最適な燃料と空気の混合比を実現でき、大幅に効率の向上につなげることができ、発電装置9HAの燃焼システム用のアディティブ・マニュファクチャリングを用いた構成部品を製造することに成功しました。具体的には、当社の9HA.02タービンは現在、業界初となる発電効率である64%を実現しており、すでに達成していた世界記録の63%からさらに躍進できました。わずかな向上のように思われるかもしれませんが、63%から64%の効率向上により、ガス燃焼式発電所は、そのライフサイクルにわたって数百万ドルもの燃料コストを削減することが可能になるのです。3Dプリント製の部品を使用した最初のHAガスタービンは、マレーシアの発電所に導入されることが決まっています。

自社のアディティブ・マニュファクチャリング装置を設置し、自社の事業部内で実行するだけでは不十分であることは分かっています。社外の他のユーザー顧客がこのような変革を実施できるように導いていくことも、私たちの義務であると考えています。

このような理由から、私たちはGE社外の顧客向けに金属3Dプリンターや造形材料とサービスを販売し、同技術のコンサルティング・サービスを提供するために、「GEアディティブ」という事業部を設立しました。また、ミュンヘンとピッツバーグにカスタマー・エクスペリエンス・センターを開設し、顧客がアディティブ・マニュファクチャリングを活用できるよう支援します。ここで、私たちが10年以上にわたって蓄積してきた知識とアディティブ・マニュファクチャリング分野の専門技術を伝え、顧客がアディティブ・マニュファクチャリングを導入する最善の方法や時期を決める際の支援を行います。上記センターでは、顧客は技術に関するトレーニングの受講、造形装置やその他アディティブ関連の商品構成についての相談・再設計、製品に適した材料の選定方法の習得など、アディティブ・マニュファクチャリング事業全体を構築する上での支援を受けることができます。

すでに成果を実現している顧客もいます。

例えば、医療技術企業のストライカー社は、GEのアディティブ・マニュファクチャリング装置を使用してチタン製医療インプラントを量産しています。その独自のインプラントの表面は骨の成長を促す構造を有しています。このようなインプラントは金属3Dプリンティングでしか製造できません。 ストライカー社はすでに、このようなチタン製インプラントを数多く量産して医師に提供し、これまで関節などの病気によって日常生活に支障があった人々の生活を改善してきました。GEのアディティブ・マニュファクチャリング装置を使用するもう1つの企業であるオプティシス社は、航空宇宙用途向けの高度な3Dプリント製の金属小型アンテナ製品を製造しています。オプティシス社の次世代無線周波数アンテナはアディティブ・マニュファクチャリング技術を用いて量産されており、1台のアンテナに必要だった100個の部品がたった1個に集約統合され、しかも製品重量は95%も減少できました。オプティシス社はまた、製品のリードタイムを11か月からたったの2か月に短縮し、生産時間の大幅な削減も実現しました。

GEアディティブの顧客、ストライカー社グローバル・サプライ部門副社長のジョン・ハラー氏はこう述べています。「設計者が何の制約も受けずに、今までと違うマインドセットで新しい考え方ができるようになれば、アディティブ・マニュファクチャリングは本格的に広がると確信している」

メール配信メール配信