
サハラ砂漠のど真ん中で大容量発電を可能にし、再生可能エネルギーの将来も支えるGEの航空機エンジン転用型ガスタービン
シッラ・コヴェスディ
マフムード・ファンサ
人口約10万人のアルジェリアの都市タマンラセットは、地図の上では広大なサハラ砂漠の真ん中にポツンとあるように見えます。首都アルジェからは約2千キロ離れているタマンラセットは、実は世界と繋がっています。なぜなら、アルジェリア北部からニジェール、そしてその先のナイジェリアまで世界最大の砂漠を縦貫するサハラ砂漠縦貫道路を中心とする輸送網の要衝だからです。食料は主に陸路で輸送され、ものによっては航空貨物として輸送されます。では、もう一つの必須リソースである電力についてはどのような状況なのでしょうか。
ある場所で電力を確保する際、何千キロも送電線を建設し、維持することが採算性の良いアプローチではない場合があります。タマンラセットもそれに当てはまり、住民は常に地元で発電される電力に頼ってきました。そして現在では、その増強ぶりは見違えるものがあります。というのも、何十基ものGE製TM2500航空機エンジン転用型ガスタービンが当地の電力供給を担っているからです。ジェットエンジンのテクノロジーから生まれた「TM」(トレーラーマウントの略)ガスタービンは、その名の通りトレーラートラックに積載して迅速に運搬できる発電設備となります。エネルギー安全保障や非常用電源を重視する国々にとって、世界中で300基以上導入されているTM2500をとりわけアルジェリアが数多く導入している状況は、そのメリットをより明らかにすることにつながっています。また、アルジェリアが再生可能エネルギーである太陽光発電の割合をより高くすることでエネルギー転換を進展させる過程においても、TM2500は重要な役割を果たしています。
10年以上前、アルジェリアは深刻な電力不足に直面していました。特に最高気温が45℃に達することもある夏期には1,000MW以上もの電力不足に悩まされていたのです。アルジェリア政府はこの問題に対処するため、断固たる措置を講じることを決定しました。GEガスパワーはこの取り組みを支援し、アルジェリア北部に大容量ガスタービンを、それ以外の地域の電力を供給するためにはTM2500を設置しました。大規模発電所の建設には何年もかかる場合がありますが、TM2500は現地へ運搬し、設置するだけで良いので比較的短期間で稼働を開始することができます。2013年当時、アルジェリアに納入された最初のTM2500タービンを設置するのにかかった期間はわずか数カ月でした。
その後も増強が進み、現在では同地域の18カ所に38基のTM2500タービンが設置され、合計発電容量は最大1.17GWに達しています。過酷な砂嵐が吹き荒れるサハラ砂漠のような環境下でも、設置されたTM2500は安定した稼働が可能です。また、TM2500は機動性にも富むため、ニーズの変化に対応し新たな需要地に移動することも可能です。最近でも、アルジェリア北部に設置されていた同タービンを、同国南西部、モーリタニアとの国境の町ティンドゥフに移設した事例があります。
機動力だけでなく、TM2500にはディーゼル発電機と比べても優位な点があります。それは1基あたり最大36MWというより大容量の電力を供給できるだけでなく、部分負荷運転(※)でも効率性を保つことができることです。この特長を活用することで、例えば2基編成のTM2500を運転する場合、それぞれを部分負荷運転しても効率を損なうことなく運転させることができます。これにより、電力需要の増加に即応したり、別のタービンのダウンタイムを補うための出力急増に対応する余裕を持たせやすくなるのです。
※部分負荷運転:最大出力ではない状態で運転すること。
また、エネルギー安全保障だけでなく、アルジェリアのエネルギー転換やネットゼロ排出目標への取り組みにおいてもTM2500は重要な役割を果たします。アルジェリアは、全国に太陽光発電所を設置するいくつかのプロジェクトを発表しており、2035年までに合計15GWの発電容量の太陽光発電所の建設に取り組んでいます。エネルギー転換が進む間も、TM2500は送配電網の需要と供給のバランスをとるのに役立ちます。天候や需要の状況に応じて、送配電網に接続する電力量を随時オンまたはオフにし、調整することも可能です。その上、この航空機エンジン転用型タービンは水素などサステナブルな燃料で運転可能な点も評価されています。TM2500での発電において、水素や他の燃料との混焼も可能なので、低炭素水素を製造、使用、輸出するというアルジェリアの掲げる目標にも沿うことができます。
ここではTM2500を取り上げていますが、TM2500は数あるGE製航空機エンジン転用型ガスタービンシリーズのひとつであり、発電用大型ガスタービン製品群の一翼を担っているに過ぎません。例えば、同じく航空機エンジン転用型ガスタービンのLM6000タービンは、40MW以上の発電量を必要とするお客様にうってつけです。LM6000は4千万時間以上の累計運転時間と1,300基以上の出荷実績を達成し、さらに99%以上の起動・動作信頼性と98%以上の有用性(アベイラビリティ)をも実現しています。さらに、現場で素早く組み立てられるようモジュール化されたLM2500XPRESSを含むLM2500タービンファミリーは、競合する他社の製品すべてを合計したものを上回る1億2千万時間以上の累計運転時間を積み上げているほか、フレキシビリティと信頼性をも備えています。
そして、TM2500はベースロード発電設備が完成するまでの橋渡しとしての役割のほか、自然災害発生時やプラントのシャットダウン時、送配電網の系統が不安定な場合、あるいは孤立した地区においてバックアップ電源の確保が必要な際にも活躍します。GEガスパワーの中東・アフリカ地域航空機エンジン転用型ガスタービン担当ゼネラルマネージャー、ロトフィ・スカンドラニは次のように説明しています。「アルジェリアにとって、TM2500は同国の戦略的目標の達成を支えています。そのなかには、国内各地域のエネルギー安全保障や太陽光発電の普及拡大などが含まれます。そして、GE製TM2500ガスタービンはタマンラセットのような遠隔地や電力へのアクセスが困難な地域に、迅速かつ機動力に富む電力を供給することに加え、太陽光発電プロジェクトがつぎつぎと稼働する中、送配電網のさらなる安定運用にも貢献しています。」
トップ画像:アルジェリア南部タマンラセットのホガール山地。画像提供:Shutterstock