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SAFを作って空を飛ぼう: SAFの活用で米国農務省とGEアビエーションが協力、CO2削減を目指す

ジェイ・ストウ

ことし12月初旬、トム・ヴィルサック(Tom Vilsack)米国農務長官がオハイオ州イヴンデールにあるGEアビエーション本社の視察に訪れました。その日、長官にエンジン開発組立施設の構内を案内した後、チーフエンジニアのクリス・ローレンス(Chris Lorence)は記者会見に集まった報道陣にこんな質問を投げかけました。「農務省が畑違いの航空分野になぜ関心を寄せているのかお分かりになりますか?」

いまからその理由をお話ししましょう。

ヴィルサック長官がGEアビエーション本社を訪れたわけは長官自身の言葉を聞けばわかります。それは「航空業界とのパートナーシップ、つまり、温室効果ガス排出の削減、そして航空業界のCO2排出ネットゼロというビジョンを実現するために、気候変動問題に関する規制や要件を遵守するうえで抱えている課題を正しく理解するためのパートナーシップを推進する」ためでした。その中でも、持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel、 以下SAF)は、このビジョン達成の鍵となるものです。

SAFは60種類ほどある原料のいずれからでも製造が可能な合成燃料です。原料には植物油、藻類、グリース、脂肪分、廃棄物の処理過程で発生する物質、アルコール類、糖類、回収したCO2、その他の代替原料やその製造過程で産出する副産物なども含まれます。ジェットエンジンで燃焼させると、従来の石油系ジェット燃料と同等のパワーを発揮しながらCO2総排出量を大幅に削減することができます。

トップ画像:オハイオ州イヴンデールのGEアビエーション本社で行われた記者会見でSAFについて話すトム・ヴィルサック農務長官。上画像:エンジン開発組立工場の担当従業員から説明を受けるヴィルサック農務長官。画像提供:GEアビエーション

では、実際にSAFをどのように運用するのがよいのでしょうか?「ここで注目すべきなのが農業です」とローレンスは言います。農作物として栽培された植物は、野生の樹木や草花と同じように、成長する過程で大気中からCO2を吸収します。しかし、成長が終わり腐敗が始まると、農作物はそれまでとは反対に蓄えたCO2を放出し始めるのです。ローレンスは次のように説明します。「ですから、このプロセスを人為的に中断し、原料として利用すれば、腐って廃棄されてしまう作物を航空燃料へと生まれ変わらせることができるのです。効率と規模を最適化すれば、効率的に十分な量を製造することが可能で、しかも、航空機が排出するCO2の量より原料の作物があらかじめ吸収したCO2の量のほうが多くなるのです。」ローレンスはこれを「好循環」と呼んでいます。

米国エネルギー省は、米国内だけで年間500億ガロンから600億ガロン(約1,893億リットルから約2,271億リットル)のSAFを製造できる資源があると推定しています。なお、スタティスタ社(Statista)によると、民間の航空会社全体で1年間に消費する燃料は2019年のピーク時には950億ガロン(約3,596億リットル)でしたが、2021年は年末までに約570億ガロン(約2,158億リットル)に減少する見通しです。また、Air Transport Action Group(ATAG:航空業界のサステナビリティを推進するグローバル連合)と国際航空運送協会(IATA)によると、燃料のライフサイクル全体を考慮した場合、石油からSAFに切り替えることで航空業界は燃料のCO2排出量を最大80%削減することが可能としています。

以上が、米国の農務省、エネルギー省および運輸省がことし2021年9月に共同発表した「SAFグランドチャレンジ(The Sustainable Aviation Fuel Grand Challenge)」の背景にある考え方です。これをふまえ、関係者と協働して「ライフサイクル全体で温室効果ガス排出量を従来型燃料との比較で最低50%削減することを目指して、コスト削減、サステナビリティの向上、そしてSAFの生産と使用の拡大を目指します」とヴィルサック長官は述べています。また、このチャレンジによって米国は2030年までに30億ガロン(約113億6千万リットル)、2050年までに350億ガロン(約1,325億リットル)のSAFを製造することを目標としています。SAFの開発に弾みをつけ、関連業界がこの目標を達成できるように、エネルギー省は40億ドル(約4,572億円)の政府補助金や融資を行うと発表するとともに、バイデン政権は現在議会で審議中の「ビルド・バック・ベター(Build Back Better、よりよき再建)」法案に税額控除も盛り込みました。

ヴィルサック長官は次のように語ります。「今のところSAFは従来のジェット燃料よりも製造コストが割高です。私たちはこのコストの差を縮めなければなりません。」そのためには、農務省は最適な原料となる農作物を探し出し、『農場から燃料へ(farm to fuel)』となるような、生産者がアクセスしやすい上に大規模かつ効率的なサプライチェーンを構築する必要があります。すでに、農務省はSAFの原料になりそうなさまざまな原料を実験する4つの研究センターを稼働させています。さらに長官は「原料をただ生産するだけでは不十分で、その生産方法もサステナブルでなければなりません」とも話しています。

「今のところSAFは従来のジェット燃料よりも製造コストが割高です。このコストの差を縮めなければなりません」とヴィルサック長官は語ります。 画像提供:GEアビエーション

10年以上前からSAFの研究に意欲的に取り組んできたGEにとって、フライトからCO2排出量を削減することは最重要課題でした。実際、GEアビエーションがGEやCFMインターナショナル(※)のエンジンを搭載した機材で行ったSAFのテストフライトには業界初となったものがいくつもあります。初の旅客機によるSAFデモンストレーションフライト(2008年)、大型商用貨物機による初のSAFを使用した大西洋横断飛行(2011年)、初の100%SAF軍用ジェット機飛行(2016年)などがその例です。そして、ことし初めにはPtL(Power-to-Liquid)と呼ばれる製造技術を初めて採用し、再生可能エネルギーを利用して水を電気分解して得られた水素と回収したCO2とを合成した液体炭化水素燃料の利用も実現しました。

(※CFMインターナショナルは、GEとサフラン・エアクラフト・エンジンズ社が50:50で共同出資している合弁会社です)

さらに、新たな実績がもう一つ加わりました。12月初旬、ユナイテッド航空がシカゴ・オヘア空港からワシントンDCのレーガン・ナショナル空港まで運航したボーイング737-8は、乗客を乗せた旅客機として、搭載した2基のLEAP-1Bエンジンのうち1基で100%ドロップイン(drop-in:簡単に交換できる)SAFを使用した初のフライトを成功させました。ドロップインSAFは従来のJet AやJet A-1燃料とも互換性がある燃料で、エンジンや機体に変更を加える必要がありません。「パイロットに聞いても、違いがわからないそうです」とローレンスは言います。

また、GEは多くのお客様ともSAFの利用拡大について研究を進めています。先日エティハド航空ブリティッシュ・エアウェイズ航空が実施したフライトでもSAFを含む混合燃料が使われました。そして、GEアビエーションはエミレーツ航空と協働し、2022年に100%SAFでのテストフライトを計画中です。

「これまでに私たちが行ってきた投資や一企業としてなし得てきたことをみれば、私たちにとって技術的な課題に不可能はありません。その一方で、SAFの最適な配合を割り出し、製造を拡大するという点では“マーケットの大きさ、入手のしやすさ、そして価格”が課題として挙げられます」とローレンスは言います。

ヴィルサック長官は次のように語ります。「農務省は、農家が耕作地をさらに有効活用し、利益を得る方策を見出さなければなりません。そして、その方法のひとつとして、農作物、とくに処分されてしまう農業廃棄物を高い付加価値をもつ商品、つまりSAFに生まれ変わらせることが有効であると考えられます。なにより、SAFは航空機により環境にやさしいフライトを可能にさせることができます。これは素晴らしいチャンスとなるでしょう。農務省は航空業界やGEとパートナーシップを結んで協働し、この取り組みを発展させようとしているのです。」

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