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グリーン水素時代の本格的幕開け:ニューヨーク州電力公社がロングアイランドで実証試験を開始

ウィル・パルマー

ブレット・ネルソン

水素には多くの可能性があります。宇宙で最も豊富に存在する元素であり、地球上のほとんどの場所に存在する水素は、天然ガスや石油よりもはるかに大きなエネルギーが詰まっており、燃やしても水と熱しか排出されません。ですが難点もあり、他の元素とすぐに結びついてしまう性質があります。これは、水素元素が他の元素と結合することで安定した分子を形成する性質によるものですが、燃料として利用するためには、この分子にエネルギーを加えて分解し、水素を抽出する必要があります。そして、その分解に再生可能エネルギーを用いて作られた水素は「グリーン水素」と呼ばれます。「グリーン水素」は今後のゼロカーボン社会への道を明るくしてくれることでしょう。

グリーン水素を発電に利用する初めての試みが始まっています。ニューヨーク州電力公社(The New York Power Authority、以下NYPA)がロングアイランドに設置しているブレントウッド(Brentwood)発電所で進められている実証実験プロジェクトがそれにあたります。6週間から8週間行われるこのプロジェクトでは、同発電所の「航空機エンジン転用型」ガスタービンの燃料を、これまでの天然ガスからグリーン水素と天然ガスの混合ガスに一時的に入れ替えて混焼します。このプロジェクトではGEパワーが重要な役割を果たしています。航空機エンジンから転用されたGE製LM6000タービンが今回のプロジェクトのテストベッドとして同発電所に設置されています。

現在、水素を燃料として利用するタービンは数多くありますが、今回のプロジェクトは既存の発電所を改修(レトロフィット)し、グリーン水素を混焼し発電した際のCO2排出量の削減を検証する初の試みとなります。混合燃料に含まれるグリーン水素の濃度を変えながらテストを繰り返し、燃焼システムがどのように反応するか記録して、濃度の違いが温室効果ガスの排出にどのような影響を及ぼすかを検証します。検証結果は広く電力業界内で共有され、他の州や国でもグリーン水素の採用拡大を推進するきっかけになることが期待されています。

10月25日に行われたブレントウッド発電所のテープカットセレモニーで、GEパワーのCEOを務めるスコット・ストレイジック(Scott Strazik)は次のように述べました。「私たちがNYPAに最先端の機器を提供し、世界初のグリーン水素実証プロジェクトを実現するお手伝いができること、さらにはガス火力発電所がニューヨーク州や世界各国のエネルギー転換をサポートできる重要な役割があることをお見せする機会にもなり、たいへん嬉しく思います。」

NYPAとGEはブレントウッド発電所での実証プロジェクトにあたり、エンジニアリング企業のサージェント&ランディ社(Sargent & Lundy)、グリーン水素のサプライヤー企業であるエアガス社(Airgas)、配管などの資材や設置サービスを提供するフレッシュ・メドウ・パワー社(Fresh Meadow Power)、そして米国電力研究所(Electric Power Research Institute、EPRI)と共同で取り組みます。

今回のプロジェクトを当初から推進したギル・C・キニオネス(Gil C. Quiniones)NYPA前社長兼前CEOは次のように語ります。「2050年までに温室効果ガスの排出量を85%削減するためには、私たちは手持ちのあらゆるツールを使い、さらにまだ誰も知らない技術も活用しなければなりません。このプロジェクトは、いま最も喫緊の課題である気候変動問題に対する解決策を、エネルギー関連業界の各リーダー企業が協働してソリューションを見出す好例となります。この実証プロジェクトの検証結果を業界全体で十分に共有し、カーボンフリーな経済の実現に向け業界一丸となって取り組んでいきます。」

ジャスティン・E・ドリスコル(Justin E. Driscoll)NYPA社長代行兼CEOも「今回のグリーン水素実証プロジェクトは、脱炭素化への道を歩む上で非常に重要なものです」と述べました。

ニューヨーク州はこのようなプロジェクトを実施する全米初の州となります。気候変動やクリーンエネルギーを巡る同州の取り組みは全米でも最も意欲的なものの一つとなっています。トップ画像および上画像提供: ゲッティ・イメージズ

ほとんどの水素は天然ガス(CH4:メタン)に圧力と熱を加えて水蒸気と反応させ、水素、CO、CO2を生成する「水蒸気メタン改質」で抽出する製法を用いますが、グリーン水素は水を電気分解して生成されます。この電気分解とは、再生可能エネルギーから得られた電流によって水(H2O)を分解し、酸素(O2)と水素(H2)を生成するプロセスです。CO2を排出しない再生可能エネルギーと、炭素を含有しない水を利用するため、CO2が発生しないのです。

ニューヨーク州はこのようなプロジェクトを実施する全米初の州となります。気候変動やクリーンエネルギーを巡る同州の取り組みは全米でも最も意欲的なものの一つとなっています。今回の取り組みも、ニューヨーク州が2019年に制定した「気候リーダーシップ・コミュニティ保護法(Climate Leadership and Community Protection Act、CLCPA)」で表明した目標に沿うものです。同保護法が掲げる目標は、2030年までに再生可能エネルギーで発電量の70%を賄い、同年までに温室効果ガスの排出量を40%削減し、2040年までにゼロカーボン電力100%を実現し、2050年までに同州全体の温室効果ガスの排出量を1990年比で85%削減するというものです。

さらにことしの夏には、同州北部でも、クリケット・ヴァレー・エナジー・センター社(Cricket Valley Energy Center)とGEが、グリーン水素の実証プロジェクトをポキプシー市(Poughkeepsie)の東に位置する施設で実施する契約を締結しました。クリケット・ヴァレーでは、天然ガスを燃料とするGE製7F.05ガスタービンを3基設置し100万世帯分の消費電力を賄うことができます。そして、2022年後半からは3基のうちの1基のタービンにおいて天然ガスにグリーン水素を5%(体積比)混合した燃料で稼働する実証実験を行います。

GEがこのような水素利用を推進するプロジェクトに携わるのは今回が初めてではありません。100基以上のGE製ガスタービンによってすでに800万時間以上の水素または水素に類似した燃料での稼働実績を積み上げています。その多くは稼働する際に水素を副産物(排ガス)として生成し、その水素を燃料としてタービンを回すことでプラントの稼働に再利用しています。GEにはすでにそのような知見を数十年蓄積しているのです。

GEガスパワーのチーフマーケティングオフィサーを務めるブライアン・グートネック(Brian Gutknecht)は次のように話します。「当初GEが水素を燃焼して発電する技術の知見を積み重ねようとした際、その目的は排ガスとして得られた水素の再利用には十分価値があることを明らかにすることでした。こうして積み重ねた知見を活かし、今日では世界の脱炭素化に貢献できるようになったのです。」

GEが協働するプロジェクトは他にもあります。オハイオ州ハンニバルにあるロングリッジ・エナジー・ターミナル社(Long Ridge Energy Terminal)の発電所で、水素とガスの混合燃料を使った発電を今冬に開始する予定です。発電容量485MWのこの発電所は、当初から発電用燃料として水素を燃焼させることを前提として建設された米国初の施設で、GE製の強力な7HA.02ガスタービンを使用し、米国の40万世帯に十分な電力を供給する予定です。ロングリッジ社は、この水素と天然ガスを混焼する低炭素電力の供給を開始し、さらに今後10年で発電用燃料として100%水素を利用する発電所に転換していくことを目指しています。

米国以外の各国でもグリーン水素の導入に向けた意欲的な取り組みが始まっています。オーストラリアでは、電力会社のエナジー・オーストラリア社(EnergyAustralia)が同国初のガスと水素の混焼発電所を建設中です。GE製の9F.05ガスタービンを動力源とし約316MWの電力を迅速に発電できるため、間もなく稼働停止予定となっている近隣の石炭火力発電所を代替する役割も果たします。さらに、ことし9月には同国ノーザンテリトリー(The Northern Territory)の電力会社である電力会社テリトリー・ジェネレーション社(Territory Generation)がダーウィン市郊外に位置するチャネルアイランド発電所(Channel Island Power Station)にTM2500航空機エンジン転用型ガスタービンを導入すると発表しました。TM2500はトレーラートラックにも積載可能なタービンで、その心臓部を担う技術はボーイング747に搭載されるCF6ジェットエンジンに由来します。ノーザンテリトリーは豊富な日照量と風力環境のポテンシャルが評価されており、グリーン水素の開発における実験場としても最適です。またノーザンテリトリーはチャンネルアイランド発電所のタービンでグリーン水素の燃焼実績を積み上げるとともに、よりクリーンなエネルギーを求めるアジア諸国に向けてグリーン水素の一大輸出ハブになることも目指しています。

NYPAのブレントウッド発電所でのテープカットセレモニーでは、アルシャド・マンスール(Arshad Mansoor)EPRI社長兼CEOが次のように話しました。「CO2のネットゼロ排出を実現するためには各エネルギー部門が協働して利用可能なすべてのツールとリソースを活用する必要があります。ガスタービンの水素混焼を実証する今回のプロジェクトは、脱炭素化という私たちの目標の達成に大きく近づく素晴らしい取り組みの好例になるでしょう。」

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