
GEヘルスケアが提供を始めた医療データ分析サービス:Applied Intelligence
団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、日本の医療業界は大きな構造変化が求められています。各地域では「地域医療構想」の策定が進んでいます。高度急性期、急性期、回復期、慢性期という4つをベースに提供機能を分化し、地域の医療機関が互いに連携し合ってサービス提供するかたちへと、今後に向けて医療提供体制が再編されます。
こうした中で、医療機関には「担うべき機能」を意識した経営が求められることに。他の医療機関との連携によって、地域としての医療提供を実現すること。増え行く医療ニーズを背景に、医療の質を維持しながらもコストを抑え、医療従事者の負担も軽減すること。業界にとって大きなチャレンジです。
こうした背景のもと急速に高まるのが、データ活用へのニーズ。GEヘルスケアは、GE全社で培ってきたデータ活用のノウハウと洗練されたソフトウェア技術を、医療機関に向けても本格的な提供を始めました。そのサービス名は「Applied Intelligence- 医療データ分析サービス」。産業向けIoTというとセンサーによるデータ収集が思い浮かぶかもしれませんが、それだけではありません。医療機関にはすでに大量なデータ資産も存在しています。院内のモバイル端末や電子カルテでデジタル化された院内オペレーションの状況、ネットワークにつながる医療機器とその情報、臨床データから従業員の勤務データなど。こうしたデータを繋ぎ合わせて多角的に解析すると、様々なことが可視化され、現場の業務改善や経営上の課題解決に役立つ示唆を得ることができます。
とはいえデータ活用には「いつ、何から始めればよいものか」という迷いがつきもの。GEヘルスケアは、まず第1ステップとして「導入前アセスメント」を提供、顧客となる医療機関の経営上の課題を整理し改善目標の設定を行います。続く第2ステップは「プラットフォーム構築とKPI可視化」。さまざまなデータソースと分析プラットフォーム(GEが提供するIoTプラットフォーム、Predix)の連携、ダッシュボード構築を行います。そして、第3ステップは「改善サポート」。分析結果に基づき、顧客の最終的な成果に結びつくための経営支援、業務支援のコンサルティングを行います。
患者さんともっと関わっていくために|Applied Intelligence 医療データ分析サービス
パイロット導入院、ベルランド総合病院の取材映像はこちら
事実を整理し、可視化することの意義
私たちが胸を張ってデータ活用をお奨めできるのは、自らが実体験として、データの恩恵を受けているからです。医療と製造業は違うようでいて、医療現場と工場には「労働集約型」という共通点が。つまるところ、人の仕事のしかたをどれだけ効率化できるか、が鍵になります。
CTスキャナやMRIなどを製造するGEヘルスケア・ジャパンの日野工場は、データ活用によってその生産性を著しく飛躍させてきました。最新の解析ソフトウェアはデータ処理に時間を費やすことなくリアルタイムな状況を可視化してくれ、マネージャーと現場スタッフとが同一認識のもとで議論し、皆で納得のいく意思決定を図っています。改善効果もクリアに可視化されるため、次へのアクションへのモチベーションも高まります。ある生産ラインでは効率化によるリードタイム短縮で夜勤が不要に。経営効率を高めるだけでなく、従業員満足の向上にも繋がっています。
「効率化を図って、もっと効果のある仕事を」―ベルランド総合病院
Applied Intelligenceのパイロットプログラムに参加していただいた生長会ベルランド総合病院は、大阪府堺市に位置し、毎日100名以上もの紹介患者を受け入れている高度急性期に特化した病院です。
Applied Intelligenceを試験導入した部門のひとつ、放射線科も、患者の高齢化に伴って仕事の量が増え続ける一方だと言います。技師長を務める鈴木賢昭氏は「ご高齢の患者さんへの手術は、メスを使わず身体への負担が少ない低浸襲な手法が望ましいんです。診断のための撮影だけでなく、手術前の体内の撮影も、我々の重要な役割なんですね。ドクターが手術時に困らないように、神経や血管の状態までしっかり撮影しなければなりません」
社会医療法人生長会 ベルランド総合病院
放射線室 技師長 鈴木賢昭氏
私たちの体内をCT撮影してくれる診療放射線技師の方々は、診療時間が終わると今度は複数のモニターに向かい、大量の画像処理をこなします。ドクターに渡す画像作りに、集中力を途切れさせるわけにはいきません。「検査精度もクオリティも求められますし、スピードも求められます。また、急性期病院には仕方のないことですが、状況は刻々と変わります。全力で対応するんですけれどもやはり、待ち時間が増えるなど皺寄せは患者さんに行ってしまいます。これを、どう解決できるかーー」。
放射線科のオペレーションの様々な情報を集約し、複合的にクロス分析をして知りたいことを可視化してくれるApplied Intelligenceを使い始めて、まず感じたメリットは何時間もかかっていたデータ収集や解析が瞬時に済むことだと言います。しかしデータそのものが課題を解決してくれるわけではありません。それをどう使い、どんなアクションにつなげていくかーー「実際に事実を把握してみると、あんなこともできるな、こんなこともできるなと対策のアイデアが浮かんでくるわけです。非常に大きな可能性を感じています」
診療時間が終わると、診療放射線技師たちは
また集中力を問われる大量の撮影画像処理にあたる
放射線科スタッフのマネージャーでもある鈴木技師長は、データ活用と効率化についてこう強調します。「効率化してもっと働きましょう、ということでありません。もっと効果のある仕事をしましょう、ということなんです」。医療従事者だからこそ健全でなければならない、と同氏。高度急性期病院ではどんなときであれ緊急事態に冷静に対応できる心の余裕が必要であり、激務に陥りがちな医療現場の仕事を効率化することは、患者さんとスタッフ双方のために非常に意義があるといいます。「みんな、患者さんの助けになりたいと思って、この仕事に就いているんですね。ですから、効率化によって生まれる時間を充てて、もっと患者さんと関わっていきたいんです」
ここでご紹介した「Applied Intelligence」は、GEヘルスケアがかねてから提唱してきた未来型の病院の姿「Brilliant Hospital」実現のひとつの手段となるもの。GE製品だけでなく、他社製の医療機器やシステムから収集するデータも活用できるため、病院全体の経営効率化に役立ちます。しかし、医療の現場を支えるのは「人」であり、病を抱える患者さんやその家族もまた、「人の心」の触れ合いを求めています。GEは、そんな側面にも、データ活用の重要な意義があると考えています。