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新しい空の旅:CO2排出量削減の新たな手法に挑戦するエンジニアたち

サム・ウォーレー

ウィル・パルマー

エナジー・トランジションは、気候変動問題への対応として脱炭素化を進めるという課題を解決すべくGEが注力している分野のひとつです。そして、もうひとつ取り組んでいるのが航空分野です。GEは2020年に航空分野の研究開発に18億ドルを投じました。その中には燃料消費量や排出ガスを削減し、さらにはハイブリッド電気推進システムの開発を可能にする先進的な新素材やテクノロジーも含まれるとGEアビエーションの社長兼CEOを務めるジョン・スラッタリー(John Slattery)は言います。例えば、今年6月にGEアビエーションとサフラン・エアクラフト・エンジンズ社(Safran Aircraft Engines)が50-50で共同出資しているCFMインターナショナル社(CFM International)はCFM RISEプログラム(Revolutionary Innovation for Sustainable Enginesの略)を立ち上げました。このプログラムはオープンローター設計やハイブリッド電気推進システムなどの意欲的な技術を開発し、2030年代半ばまでに新型エンジンの燃料効率を20%以上向上させることも目的としています。そこで、ここからはGEのエンジニアたちが取り組んでいる最新技術の一部をご紹介しましょう。

挑戦し、立ち向かう

CO2排出量を削減しつつ、最先端の航空機エンジンを開発するにはどうすればよいのでしょうか。GEアビエーションとサフラン・エアクラフト・エンジンズの両社は、合弁事業のCFMインターナショナル社を通じて50年近くにわたりその2つの課題に取り組んできました。今年6月、両社はこの合弁事業を2050年まで延長することに合意し、併せて「持続可能なエンジンのための革新的イノベーション(Revolutionary Innovation for Sustainable Engines: RISE)プログラム」を立ち上げ、現在製造されている最も高効率なジェットエンジンと比較しても、燃料消費量を20%以上改善し、CO2排出量を20%以上削減するエンジンを開発することを発表しました。

今後、もし世界の単通路機の10%だけでもCFM RISEプログラムで構想されているようなオープンローターエンジン機に置き換えられれば、毎年約800万トンのCO2排出量が削減されることになります。これは160万台の自動車が路上から姿を消すことで得られるCO2削減量に相当します。

CFM RISEプログラムのプロダクト・マネージャーを務めるトラヴィス・ハーパー(Travis Harper)は次のように述べています。「この技術開発プログラムは、よりサステナブルな未来に向けた意欲的な目標を達成するために、GEとサフラン社が共有するコミットメントを示すものです。私はお客様である航空会社やリース会社と長いお付き合いを重ねてきました。彼らはいずれも、機材の更新計画の最適化を図るとともに、地球にやさしくあり続けるための戦略も練っています。私は弊社が開発する今後の製品が、短期的かつ2050年以降という長期的にもお客様のニーズにどのように役立つかを考えています。」

トップ画像:CFM社のオープンローター方式エンジンの設計コンセプト画像。画像提供:CFMインターナショナル。

新たな大きな飛躍

画像提供:インディゴ社(IndiGo)

RISEプログラムは、CFM社が推進するLEAPエンジンの成功に裏打ちされたものです。世界で最も急成長しているLCCのひとつであるインドのインディゴ航空(IndiGo)は今年5月、CFMインターナショナルのLEAP-1Aエンジンを同社が発注する310機の旅客機に搭載することを発表しました。この契約はCFM社の史上最大規模の受注金額となりますが、新規搭載エンジン620発と付随する予備エンジンの調達および複数年のサービス契約を含んでいます。インディゴ社のロノジョイ・デュッタCEO(Ronojoy Dutta)は「今回の契約は、国内的にも国際的にもネットワークを早急に拡充するという当社の長年のコミットメントを反映する極めて重要なマイルストーンとなります。このように当社が発展することは、インドの経済成長と人々のモビリティーを飛躍的に高める一助になるでしょう」と述べています。

CFM社がLEAPエンジンの開発に着手したのは20年近く前のことになります。最先端の素材とテクノロジーを投入し続けたことも奏功し、エンジニアたちはLEAPエンジンの前身であったCFM56エンジンよりも15%低減した燃料消費、CO2排出量の削減、そして静粛性の向上も実現しました。LEAPエンジンは5年間の商業運航で、累計1,000万時間以上のエンジン飛行時間を記録しています。インディゴ社はLEAP-1Aエンジンを自社が所有するエアバスA320neo、A321neo、そしてA321XLRの新機材群に搭載する予定です。

成し遂げた証、それが認証取得

「ボーイング777X」とそのために開発されたGE9Xエンジンの組み合わせは現行モデルと比べて燃料消費率が20%以上も改善されています。昨年、この極めて高効率なエンジンがアメリカ連邦航空局(The Federal Aviation Administration、FAA)の認証を取得したことで実用化に向け一歩前進しました。画像提供:GEアビエーション。

今から数十年前、GEアビエーションのエンジニアたちはジェットエンジンに何が求められるのかを顧客に尋ねるため調査を行いました。約300項目もの回答が寄せられ中で最上位にきたのは「燃料消費率」というシンプルなものでした。それもそのはずで、何といっても燃料費は航空会社の全運営費の5分の1近くを占めるからです。そこでエンジニアたちは、従来のエンジンに比べて最大10%効率が良くなるように設計したGE9Xエンジンを生み出しました。そしてGE9Xエンジンは高効率性を実現しただけではなく、現存するジェットエンジンの中で最もパワフルなエンジンともなっています。

昨年、GE9Xエンジンはアメリカ連邦航空局(FAA)の認証を取得しました。同認証を取得したことは、GEがGE9Xエンジンの商用生産を開始できることを意味します。少なくともエンジン開発の観点から言うと、この大きなマイルストーンは長く厳しい試験期間を乗り越えた結果です。規制当局が定める厳格な規定に従い、エンジニアたちが過酷なテストを行ったことで、このエンジンは堅牢かつ最先端の技術を多く盛り込んだものとなりました。例えばGE9Xは、軽量で耐熱性に優れたセラミックマトリックス複合材料(Ceramic Matrix Composites、CMC)や3Dプリンティングされた部材を採用することで燃焼効率を向上させています。また、航空会社が時間と経費を抑えられるようエンジンをスマート化し、ビッグデータの活用とその解析機能も備えています。この開発に従事したGEアビエーションのGE9Xジェネラル・マネージャーを務めるカール・シェルドン(Karl Sheldon)は「私たちが開発に成功した航空機とエンジンのコンビネーションは、航空市場で無敵だと確信しています」と総括しています。

スーパーコンピューターが支える研究開発

エンジン上流側に設置された整流翼の列が生み出す高速乱流が、高圧タービンブレード列を通ることでさらに加速され、ブレード表面と相互に作用して急激な温度変化を生み出します。画像提供:メルボルン大学のリチャード・サンドバーグ氏(Richard Sandberg)。

スーパーコンピューターはどのように翼を手に入れるのでしょうか。複雑な乱流をモデル化し、エンジニアがジェットエンジンのタービンを改良するのを手助けできれば、かなり良いスタートになります。GEアビエーションとメルボルン大学(The University of Melbourne)の研究者たちは、スーパーコンピューターを活用してエンジン内の乱流フローの状態を研究しています。エンジン内の乱流フローとは、エンジンの燃焼室から急激に出力され、さらに高圧タービンを通過する過程で加速され、航空機に推進力をもたらす高温ガスのパワフルでダイナミックな一連の流れのことです。タービンはジェットエンジンの推進力に大きく影響するため、その効率がわずかでも改善されれば、航空産業界全体にとっても大幅なコスト削減につながる可能性があります。

GEアビエーションのチームは、エンジンの推進力の複雑なフローをできるだけ正確に解析するために、米国エネルギー省オークリッジ国立研究所(The U.S. Department of Energy’s Oak Ridge National Laboratory)に設置されている米国内で最も高性能なコンピューターであるスーパーコンピューター「サミット(The Summit)」の協力を仰ぎました。「サミット」を活用することで、チームは実際のエンジンの状態をより高い精度でモデル化し、タービンブレード近くで乱流がどのように熱伝導するかも検証することができました。GEアビエーションのコンサルティングエンジニアを務めるスリラム・シャンカラン(Sriram Shankaran)は「サミットのおかげでフローのスピードやその他のデータも、実際にエンジン内部でどのような状態で発生するのかかなり解析することができました」と述べています。さらに、「直接数値シミュレーション(Direct Numerical Simulations、DNS)」を用いることで、乱流に含まれるすべての大きさの渦をすべて一つのモデルでシミュレートすることができました。「このモデルは限りなく実際の状態に近いものを示すことができます」とシャンカランは言います。

みなぎる向上心

GEリサーチ社のチームは、米国エネルギー省エネルギー高等研究計画局(U.S. Department of Energy’s Advanced Research Projects Agency-Energy、ARPA-E)から480万ドルの研究助成金を供与され、機体重量17万5千ポンド(約79.4トン)、乗客175人の民間旅客機を飛行させるのに十分なパワーと軽量性を兼ね備えた電気推進システムを開発しようとしています。画像提供:ゲッティ・イメージズ。

燃料消費率という点においても民間航空機は大きな進歩を遂げています。1960年以降、乗客一人当たりの燃料消費量は80%減少しました。とは言うものの、同時に航空旅客数も急激に増加したことから、それまでに得られた減少量は相殺されてしまったと言えるでしょう。そこで航空機やエンジンの設計者は、今後数十年で航空機が環境に与える負荷を軽減するための新たな手法も探求しています。ニューヨーク州ニスカユナでGEグローバルリサーチセンターのシニア・プリンシパル・エンジニアを務めるジョン・ヤギエルスキ(John Yagielski)は「次の飛躍のためには、何か根本から違う新しいものが必要なのです」と語ります。それを担うのが機体重量17万5千ポンド(約79.4トン)、乗客175人の民間旅客機を飛行させるのに十分なパワーと軽量性を兼ね備えた電気推進システムなのです。

この新たな目標に向かって開発を進めることができるのも、米国エネルギー省エネルギー高等研究計画局(U.S. Department of Energy’s Advanced Research Projects Agency-Energy、ARPA-E)から480万ドルの研究助成金を供与されたからに他ならず、成功すればそれは決して小さな偉業にはとどまりません。開発に際して課題となるのが、よりクリーンなバイオ燃料をメガワット規模の電力に変換すること、そしてその電力エネルギーがボーイング737クラスのジェット機を飛行させるのに十分な推進力に変換される技術に道筋を付けることです。こうした課題も、GEのエンジニアにとっては航空機エンジンの外観イメージを一から練り直すきっかけになります。さらに、従来の航空機に多く見られる、エンジンを両翼下に搭載する方法に比べ、より高効率での飛行が可能な新しい設計を盛り込むことができるようになると期待されています。「この開発過程でもたらされるテクノロジーの多くで、その実現可能性を証明し、実機に近いプロトタイプ機の製作と実証試験に投資するようARPA-Eを納得させられるかがカギとなります。これは2050年に必要とされる航空機なのです」とヤギエルスキは語っています。

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