
Full Steam Ahead(全速前進):バイオマス燃焼プラントで日本の再生可能エネルギー目標達成へ一歩前進
日本の電力部門において、古くから存在するある技術に再び注目が集まっています。音楽界で例えるなら、デビッド・ボウイやマドンナ、プリンスに比肩するものであると言っても過言ではありません。
2011年までの10年間、日本の電力業界では化石燃料と原子力が圧倒的に優勢で、総発電量の9割近くを占めていました。しかし、2011年の東日本大震災を受け、政府は、国内発電量の約3割を占めていた11基の原子炉の運用を停止し、発電用の液化天然ガス(LNG)、燃料油、そして石炭の輸入を大幅に増やしました。
これは日本の電力部門のCO2排出量削減への取組みに大きなマイナス影響を与えました。これに対応するため、政府は2015年、国内電力に占める再生可能エネルギーの割合を2031年前半までに24%に引き上げるという意欲的な目標を打ち出しました。
これまでのところ、日本の再生可能エネルギーの割合は、2011年の13%足らずから2018年には16%まで増加しました。比較的歴史の浅い日本の再生可能エネルギー部門は、主として水力、太陽光、地熱、風力を利用した発電施設から構成されますが、人類の歴史よりも古いテクノロジーがその一角を占めます。バイオマスです。
先ずは、簡単に説明します。バイオマスとは、燃焼させてエネルギーを生成するために人間が利用する、植物や動物に由来する有機性資源を指します。ヒトの祖先であるホモ・エレクトゥスは約170万年前に、木を燃やした炎を利用して暖をとったり、食べ物を加熱したりしていましたが、現代のバイオマスには、ヤナギ、ポプラ、チカラシバなどの木本植物や草本植物、そして傷んだ食品や動物の堆肥などから採取されるバイオガスが含まれます。
有機材料なら、石油やガス、石炭と同じように燃やせば二酸化炭素が排出されることを考えると、なぜバイオマスは再生可能燃料といえるのか、不思議に思うかもしれません。GEのスティームパワー部門の営業責任者であるサーシャ・パーネイクスの説明によれば、バイオマスとして燃やされる植物や木や作物は、短い生涯を通じて光合成によって二酸化炭素を吸収してもいます。つまり、燃やされる前に、すでに排出量をオフセット(相殺)しているということです。「方程式を使って計算すれば、これは二酸化炭素の排出量と吸収量がほぼ同じ、つまり『カーボンニュートラル』なプロセスなのです。そのうえ何キロワット時もの電力を生み出してくれるのです」とパーネイクスは述べています。
人間が燃やしてエネルギーにする森林やサトウキビ作物を再生し続ける限り、バイオマスは再生可能サイクルの一部となることができます。この持続可能な農林業のサイクルにおいて、アメリカや欧州連合、国際連合は植物由来のバイオマスを再生可能エネルギー源と認めているのです。
茨城県神栖市では、まさにこれを具現化するプロジェクトが進んでいます。植物由来バイオマスを燃焼し、50MWの電力を生み出すバイオマス発電所の建設です。GEスティームパワーは日立造船株式会社と、この発電所の主要機器の設計、製造、供給を行う契約を締結しました。
上部画像:バイオマスとは、燃焼させてエネルギーを生成するために人間が利用する、植物や動物に由来する有機性資源を指します。
ヒトの祖先であるホモ・エレクトゥスは約170万年前に、木を燃やした炎を利用して暖をとったり、食べ物を加熱したりしていましたが、
現代のバイオマスには、ヤナギ、ポプラ、チカラシバなどの木本植物や草本植物、そして傷んだ食品や動物の堆肥などから採取されるバイオガスが含まれます。
最上部画像:パームカーネルシェルと木質ペレットをボイラ内で燃焼させ、水を熱して蒸気を生成します。その蒸気が高圧でタービンに流れ込み、
発電装置を回転させることで発電し、送電網へ送られます。その後、蒸気を冷却凝結して水に戻し、再びボイラに戻します。
このように水を閉鎖循環させて、同じ工程を繰り返します。画像提供:GEスティームパワー
神栖バイオマス発電所では、PKS、パーム油精製の廃棄物と、製材所の廃棄物から作られた木質ペレットの混合物を燃焼します。この時点で、ほぼカーボンニュートラルなサイクルが完了します。持続可能な農林業とその廃棄物を利用して、信頼できる電力を生成するのです。
確かに、バイオマス発電は最もコストが安い発電方法ではありません。しかし、十分な電力量を供給でき、太陽光や風力など、他の再生可能エネルギー源に必然的に伴う間欠性(そして、その結果生じる電力不安定)を補うことができます。日本の政府当局がバイオマス発電事業者に対し、1キロワット時当たり24円の固定価格買取制度による助成を行っているのは、これが理由です。「この助成がなければ、多くの事業は採算が取れないかもしれません。しかし、国としては再生可能エネルギー目標を達成したいところですし、発電の信頼性を重視する必要もあります」とパーネイクスは指摘します。
植物由来バイオマスはほぼカーボンニュートラルで、正味のCO2排出量の尺度では石炭の対極にあります。しかし、どちらを燃料にするとしても、エネルギーを抽出するプロセスは同じです。まず、PKSと木質ペレットをボイラ内で燃焼させ、水を熱して蒸気を生成します。その蒸気が高圧でタービンに流れ込み、発電装置を回転させることで発電し、送電網へ送られます。その後、蒸気を冷却凝結して水に戻し、再びボイラに戻します。このように水を閉鎖循環させて、同じ工程を繰り返します。
この工程に関して、GEは他の追随を許さない実績を有しています。「GEは1世紀以上にわたり、蒸気発電技術の最先端を走ってきました。ボイラ内の燃料は違っても、それがカーボンニュートラルな燃料であっても、発電工程は同じです」とパーネイクスは述べています。
神栖バイオマス発電所では、循環流動層(CFB)ボイラを採用します。燃焼していないバイオマスの塊や残り火を、
まるで暖炉の火をかき立てるように、完全に燃焼するまで攪拌する装置です。激しく燃え盛る炎とは逆に、緩慢燃焼性で比較的低温の安定した火は、
火炎温度が高い場合に生成される不要な窒素酸化物(NOx)を最小限に抑える作用もあります。 画像提供:GEスティームパワー
それでも、全ての燃料が同じように燃焼するとは限りません。バイオマスは燃焼速度が比較的遅い場合があり、効果的に燃焼させるには十分な空間が必要です。神栖バイオマス発電所では、循環流動層(CFB)ボイラを採用します。燃焼していないバイオマスの塊や残り火を、まるで暖炉の火をかき立てるように、完全に燃焼するまで攪拌する装置です。激しく燃え盛る炎とは逆に、緩慢燃焼性で比較的低温の安定した火は、火炎温度が高い場合に生成される不要な窒素酸化物(NOx)を最小限に抑える作用もあります。「温度が低いほど、サーマルNOx(高温燃焼の過程で発生する窒素酸化物)の濃度は低くなります」とパーネイクスは述べています。彼の説明によれば、標準のボイラでは燃焼温度が摂氏1500度に達する場合もありますが、GEのバイオマス燃焼CFBではだいたい摂氏800~850度前後です。つまり、10万人近い人口を抱える神栖市とその周辺の住民にとっては、それだけ大気汚染が少ないということになります。
神栖バイオマス発電所では、排煙に含まれる微粒子が発電所の煙突から周辺の大気に漏れ出すのを防ぐため、防塵フィルターも設置しています。「防塵フィルターは布製の袋で、排煙中の塵を持続的に収集し、蓄積します」とパーネイクスは説明します。
バイオマスは特にコストの安い発電方法ではないため、資金の乏しい国では選択肢にならないかもしれないとパーネイクスは認めます。しかし、CO2排出量の大幅削減を目指し、再生可能エネルギーへの急速で持続可能な移行に乗り出す資金力のある比較的富裕な地域においては、植物由来バイオマスは大きな役割を担います。「ですから現在、日本や韓国、ヨーロッパ、北米などのOECD諸国を中心に、バイオマス発電施設の新設計画が進んでいるのです」