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デジタル界の力持ち:GEデジタルが産業をどう変えるのか

トーマス・ケルナー

トーマス・エジソンとそのライバルたちが構築してから1世紀以上、送配電網はまるで一方通行の道路のように、大規模な発電所から家庭や企業、工場に向けて電力を送り出す仕組みに過ぎませんでした。しかし現在は、高速道路の複雑なジャンクションのように変貌しています。再生可能エネルギーへのさらなる移行を促進し、脱炭素社会を実現するためには、送配電網が再生可能エネルギー由来の電力の流入に対応する必要があります。しかし、再生可能エネルギーは天候に左右されるところが大きい上に、住宅の屋根に設置されるソーラーパネルから洋上風力発電所にいたるまで様々な種類の電力を巧みにさばく必要があるという難しさがあります。同時に、送配電網は電気自動車などの新技術によってもたらされる需要パターンの変化や、電力の安定供給を妨げる原因である気候変動や災害にも対応しなければならないのです。

米国の最大手の電力会社の一つであるデューク・エナジー社(Duke Energy)のジェフ・ブルックス(Jeff Brooks)コミュニケーション・マネージャーは次のように語ります。「私たちの生活がますます電力に依存するようになれば、電力供給には高い信頼性がなければなりません。電気自動車を充電ステーションにつないでいるにもかかわらず、7日間も停電したら本当に大変なことになります。」

そこで、ジム・ウォルシュ(Jim Walsh)の出番となります。ウォルシュはGEデジタルでグリッドソフトウェア事業担当ゼネラルマネージャーを務めています。彼のチームは送配電事業者をサポートし、電力の需要と供給のバランスをとるダイナミクスを調整しています。しかし今日、コントローラー、スイッチおよび変圧器からつぎつぎと送出される膨大なデータの管理を担うことは、決して簡単なタスクではありません。そのうえ、データを素早く活用してパターンを認識し、電力を送り届ける経路を見極めることは、送配電事業者にとって急速に不可欠なものになりつつあります。「この問題は紙と鉛筆で解決するには大き過ぎます。ソフトウェアがリアルタイムで予測および管理しなければならないという膨大なチャレンジなのです。そしてそのデータを分析・検証して活用できる機能があれば、よりスマートなオペレーションが可能となり新たなチャンスを生み出すのです」とウォルシュは言います。

(英語)

ラーニングカーブ(学習曲線)

GEデジタルは2015年の立ち上げ以来、さまざまなチャンスを見出してきました。これまでの様々な経験の中には、成功裏に終わったものもあれば、当初の予想とは異なる結果となった案件もありましたが、積み重ねてきた経験はGEデジタルの進化を支え、今日の産業用ソフトウェアにおける確固たる立場を築く基礎となりました。現在ではエネルギー、製造業、航空産業などさまざまな業界におけるオペレーションのデジタル化、いわゆる産業用IoTを支援しています。そしていま、分社化の準備作業が進むなかGEデジタルは新たなCEOを迎えて体制を整え、次のステージに向かおうとしています。ことし2月にはパトリック・バーン(Patrick Byrne)の後任として、オートデスク(Autodesk)の元経営幹部でソフトウェア業界に精通したスコット・リース(Scott Reese)がGEデジタルのトップに就任しました。なお、バーンは引き続きGEリニューアブルエナジーの陸上風力事業担当CEOとしてGEに留まります。

リースは、GEがヘルスケア、アビエーション、そしてエネルギーを中心とした3つの企業に生まれ変わる再編の一環として、2024年初頭に予定される分社化によって誕生する新しいエネルギービジネスの一端を担う会社を率いることになります。GEの会長兼CEOを務めるラリー・カルプ(Larry Culp)は次のように話しています。「GEは、GEリニューアブルエナジー、GEパワー、GEデジタルを1つのビジネスに統合し、エネルギー転換を担うリーディングカンパニーとなるべく計画を進めています。」

GEデジタルは社内の各事業部門に点在していたソフトウェアおよびデジタル開発を担う各チームをまとめるために立ち上げられましたが、ここ7年の間で数々の目覚ましいマイルストーンを達成しました。また、デジタルグリッドソフトウェア部門は、全世界の送電事業者の40%以上、配電事業者の30%以上にサービスを提供しています。2021年12月、GEデジタルはオーパスワン・ソリューションズ・エナジー社(Opus One Solutions Energy Corp.)の買収計画を発表し、サービスのラインナップに新たなツールを追加しました。このカナダのソフトウェア会社は、太陽光発電や風力発電、蓄電設備などの分散型エネルギー資源(Distributed Energy Resources、DER)の管理用ソフトウェア開発を専門としています。さらに、ことし初めにGEデジタル・パワー・ジェネレーションとオイル&ガス・ソフトウェア・チームは、ガスタービンの有害排出物や燃料消費を削減するための新しいソフトウェア「オートノマス・チューニング(Autonomous Tuning)」を発表しました。GEデジタルのパワージェネレーション・オイル&ガスビジネスのゼネラルマネージャーを務めるリンダ・ライ(Linda Rae)は「エネルギー転換には、効率化のためのあらゆる手段を講じることが求められるのです」と述べています。

エネルギー分野以外では、GEデジタルの製造およびデジタルプラント・ソフトウェア・チームが、P&Gやファイザー社の工場を含む世界中の約2万箇所の製造工場で活用されている生産性管理ソフトウェアの開発を担っています。また、GEデジタル・アビエーションのソフトウェアは、450社以上の航空会社と6,000人以上のパイロットをサポートし、フライトの安全性、サステナビリティイニシアチブ(より環境に優しいフライト)の実践、そしてフライトの遅延やキャンセルを減らして乗客へのサービスを向上させることに役立っています。さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大時において顧客企業の社員が在宅勤務を始めたときにも、GEデジタルのアルゴリズムを活用した各システムは工場の操業を助け、発電所や水処理プラントの稼働維持にも役立ちました。

「私たちは、エネルギー転換はソフトウェアなしには実現しないと考えています。さまざまな業界のお客様と協力し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、脱炭素化の目標達成を支援できることはこれ以上ない喜びです」とGEデジタルCEOを務めるスコット・リース(Scott Reese)は語ります。 画像提供:GE Reports トップ画像提供:ゲッティイメージズ

課題解決の担い手

これらの成功はGEデジタルの初期からの経験が糧になっています。例えばGEデジタルは「Predix」と名付けた独自のソフトウェアプラットフォームを構築し、これに関連するいくつかの大規模な買収も実施しました。計画では、GEの各ビジネス部門やお客様のデータをPredixに移し、各ソフト開発者はそのプラットフォーム上でアプリケーションを開発してデータを分析するという、いわば産業用iTunesのような仕組みを想定していました。

しかし数年が経過し、経営陣が交代すると、GEデジタルは新しいエネルギーとその将来性によって恩恵を受けることが明らかになりました。GEデジタルの最高技術責任者(CTO)を務めるコリン・パリス(Colin Parris)は次のように説明します。「当時GEデジタルが始めたのはホリゾンタルな産業横断的な手法でした。誰もが利用できるプラットフォームを構築したかったのです。しかし、このビジネスモデルは時期尚早でした。私たちはホリゾンタルな方法を用意することで、誰もがベースを見つけ、そのベースとデータからバリューを得る方法を見つけることができると考えていました。しかし、クリーンなデータをそれぞれに適した方法で入手することは非常に難しかったのです。これが、私たちが目測を誤ったポイントの一つです。」

しかし、その後もお客様の声に耳を傾け続けた結果、GEデジタルは「バーティカル・マーケット」に軸足を移し、特定の課題を解決し成果をもたらす独自のアプリケーションを開発することにフォーカスしました。パリスは次のように語ります。「必要なものをすべて作るのではなく、現在は、送配電網に再生可能エネルギーを追加することで、低コストでのエネルギー供給と送配電網の安定性を両立するなど、お客様の課題解決をお手伝いしています。」

送配電網ネットワークの新たな局面

以上のような戦略転換は功を奏しつつあります。エネルギー業界に対する取り組みはその好例と言えるでしょう。GEデジタルのお客様は幅広い業種にわたっていますが、電力業界のお客様は急速に増えてきています。これは裏を返せば、世界中で浮き彫りになりつつあるエネルギー転換に伴う複雑さも一因となっていることを表します。「送配電網は人類が作り上げた最も複雑な装置の一つです。エネルギー生成と消費の双方のパターンが変化する中、送配電網をスムーズに稼働させるには、多大な努力と多くのパートナーシップを必要とするのです」とバーンは説明します。

バーンによると、世界には300から400社の送配電事業者が展開していますが、GEはすでにそれらの多くと関係を築き上げています。「送配電網はおもちゃではないことは誰でもわかっていますし、ソーシャルメディア・アプリのように気軽に立ち上げたり消したりできるものだとも思っていません。ですが、これを高度に調整できるようになるには何年もかかります。私たちはGEが持つエンジニアリング能力も含め、送配電網をどのように管理するかについてリアルな知識や経験をお客様に提供することができます」とバーンは語ります。

「この問題は紙と鉛筆で解決するには大き過ぎます」とGEデジタルのジム・ウォルシュ(Jim Walsh)は言います。画像提供:GE Reports

リーン方式の浸透

GEデジタルにとって、その持てる力はまず足元から発揮されます。お客様とマーケットが必要とするものをより早く提供するために、GEは企業経営の手法を変えつつある強力なツールを持っています。そのツールとはリーン方式であり、すべての原則のコアとなる哲学であると同時に日本語の「カイゼン」という言葉に具現化される継続的な改善を意味します。毎日、より良くなるように努力するというコンセプトは、経理部門でも、製造現場でも同じように当てはまる概念です。リーン方式とは「単なるツールの組み合わせを超える、生き方そのものなのです」とカルプは説明します。

GEデジタルではリーン方式の導入によって、例えば日常業務やプロジェクトの品質が改善されました。ウォルシュはさらに説明します。「業界はこれまでの50倍の速さで変化しており、お客様もそのことを明確に認識しています。これまでは何かを導入する際には2年から3年を費やしていたかもしれませんが、今となっては何度も状況が変わるため、お客様にそのような余裕はないのです。」

リーン方式の代表的なツールの一つであり、お客様が必要とするものを提供するのに役立つのがバリューストリームマップです。バーンは次のように説明します。「GEデジタルは、お客様と一緒にビジネスプロセスのステップをマッピングし、それらがどのように結びついているのかを明らかにします。多くの場合、そのように考えるのはお客さまにとって初めての経験です。多くの方々は、物事とは決まった手順で機能するものと考えがちです。しかし実際に書き出してみると、データがどこから来たのか、誰が何をするのか、どのような決定がなされ、どれくらいの時間がかかっているのかがはっきりし、本当の姿が浮かび上がってくるものなのです。」

このように、プロセスの真の姿を把握することで、各チームは無駄を省き、プロセスを改善することができます。ウォルシュは、お客様との共同カイゼンセッションは「GEのこれまでの蓄積だけでなく、同分野の競合他社からも、私たちの働き方や考え方の違いをお客様と共有する素晴らしい機会でした」と語っています。

「私たちは現在、送配電網に再生可能エネルギーを追加することで、低コストでエネルギーを供給することと送配電網の安定性を両立するなど、お客様の課題解決をお手伝いしています」とGEデジタルの最高技術責任者(CTO)を務めるコリン・パリス(Colin Parris)は語ります。画像出典:GE Reports

これからのデジタル

CTOを務めるパリスと彼のチームは、自身もその先駆けに携わってきた次世代テクノロジーの開発に忙しい日々を送っています。その中にはデジタルツインと称する技術があり、ジェットエンジンやタービンなど、現実の機械のデジタルモデルを活用して、将来起こりうる状況をモデル化し、その結果を予測することができます。また新しい技術も開発しています。そのひとつが「Humble AI」で、人間とAIを融合することを目指したコンセプトです。パリスは次のように説明します。「すでにデータがたくさん揃っている場合AIは良く働くのですが、気象パターンが急激に変化しているときなどは、AIは人間の助けを必要とします。理解を手伝ってほしいのです。たとえば小さな赤ちゃんが1、2回熱いストーブに触れたら、すぐにその危険性を学習するように。」

このように人間参加型のAI活用がこれからのデジタルにとってカギになるとパリスは述べたうえで、さらに次のように語ります。「この方法が今後の世界をどう動かすかを決めるでしょう。なぜなら、ある事例が500件積みあがるまで待っていられないからです。2例目が手元に来た時点でそれ以降の展開を把握しなければならない時代になっているのですから。」

新CEOに就任したリースも同意見です。「エネルギー転換はソフトウェアなくして実現しないことは分かっています。さまざまな業界のお客様と協力して、お客様のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、脱炭素化の目標達成を支援することにこれ以上ない喜びを感じています」とリースは話しています。

デューク・エナジー社のブルックスらはこの話に関心を持っています。「私たちは2050年までにネットゼロカーボン社会を目指したいと考えており、達成のためには現在あるテクノロジーで多くのことを実現できると話してきました。しかしながら、この目標を達成するためにはイノベーションも必要です。これは私たち全員が共に歩む道のりなのです。そのためには、同業の電力会社とのパートナーシップとともに、未来の世界をより発展させるために必要なテクノロジーを持つイノベーティブな企業との協働も重要なのです。」

動画提供:GE Reports

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