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日本人に多い“デンスブレスト(高濃度乳腺)”――乳がん検診最新事情

最近、乳がん検診の分野で注目されている「デンスブレスト(高濃度乳腺)」をご存知でしょうか。乳腺がよく発達した乳房のことで、マンモグラフィでは真っ白く描出されてしまうため、腫瘍があった際にその判別が非常に難しくなります。多くの日本人女性に見られる特徴であり、乳がん検診のあり方を考えるうえでも重要なポイントとなるものです。今回は、このデンスブレストをテーマに、乳がん検診の最新情報や、乳がん診療の質の向上のために尽力する乳がん専門医の取り組みをご紹介します。

女性医療、中でも乳がん診療におけるパイオニア「さがらブレストピアヘルスケアグループ」は九州を本拠地としています。しかし昨年、新たな試みとして東京都内に遠隔画像診断のためのサテライトオフィスを開設しました。同グループ乳腺外科部長であり画像診断のエキスパートの戸﨑光弘医師は、このサテライトオフィスにて、九州のグループ病院から送られてくる月に計2,000件近くものマンモグラフィや超音波画像の二次読影*1を行っています。

「日本でこうした遠隔診断はまだあまり普及していないものの、例えば、自宅近くのクリニックで気軽に乳がん検診を受け、その画像を専門家にきちんと読影してもらえるなど、そのメリットは大きいと思います。こうした取り組みが全国的に広がればと願っています。」と戸﨑医師は話します。

戸﨑光弘医師

さがらブレストピアヘルスケアグループ 乳腺外科部長 戸﨑光弘医師
東京のオフィスにて、九州から送られてくる毎月2000件近くの
医療画像の二次読影を行っている

実は、日本では乳がん診療の専門家である乳腺専門医が偏在しています。ICTの発展に伴い可能になった遠隔読影によって全国どこにいても専門医による正確な画像診断を受けられるようになることは、生活者だけでなく社会全体にとっても意義あることです。

一方、日本での乳がん検診率に目を向けてみると、30%前後と先進国の中でも非常に低く*2、その罹患数、死亡数ともに上昇している*3という悲しい現状が。さらに、50歳以下のアジア人の約80%がデンスブレスト(高濃度乳腺)であるとされる中、日本でのその認知度はわずか1%(GEヘルスケアグローバル調査*4)。こうした現状を少しでも変えようと、戸﨑医師は2013年、外科医や乳がん患者サバイバーとともに、特定非営利活動法人 乳がん画像診断ネットワークを設立。米国のNPO法人である「Are You Dense?」など外部団体とも連携しながら、乳がんおよび乳がん検診についての正しい情報提供や、乳がん診療に関わる医師同士の連携促進を行っています。

アメリカでは半数近くの州で、乳がん検査(マンモグラフィー)の受診者に乳腺濃度を知らせることを義務付けた法律が制定されており、自身がデンスブレストであるかどうかを知ったうえで、必要な追加検査を受けるかどうかを判断できるようになっています。日本でも、少しずつではありますが状況は変わりつつあると、戸﨑医師は言います。「乳がん画像診断ネットワークでも積極的に情報提供を行っていますし、最近では検診を受けた人が、自分がどのタイプの乳腺濃度なのかがわかるよう乳房画像を印刷し、配り始めている施設もあります。デンスブレストについて知ることは、女性が自らアクションを起こすきっかけとなります。これからの日本での広がりに期待したいと思います」

昨年11月、世界的医に権威ある医学雑誌The Lancetに、40歳以上の日本女性7万人以上を対象にした乳がん検診における超音波検査の有効性を検証する比較試験の結果が公表されました*5。厚生労働省の国家的プロジェクトとして立ち上がったこの比較試験では、マンモグラフィ検査に超音波検査を加えることで、早期乳がんの発見率が約1.5倍になるなどの結果が得られており、今後の乳がん対策にとって重要な示唆を与えてくれるものとなります。

GEヘルスケアは「ウィメンズ・ヘルスケア」のために、女性特有の健康リスクやライフステージに応じた医療を可能にする製品開発を行っています。乳がんの検診スピードや精度の向上はもちろんのこと、女性の心身への負担が少なくよりやさしい検査環境を実現することもメーカーの責務です。同時に、女性とご家族が主体的なアクションをとってこうした医療技術の恩恵を享受できるよう、理解促進に努めています。

*1: 見落としを防ぐために、一つの画像を二人の医師が診断すること
*2: OECD Health Data 2013
*3: 国立がん研究センターがん対策情報センター人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部)人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2013年)
*4: GEヘルスケア調査。2015年7月実施。 米国、ブラジル、英国、インドネシア、日本、インド、中国、オーストラリア、 韓国の9か国、計4,500人(18歳以上)対象。
*5: 「乳がん検診における超音波検査の有効性検証に関する研究」(JSTART)。2007年7月~2011年3月、計72,998人を対象としたランダム化比較試験。 http://www.j-start.org/topics/2015-11-09.html

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