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“Charm and Dignity” : エリザベス女王を偲ぶ

クリスティン・ギブソン

エリザベス二世女王陛下が崩御された9月8日、GEの会長兼CEOのラリー・カルプは次のように記しました。「GEが創設されて130年となりますが、英国における事業展開もほぼ同じ期間に及びます。つまり、エリザベス女王陛下の在位期間は、私たちが英国に貢献してきた期間の半分以上にも及ぶのです。今、ひとつの時代が終わりを迎えたものの、私たちの思いはこれからも変わることなく、英国全土の7,500人の社員、英連邦全域にわたるサプライヤーやビジネス・パートナー、そして女王を慕うすべての人々とともにあります。」

またカルプは「人々にお心を配り、寄り添い、そして導く謙虚さ」を持つ女王を讃え、追悼しました。その思いは、カルプだけでなく、女王との出会いを経験したGE社員がそろって記憶にとどめています。

英国史上最も長く王位に君臨した女王とGEとの長年にわたる交流の事例(ハイライト)をいくつかご紹介します。

1967年5月12日、イングランドのラグビーにあるウィランズ・ワークス(Willans Works)工場にて

女王とエディンバラ公フィリップ殿下がイングランドのウィランズ・ワークス工場の視察に訪れたとき、5,000人の人々がラグビーの通りを埋め尽くし歓迎しました。数十年にわたりモーター、エンジン、およびタービンの分野で画期的な進歩を遂げてきたこの工場は、当時イングリッシュ・エレクトリック社が所有していましたが、現在はGEスチームパワーの一部門となっています。

ウィランズ・ワークスの工場視察に訪れた女王。画像提供: ゲッティ イメージズ。 トップ画像提供:Shutterstock

赤と白のストライプの日よけの下で案内役にお言葉をかけられた後、工場に向かって訓練校を通りかかった際、女王は実習生からミニチュアの工具セットを贈られました。ある実習生が後にラグビー・オブザーバー紙に語ったところによると「新調したオーバーオールを着た職長たちに随行されて」女王は工場の長い通路を歩かれ、時折立ち止まっては、特に水力タービンのブレードや600メガワットの蒸気タービンのシリンダーなどに関心を持たれたとのことでした。「広く、殺風景な工場の中で、女王はひときわ輝いて見えました」と、後に従業員のひとりが語っています。

画像提供: ゲッティ イメージズ

視察のグランドフィナーレとして、女王は職人が溶けた金属を流し込んでディーゼルエンジンのエンジンブロックを鋳造する工程をご覧になりました。その後、女王はイングリッシュ・エレクトリック会長であるネルソン卿に「今日は本当に勉強になりました」とお言葉をかけられました。

工場の従業員にとって、女王の視察はひときわ大きな印象が残るものとなりました。「特に、女王の魅力と威厳、そして女王と殿下がラグビー・ワークス工場で働く人々や製品に深い関心を示されたことは、従業員一同にとって長く記憶に残る出来事となりました」と参加者のひとりは記しています。

2004年10月28日、ウェールズのポート・タルボット(Port Talbot)にあるバグラン・ベイ発電所(Baglan Bay Power Station)にて

GEがウェールズに世界で初めて蒸気冷却式ガスタービンを備えたガス火力発電所を完成させた時のことです。その落成式への来賓としてご参加を願うのにふさわしいと思われたのは女王でした。そして10月のある日、女王はフィリップ殿下とともに当時最も高効率なガスタービンが設置されたバグラン・ベイ発電所に到着されました。

フィリップ殿下は長さ約40フィート(約12.2メートル)、直径16フィート(約4.9メートル)という、当時存在した最大のガスタービンのサイズそのものに感銘を受けていました。一方、女王はこの発電所に命を吹き込んだ人々により強い関心をお持ちでした。「女王は驚くほど謙虚な方で、GEのチームやプロジェクトに携わったすべての人々に会いたがっていました」と振り返るのは、当時GEのガスパワー部門のエンジニアリング責任者で、現在はGEのCTO(最高技術責任者)兼シニアバイスプレジデントを務めるヴィック・アバーテです。

バグラン・ベイ発電所にて。 画像提供: ゲッティ イメージズ

当時の発電所マネージングディレクターで、現在はGEのプロジェクト・マネジメント・オフィスのシニア・エグゼクティブを務めるブライアン・レイは、地元や海外のGEスタッフや役員、発電所の従業員の家族、そしてお客様など約200人のゲストを女王に紹介しました。レイは次のように振り返ります。「そこにいた全員が女王といっしょに写真を撮ることができました。女王はみんなと会うのを心から楽しまれていましたし、退屈しているようには全く見えませんでした。」

タービンデッキを歩いて視察した後、女王はご自身のハンドバッグをダイニングチェアの下に置き、レイ、アバーテ、そして当時GEの発電担当バイスプレジデントだったマーク・リトルと昼食をとられました。リトルはボストン出身で、前夜はレッドソックスが1918年以来のワールドシリーズ優勝を決めていました。「それでリトルはまだ興奮冷めやらぬ状態だったのです」とレイは述懐します。リトルは女王に「レッドソックスはご存じですか?」と尋ねました。すると女王は「レッドソックス?なんておもしろいチーム名なのでしょう」とお答えになったのです。

バグラン・ベイ発電所で女王をお出迎えするGEのヴィック・アバーテ。画像提供: GE

レイは当時を振り返り、さらに続けます。「昼食会での会話はごく普通のもので、例えるなら会ったばかりの人たちが何気なく交わすようなものでした。女王は私たちの話にとても興味をお持ちになり、私たち一人ひとりがその日参加することになった経緯にも関心を示されました。そのご様子を間近で拝見し、女王陛下が『しっかりと地に足が着いた』方だということを肌で感じた上、人々に寄り添うお姿を直接拝見することができたのは本当に素晴らしい経験でした。」

2014年7月4日、スコットランドのロサイス(Rosyth)にあるロサイス造船所にて

2014年夏、女王は英国海軍史上最大かつ最新鋭の軍艦であるHMSクイーン・エリザベス航空母艦の命名・進水式に出席され、ボウモア蒸留所のサーフ・ウィスキーの入ったボトルを船体にぶつけて割り、お祝いされました。6万5000トンの鋼鉄製航空母艦はスコットランドのロサイス造船所で建造されたものでした。それゆえ、進水式で通常用いられるシャンパンの代わりにスコットランドのウィスキーがお祝いに使われたのです。

同艦は、英国海軍のクイーン・エリザベス級航空母艦の一番艦であると同時に、世界初のオール電化航空母艦でもあります。電力制御および管理もすべてGE製のシステムで運用されています。

HMSクイーン・エリザベスの命名式にて。画像提供:エアクラフト・アライアンス

命名式で女王は次のように述べました。「このクイーン・エリザベスはイノベーションに富み、クイーン・エリザベス級航空母艦の一番艦となります。この新しい空母の名前の由来となった者として、英国海軍の旗艦であるクイーン・エリザベスが私たちすべての国民にとって勇気と誇りの源となるものと信じています。」

エリザベス女王の生涯こそが、私たちにとって勇気と誇りの源であったことは、言うに及びません。

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