ロゴ

バランスを変える:GE、インドでジェンダーダイバーシティーを尊重した工場を新設

クリス・ヌーン

トーマス・ケルナー

バンガロール(Bangalore)は、インドのシリコンバレーと称されるように、同国のイノベーションのハブを担う都市としてここ2~30年その地位を確立してきました。しかし、最近ではテクノロジーやソフトウェアにとどまらず、ダイバーシティ、公平性、インクルージョンといった世界的に大きく注目されている課題にも取り組む都市として注目されています。

その最新の好例が、GEヘルスケアの子会社ウィプロGE(Wipro GE)が、バンガロール郊外のホワイトフィールド(Whitefield)にわずか8カ月で新設した最新の医療機器工場です。バンガロールの喧騒から離れた白壁の工場は、高く伸びたヤシの木と花をつけた街路樹が並ぶ道路、青々とした芝生に囲まれた緑のオアシスの中にあります。3月初め、工場では35人の女性が3交代で働き、インドや世界中の患者の治療に役立つCTや超音波診断装置を組み立てていました。その陣容は今後数年で100人に達すると見込まれています。

この工場には、最新の医療技術に携わるということだけでなく、インド国内にとどまらず国境を越えた人々の共感を得るポイントがあります。この工場の新設に尽力し、工場長を務めるクリシュナ・シュリニヴァーサ・ラオ(Krishna Shrinivasa Rao)は次のように語ります。「この工場を新設することが決定したとき、何か新しいことを取り入れる良い機会だと考えたのです。製造業で典型的に思い浮かべるのは力仕事、その力仕事といえば男性、そして男性に偏った大学卒の人材が集う場所というイメージがどうしても付きまといます。しかし、製造業も新たな時代に入っていることを示したかったのです。」

女性工場長のひとりであるシュバ・ナゲシュ(Shuba Nagesh)は次のように語ります。「私は2人の姉妹と共に育ちましたが、私たちに対する父の教えは幼少時からずっと、ぶれることはありませんでした。『勉強し、仕事を得て、自分の足で立てば、あとは自然に結果がついてくるものだ』と。」 トップ画像:女性チームがMRI機器を組み立てる様子 画像提供:ウィプロGE

同じ市内にある他の3つのGEの工場では男性が従業員の大半を占めているのに対し、ラオと幹部らは、新工場の陣容は女性の採用に注力した構成にし、この比率を変えようと考えたのです。「旧来の3つの工場を超えて世界水準に近い多様性を確保するための良いスタートとなるでしょう」と彼は言います。

数カ月前に入社し、製造プロセスエンジニアを担うダーナラクシュミ・ナガラジュ(Dhanalakshmi Nagaraju)が「この仕事は私にエネルギーを与えてくれるのです。自分の足で立つことができるようになりました」と語っていることからも、この工場がいかに良いスタートを切ったかが伺えます。

GEにとって女性を重用することは必ずしも新たな取り組みではありません。ラオは男性ですが、市内にある他の3つのGE工場のうち2つは女性管理職であるサンディヤ・グプタ(Sandhya Gupta)とシュバ・ナゲシュ(Shuba Nagesh)によって運営されています。1997年にGEに入社したナゲシュは、インド中の病院でGEの医療機器を修理・メンテナンスする部署に従事する唯一の女性エンジニアを務めてきました。画像診断装置の点検のために20ポンド(約9.1㎏)の工具袋を持って国内の遠隔地にひとりで出向くこともある仕事でした。しかしナゲシュはGEの権限委譲の方針と実力主義に魅力を感じてきたと言います。女性だからという理由だけで男性と異なった扱いを受けるのではなく、男性と同等のチャンスを求めていたのです。ナゲシュは次のように語ります。「私は2人の姉妹と共に育ちましたが、私たちに対する父の教えは幼少時からずっと、ぶれることはありませんでした。『勉強し、仕事を得て、自分の足で立てば、あとは自然に結果がついてくるものだ』と。」

ウィプロGEの新工場はバンガロール郊外のホワイトフィールドにあります。画像提供:ウィプロGE

そしてナゲシュはそのチャンスを自分のものにしたのです。インドの農村にルーツを持つ彼女は、遠隔地のコミュニティでも人々が確かなケアを受けられるようにするために現地に赴きたい、と上司に願い出ました。彼女は次のように語ります。「私が得てきたチャンスは社内の皆と全く同様、能力に則った評価が私を成長させてくれたその積み重ねによるもので、その結果今の私があるのです。現在バンガロールに女性工場長が2人いるのは、誰かがある日突然『そうだ、多様性が重要だ』と言い出したからではありません。何十年にもわたる指導と育成の賜物なのです。」

GEヘルスケアのマネージングディレクターを務め、4つの工場を管掌するマヘッシュ・カプリ(Mahesh Kapri)は、新しい工場はこのレガシーを土台に作られていると言います。「壁を破ることはその存在を認めることから始まります」と彼は言います。

GEの枠を超えて、カプリ、ラオ、そしてその他の幹部も、新工場をインド国内の労働力における女性比率の低さを是正する機会としてとらえています。2019年時点で、インドの女性はおよそ5人に1人しか職についておらず、労働力全体に占める割合は27%に過ぎませんでした。製造業ではさらに比率が低く、労働力に占める女性の割合はわずか12%でした。

こうしたアンバランスを是正するために、ウィプロGEの新工場は、工場現場の職務に女性を採用し、ナガラジュのような女性人材を生産現場のリーダー職に登用することにもコミットしました。さらに、GEのバンガロール拠点全体の上級管理職の半分を女性が占めるようにすることも決定したのです。カプリは次のように語ります。「私たちは、すべての社員が成功し、活躍する機会を得ることができる文化を創造しています。ダイバーシティとはつまり、人材の構成における『何を』重視し『誰を』登用するか、インクルージョンとはそれを『どのように』活用するのか、つまり職場環境の創造です。偏りをなくしながら豊かなアイデアを醸成し、高い視点を確保するためには、ダイバーシティに富み、インクルーシブな人材層が必要なのです。」

「私は自分の仕事に情熱を持っている女性たちが製造現場に集っているのを見るのが大好きで、とても幸せな気持ちになります」とある従業員は話します。画像提供:ウィプロGE

経営陣は、この新工場がGEウィプロ全体の現地調達率、つまりインド国内で調達する部品の比率を大幅に高めることができると予測しています。サプライチェーンがグローバルにおいて限界に達している現在、これはGEにとってもメリットがありますし、インド政府もこのような製造拠点が新設されることで、地域のサプライチェーンが強化され、地域横断的に経済が活性化することを期待しています。

これはインドにとっても、GEにとっても、そして女性にとっても、皆が恩恵を得られる仕組みとなります。この新工場でCTスキャナーの組み立て担当製造チームリーダーを担うアクシャータ・ティンマイア(Akshatha Thimmaiah)は、「女性たちに工場に来てもらい、研修を実施し、製造プロセスを理解しやすいようにしています。彼女たちはいつも満面の笑みを浮かべ、GE内外でキャリアを積めるという事実に元気をもらっています」と述べ、少女時代からテクノロジーに魅了され、機械の仕組みを知りたかったという彼女は、先駆者になりたかったのだと振り返りながら、さらに次のように語ります。「女性が少ない職業に就き、若い世代が後に続くような選択肢を探さなければならないと常に考えています。女性が力をつければ、より強い国をつくることができるのです。」

また、ティンマイアの同僚のアイーシャ・アブドゥラ(Ayesha Abdulla)もこう語ります。「私は自分の仕事に情熱を持っている女性たちが製造現場に集っているのを見るのが大好きで、とても幸せな気持ちになります。彼女たちはわくわくしながら仕事に励み、学ぶことにも前向きです。自分たちのために何かをしたい、自分と家族のためにより良い未来をつくりたい、と思っているのです。」

このような多人数にもかかわらず、ウィプロGEが必要とする女性たちを採用するにはわずか数週間しかかかりませんでした。ウィプロGEは、男性中心の何百万人ものインド人労働者が製造技術を学ぶ産業貿易機関(Industrial Trade Institutes)と呼ばれる成人教育研修機関を探し回り、STEM(科学、技術、工学、数学)分野の才能に優れる多くの女性たちを見出したのです。

ディーピカ・カマット(Deepika Kamat)製造プロセスエンジニア。サハナ G.ヘッジ(Sahana G. Hegde)GEヘルスケアの生産チームリーダー。ラクシュミ・レディ(Lakshmi Reddy)品質保証エンジニア。 画像提供:ウィプロGE

ここ数カ月、このGEの女性新入社員たちは専門的な研修を受け、それぞれの職務に通ずるオペレーション手法を学んできました。ラオは次のように説明します。「そうした研修は業務を担う上で非常に重要です。というのも、この工場は決してGEの宣伝のための工場ではないからです。安全、品質、納期、コストにフォーカスする製造工程は、GEの他の工場と同じで、これらの原則は男性か女性かは問題ではありません。女性でも男性と全く同じオペレーションを担いますし、より多くの女性を採用する工場だからという理由で妥協が入ることは一切ないのです。」

むしろ「新しい工場だからこそ、リーン方式も活用した工場運営をはじめ、最新の製造技術やプロセスを取り入れることができたため、一歩先を進んでいるのです。ここで実施できたことはインドでも、そして世界でも、業種を問わずどこでも応用できるのです」とラオは語ります。

新工場の正式な稼働開始は来月中の予定ですが、すでに生産は始まっています。バンガロールが位置するカルナタカ州(Karnataka)の労働政策に従い、女性たちは3交代制で24時間稼働に対応するよう習熟訓練に入っているからです。男性と同じように高電圧の装置類を操作し、同じツールを使って機械部品の組み立てや接合を行っています。ほかの工場と少し違う点は、ウィプロGEでは託児所を用意するほか、女性たちが自宅と工場の往復の通勤に利用できるマイクロバスも運行予定であることです。

ラクシュミ・シヴァリンギア(Lakhsmi Shivalinghiah)さんは、新工場の生産チームのリーダーを担います。母親と妹と3人で暮らしている彼女は、女性が力を合わせるとどんなことができるのか、その体験談を次のように語ってくれました。「個人的に、私は新しいことに挑戦したいタイプの女性です。例えば、男性の仕事と思い込んでいた機械工学のエンジニアになりたいと思ったこともあります。このような若い仲間と一緒に仕事ができることは、私にとって大きな喜びなのです。」

メール配信メール配信