
未来のグリッドを創造する
GEパワー CVP兼最高デジタル責任者 スティーブ・マーティン
―これは、スティーブ・マーティン本人が記し、3月9日にLinkedInに投稿した記事のの抄訳です―
今日のイノベーションは、あっという間に明日のベースラインとなります。電気自動車や充電ステーションを目にすることも、すでに珍しくなくなりました。冷蔵庫に食べ物を補充するように知らせるスマートホームの存在も、日常の光景になる日がすぐそこまで来ています。近い将来、住人が仕事に出かけたことを屋根のソーラーが検知して、使用されていない電気を家で仕事をしている隣人に回すことになるでしょう。これもすべて当たり前のことと思うようになるはずです。
簡単に導入できるイノベーションがどれも、ますます大きな負荷がかかりつつある古いグリッドに支えられていることに気付いている消費者はほとんどいません。また、電力産業がその創業以来、直面する最大の課題がこのずれにあることを知っている消費者となるといっそう少なくなります。結局、私たちのすべての活動を支える信頼性の高い電力の供給なくして、貧困や教育などの問題に対処することは困難なのです。
ヒューストンで3月に開催されたエネルギー業界のイベント「CERAWeek」で、この極めて重大で興味深い問題を取り上げる機会がありました。つまり、「仮に今、白紙から未来のグリッドを創造できるとしたらどうだろうか」という問いです。
デジタルによって強化されたインテリジェントな送配電網を一から構築するためのポイントを説明します。
1. 基本は、デジタル化と階層化–システムの導入、配置から監視、保守まで。ソフトウェアとデータによってつながった資産、配電、送電、電力消費をシステム全体でリアルタイムに監視すると将来に向けたレジリエントな電力システムを組織的に構築できるようになるでしょう。また、このレベルのソフトウェアによる知見を配電監視技術および需要予測技術と組み合わせれば、送配電網の効率性と信頼性は驚くほど向上するはずです。また、階層化アプローチを取ることで、レジリエンスが加わり、効率性が向上して、エネルギーの不採算化も防止できます。
2. 双方向送電設計–今は電気が発電から消費への方向だけでなく、今後ますますグリッド全体を多方向に流れるようになります。例えば、住宅用のソーラーパネルは、送配電網に電力を送り返します。そのため、ますます複雑化するエネルギーの流れを管理する新たな手法が必要となります。
3. 完全に統合されたソフトウェア–この新しいグリッドは、電力チェーンの中で特定の役割を果たす個人資産および送配電網自体の運用ソフトウェアを使用するように設計されます。ネットワークレベルの最適化ソフトウェアを追加すれば、効率性、耐障害性、柔軟性が大幅に向上するでしょう。発電、送電、配電、消費というすべての要素が、運用ソフトウェアおよび最適化ソフトウェアとつながり、アナリティクスと機械学習によって強化されるはずです。GEは、発電事業者のエクセロンなどの大口顧客と統合管理のメリットを探っています。エクセロンは、2017年10月にGEのPredixベースのソフトウェアを採用し、北米の1千万人以上が利用する電力の送電線や配電線内の停電や保守の管理や予測にまで役立てることを発表しました。
4. 分散型の蓄電装置をいたる所に–再生可能エネルギーおよび分散型発電技術が、将来の電力送配電網の基盤となり、現在電力にアクセスがない10億人以上に電力を供給することができるようになります。ただし、こうした技術は不安定な性質を持つため、グリッドの変動に対応可能で、気候や需要の変化に素早く対応できる再生可能エネルギーを導入した電力貯蔵装置を組み込んで送配電網を構築する必要があります。今週、GEパワーは、まさにそれを実現する新しい電力貯蔵プラットフォーム「GEレザボア」を発表しました。レザボアは、グリッド全体に統合され、変化しやすい再生可能エネルギーを管理し、送配電網の運用の最適化と、局所的に分散した発電源のネットワーク化を進めます。この革新的なプラットフォームは、世界最高レベルの蓄電装置をデジタルソリューションおよびエッジコントロールと融合することで、事業者が現在のエネルギー環境の急速な変化に対応して管理できるようにします。
5. 応答性と自己修復型–カリブ海に位置するプエルトリコなどで起きた最近の自然災害が示すように、コミュニティの対応能力は、そこの電力送電網の柔軟性と強度に比例します。送電網システムの強化、レジリエンスの向上、分散化が進めば、最も激しい嵐や突然の停電にも地域が持ちこたえられるようになります。鍵となるのはデータです。データがあれば、顧客は、最悪の天候にも事前に対応できます。新規に設計された送配電網なら、このレベルの監視とレジリエンスを最初から織り込んで構築されるはずです。
6. マイクログリッドの導入と拡張–マイクログリッドは、本格的なシステムや従来のシステムの構築が困難、または法外なコストのかかる地域に電力を供給するための、高速、柔軟、かつレジリエントなメカニズムを備えています。基本的に、マイクログリッドによって、重要な地域の電力の安定性と持続可能性が保証され、変わりやすい発電源と蓄電源を広範な送配電網により簡単に導入できるようになります。
今すぐ始めるには
これまでの100年にわたる電力への取り組みは、今後の100年に対する十分な準備になったと考えられます。GEパワーのアプローチは、運用、最適化、高度アナリティクスといった、現在の電力業界を革新するさまざまなソフトウェアを組み合わせて、ネットワークレベルの最適化を実現するものでした。つまり、このようにして、既存の送配電網から将来に向けた送配電網を実現しつつあるということです。ここが機械から取得したデータ、機械と送電網の性能から得たデータ、およびそれらを改善するために使用する機械学習との交点です。
個別の資産レベルで開発されたソフトウェアをまとめてシステム全体レベルの最適化を図ることで、将来の送配電網は、状況の変化に対応して適合し、その性能を向上、復旧、そして強化できるようになります。お客様やパートナーと緊密に連携して、未来グリッドの構築を支援し、将来発生するすべてに備える計画です。とは言え、たとえ上手くいっても、誰も気付きさえしないかも知れませんが。