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分解してリサイクル:風力タービンブレードの完全な再生利用に挑む

クリス・ヌーン

エネルギーの中でカーボンフットプリント(Carbon Footprint:製品やサービスの原材料調達から生産、流通、廃棄・リサイクルまで、そのライフサイクルを通して排出されるCO2の量)を最小限に抑えられるのは「風力」だという事実は驚くべきことではないでしょう。そのうえ、風力タービンのブレードをリサイクルすれば、更なる削減が可能となります。「あらゆる段階において、エネルギー、材料、消費の持続可能性が大幅に改善されます」と述べるのは、LMウィンドパワーのエンジニアリング技術部門でバイスプレジデントを務めるハニフ・マシャル(Hanif Mashal)です。GEリニューアブルエナジーの子会社であるこのデンマーク企業は、ブレードを完全にリサイクルする方法を見出すべく尽力しています。

LMウィンドパワーは、風力タービンブレードの世界的な大手メーカーです。同社が世界中の工場で製造するタービン用ブレードは年間約14,000枚に上り、その発電容量は9GW以上で欧州の1100万世帯以上への供給量に相当します。同社で最小のブレードの重量は約12トン、最大のブレードはGE Haliade-X洋上風力タービンプラットフォーム用で全長107メートル・重量50トンに及びます。「ローター(回転子:ブレードを組み合わせたもの)が風力タービンの動力源となります」とマシャルは説明します。「その製造には膨大な労働力、ポリマーを多く含んだ複合材、高温を必要とし、輸送と設置にも多大な労力とエネルギーが必要になります。」

長年にわたりカーボンフットプリントの削減に取り組んできた同社は、2018年に「カーボンニュートラル」を達成し、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの使用、カーボンオフセットの購入を通した削減努力でCO2排出量のバランスを図ることにより、事業運営におけるCO2排出量ゼロ化を実現しました。マシャルは、耐用年数20年以上を前提に設計された風力ブレードをリサイクルする方法を見出すことが次の合理的なステップだと考えています。「当社の事業範囲をはるかに超えた、バリューチェーン全体の持続可能性を確保することを目指しています」と同氏は語ります。

LMウィンドパワーのブレードのライフサイクル
風力ブレードのライフサイクルの予想図。画像提供: LM ウィンドパワー

しかしながら、ブレードのリサイクルは簡単にはできません。鉄鋼製のタービンタワーやジェネレーターとは異なり、長いブレードはガラス繊維、ポリマー、コア(芯材)からできており、熱硬化接着剤でひとつにまとめられています。「持続可能性とコスト効率を確保しながら容易にリサイクルできるような物質ではないのです」とマシャルは語ります。

これまで、使用済みのブレードの大半は埋立地に恐竜の骨のように並べて廃棄されるのが一般的でした。「この方法は好ましいものではありません」とマシャルは述べます。かつてはブレードを橋、彫刻や公園の遊具に再使用することを試みたプロジェクトもありました。

しかし、LMウィンドパワーのアイディアはより壮大なものです。昨年秋、同社の親会社であるGEリニューアブルエナジーはVeolia North Americaと業務提携しましたが、その目的は、リサイクル処理したブレードを世界中のコンクリートに最も多く使用される材料である「ポルトランドセメント」の製造プロセスで活用することでした。そして今年1月、LMウィンドパワーを含む複数のデンマーク企業がコンソーシアムを組んで行う3年間のプロジェクト「DecomBlades」に対し、国の基金(Innovation Fund Denmark)から財務支援を得ることに成功しました。このプロジェクトは、多様なリサイクル技術によって持続可能なリサイクルバリューチェーンの構築に取り組むものです。「風力発電産業は、使用済みの風力タービンブレードを環境、労働者の健康安全、エネルギー消費及びコストを配慮した持続可能な方法で廃棄する方法を見つけることに注力していますが、これらすべての要求を満たす解決策は依然として見つかっていません」と、DecomBladeの運営委員会委員長を務めるLMウィンドパワーのエンジニアリングエクセレンス事業部シニアディレクターのジョン・コースガード(John Korsgaard)は説明します。

最上部画像:GE Haliade-X風力タービンのブレードは全長107メートル。画像提供:GE リニューアブルエナジー 上部画像:リサイクルされたブレードの材料は、コンクリートの最も一般的な材料であるポルトランドセメントの製造に使用できる可能性があります。画像提供: Veolia North America.

さらにGEリニューアブルエナジーは、今後2年間ノックスビル市にあるテネシー大学のスタートアップ「Carbon Rivers」及びその他のパートナーとの連携で、ブレード部品に含まれるガラス繊維を再利用するためのシステムを開発していきます。焦点となるのは熱分解(超高温で加熱し物質を分解する手法)です。成功すれば、この共同プロジェクトをとおして風力ブレードの廃棄物処理プラントから回収されたガラス繊維を他の産業に供給することが可能となります。「将来的にはこのガラス繊維でサーフボードが作れるかもしれません」とマシャルは話します。

風力発電分野において製品のライフサイクルをとおした持続可能性を維持するためには、使用済みブレードのリサイクルに向けた解決策を確立することが必要です。しかし、貴重な天然資源の無駄づかいを減らす方法として、リサイクルは問題解決のほんの一部に過ぎないのです。現役を終えた風力タービンブレードの廃棄には、全ライフサイクルを通したCO2排出量の約1%にしか過ぎません。対照的に、ブレードの全ライフサイクルを通したCO2排出量の約70%がサプライチェーンにおける資源採集の時点で発生しています。

LMウィンドパワーが製造するブレードの全ライフサイクルを通したCO2排出量に最も直接的な影響を与えるには、サプライヤーと協力して無垢の素材から再生材料に切り替え、必要となる量だけを正確に調達し、リーンマネジメントを用いて製造プロセスの無駄を削減することが必要となります。「無駄が発生する前にそれを防止することは地球に対する悪影響を減らす上での最善策であり、そのまま経営上のメリットともなるのです」とマシャルは説明します。ブレード製造における無駄の削減を通じ、同社は2016年比で3,300万ドル以上のコスト削減を実現しました。

資材調達及び工場運営の手段の効率化を図ることは無駄の削減に多大な効果をもたらしますが、こうした取り組みだけでは無駄をゼロにするという目標を達成することはできません。このギャップを埋めるには、革新的な材料やデザイン及びプロセスが必要です。その取り組みの一環としてLMウィンドパワーは昨年、フランス大手化学会社アルケマ製の特別な樹脂を使用してプロトタイプのブレード2基を製造するコンソーシアムに参加しました。この「ZEBRA」(Zero wastE Blade ReseArch)プロジェクトでは、特別な樹脂で製造されたブレードの動作と工業生産が可能かどうかを実証実験する予定です。

このコンソーシアム・プロジェクトは風力発電業界がリサイクルを進める上で大きな取り組みとなります。「最初からリサイクルを前提に設計された材料を使用します。リサイクルをビジネスとして成立させるには、一定のボリュームとより高い予見性が必要です。そのため、大企業が協力し合うのはお互いにプラスになります」と同氏は述べています。

リサイクルを前提に設計された材料、そして既にリサイクルされた材料を製造プロセスに導入することは、完璧に持続可能なブレードの完成に向けた戦略の一部でしかりません。ブレードの持続可能性をより高めるために、LMウィンドパワーはすでに次のステージに目を向けています。昨年の時点で、ブレードのコア(芯材)に使用される原材料の約50%には再生プラスチックが使用されました。

「無駄を減らした世界を創造するというビジョンを持っており、私達の製品はそのビジョンに基づいて作られています。」そして製品の詳細な部分まで精査し、このビジョンを達成していく必要があります。」とコースガードは語ります。

彼らの成功は、LMウィンドパワー、そしてこの地球にとって有益となるでしょう。

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