
電力が動く|力強い一歩:GE、世界最大の洋上風力タービンの契約を初めて獲得
トーマス・ケルナー
ジョン・ラベルはGEのエンジニアとして働いてきた40年間でパワフルな機械をいくつも目にしてきました。しかし、これまで見たどの機械も、洋上風力タービンの中で世界最大の発電量を誇るHaliade-Xには敵いません。このタービンは今年の初めに1日当たり288MWhの電力を発電して世界記録を塗り替えました。これは、プロトタイプのHaliade-Xが運用されているロッテルダムにおける3万世帯分の電力を十分に賄える発電量です。
このタービンがこの度、また新たな偉業を達成しました。GEリニューアブルエナジーがHaliade-Xの契約を初めて獲得したのです。これは、ラベルがCEOを務めるGEリニューアブルエナジーの洋上風力発電チームがドッガー・バンク洋上風力発電ファームに13MWのHaliade-Xタービンを190基供給するもので、世界最大の洋上風力発電ファームとなる予定のドッガー・バンクプロジェクトの第1フェーズと第2フェーズにあたります。
ドッガー・バンク風力発電ファームは、建設を担当するSSEリニューアブルズと、運用を担当するエクイノールとの合弁事業であり、北海のヨークシャー沿岸から約130km離れた場所に位置しています。2026年に竣工予定の同ファームは3.6GWの発電出力を持つ施設になる見込みです。これは英国の450万世帯(全世帯数の約2割)分の電力消費を十分に賄える発電量であり、英国全体の今後想定される発電総量の約5%に相当します。
ラベルが2016年にGEの洋上風力発電部門のCEOに就任した時点では、Haliade-Xはコンピュータ上の設計図として存在しているだけでした。当時、ラベルもGEも洋上風力発電業界に参入してまだ日が浅く、新顔でした。さらに当時のGEが製造していた洋上風力タービンの発電量は6MWで、Haliade-Xの半分の出力しかありませんでした。「当時の私は風力タービンのエキスパートとして就任したわけではありませんでした。それでも、私たちには新しいテクノロジーであるHaliade-Xに大きな投資をすべきだと確信していました。そのことがGEに電力市場で他社と異なる強みをもたらすだけでなく、洋上風力発電全体にとって有益で、発電コストを削減でき、サステナブルなビジネスにできるものと信じていました。」とラベルは回想しています。
担当チームは陸上風力発電のほか、発電や航空などの各分野でGEが培った深い専門知識を活用しました。「私がこれまでのキャリアで学んだことを一つ挙げるとすれば、技術のタイプが何であれ、GEの技術者を決して疑ってはならないということです。」とラベルは語ります。「技術の開発は、外の世界の人々が思うほどスムーズに進むものではありません。ヒヤッとすることや難しい課題が秒単位で現れます。勝ち組とそうなりたいだけの人を分けるのは、開発の過程で遭遇した課題を乗り越えるちからです。」
風力発電業界の専門家としてHaliade-Xの開発を指揮したGEのビンセント・シェリングスは、Haliade-X開発プロジェクトをこれまでのキャリアで遭遇したことのない経験だと語っています。Haliade-Xのパワーは桁違いに大きく、GEリニューアブルエナジーの子会社であるLMウインドパワーが製造したブレードはそれぞれ全長107メートルもあるため「多くの場合、部品をどのように製造し、どのように輸送し、どのように組み立てるかまで考えなければなりませんでした。」とシェリングスは話します。「そのため、Haliade-Xという製品のエンジニアリングだけでなく、実際にはサプライチェーン全体を設計することになり、私が予想していたよりはるかに多大な労力が必要でした。」
しかし、費やした労力に見合う成果を得ることができました。Haliade-Xの初のプロトタイプはロッテルダム港に建設され、昨年の秋から発電を開始しました。そしてこのタービンは2019年12月に、タイム誌が選ぶ「2019年の最も重要な発明品」のひとつに選出されたのです。
担当チームがプロジェクトを進行させたスピードの速さも、風力発電業界の注目を集めました。「何らかの機械を発表することと、発表した機械のプロトタイプを作ることの間には大きな隔たりがあります。プロトタイプを作ることは初めの大きな一歩であり、計画を現実に近づけることです。」とラベルは話します。「プロトタイプがうまく稼働すれば信頼を得ることができます。当社がHaliade-Xを発表した際、業界関係者からは好意的な反応を得ましたが、彼らの本音は『では、証明してください。そのプロジェクトを実行できますか?』だったでしょう。疑いの目で見られていました。しかし、その後プロトタイプが完成すると、彼らは私たちの本気を認め『なかなかやるな』と思ってくれたのです。」
運転中のプロトタイプを活用して、GEはお客様に役立つ大きな進化をいくつか得ることができました。ラベルは次のように述べています。「この大きさの12MWタービンを開発する過程で学んだことをすべて、一つ一つじっくりと検討することで、お客様の利益につながる知見を得ることができました。まず、これほどの規模の機械をつくることに2年を費やし、プロトタイプのテストに1年かけました。この3年の間に学んだすべてのことを活かして、お客様のニーズに応える準備をさらに強化できました」

担当チームは実用可能なプロトタイプを完成させ、今年前半に高い評価を得ることができました。しかし、彼らの仕事はそれで終わりではありません。次の段階として、認定された試験機関にタービンの審査を行ってもらう必要がありました。これは「型式証明」と呼ばれる工程です。この工程はプロトタイプ全体の評価とタービンを構成する部品の評価という2段階からなる審査で、設計・試験体制・製造工程の審査も含まれます。
今年6月、ノルウェーに拠点を置く独立系の世界的認証機関DNV GLはGEに対し、Haliade-Xが最高の安全及び品質基準を満たしていることを証明する暫定的な型式証明を発行しました。正式な型式証明は今年後半にGEのもとに届く予定です。ラベルは次のように述べています。「お客様に紙の上のデータが示す経済性を気に入ってもらうだけでなく、『契約書にサインしよう』と思わせるほどの信頼と安心感を持ってもらうためには、私たちがやらなければならない重要な事項はたくさんあります。お客様の成功は私たちにかかっていますから。」

Haliade-Xプロトタイプのすべての確認と試験の工程を通じて、このタービンは当初目標としていた以上の性能を出せることも明らかになりました。GEは初のHaliade-Xのプロトタイプを出力12MWになるよう設計しましたが、ドッガー・バンク風力発電ファーム用に製造予定のタービンは13MWを発電できる見通しです。「設計工程のある時点で、私たちは『ドッガー・バンクの競争優位性を高めるにはどうすればよいか』と考えるようになりました。」とシェリングスは話します。そして、ドッガー・バンク発電ファームは北寄りに位置し外気温が低いため、発電量を増やして運転してもオーバーヒートしない可能性に担当チームは気づきました。シェリングは次のように述べています。「私たちにとって開発プロセス全体が冒険の旅のようなものでした。開発の方法を考える一方で、考えた設計の性能を最大化するにはどうすればよいかを探りました。」
この旅はまだ終わっていません。ラベル、シェリングスと担当チームは現在、Haliade-Xをプラットフォームと捉え、ゼロから新しい設計を生み出さなくても、このプラットフォームを使って出力を増やせると考えています。シェリングスは次のように話しています。「このプロセスの素晴らしい点は、一度完成させたら同様のプロセスを実現するために何が必要かをしっかり理解できることです。サプライチェーンの制限や素材の制限などがよくわかるようになり、Haliade-Xという旅の次の段階に進むために役立つ事柄をより正しく理解できるようになります。」
Haliade-XはGEに「洋上風力発電業界で継続的な競争優位性を得るための戦略的ロードマップを提供してくれます。それが私たちの目標です。準備不足は絶対に避けたいですね。」とラベルは話しています。
彼の強い言葉には、国際エネルギー機関(IEA)の予測が関係しています。IEAは2040年までに世界全体の洋上風力発電容量が現在の15倍に達し、誘致される投資の累積額は約1兆ドルになると見込んでいます。GEはドッガー・バンクに加え、米国の2件のプロジェクトを含む世界各地で5GW分の洋上風力発電案件の優先納入業者に選ばれています。
他方、ラベルは2030年までに40GW相当の洋上風力施設を建設することを目標に掲げる英国で、Haliade-Xが今後重要な役割を果たすことになると言います。英国はまた、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標も推進しています。「ドッガー・バンクはGEにとって、世界最大規模を誇る洋上風力発電市場に足場を築くための素晴らしいチャンスになります。」とラベルは話します。「当社にとって、英国の洋上風力発電業界に参入し、従業員を育成し、施設を運用し、素晴らしい顧客基盤を築くことは非常に重要なことなのです。」
ラベルはまた、次のように述べています。「技術面で継続的に競争優位性を保ち、業務を安全かつ高い品質で遂行すれば、ビジネスを順調な状態に維持できます。このプロジェクトを始めたチームはずっと誇りを持ち続けることでしょう。」

