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釣りより楽しいこと:友情がかき立てたガスタービン革新の炎

エイミー・コーバー

ドン・ブラント(Don Brandt)は、機械がどのように動いているかかということに常に心を奪われてきました。1949年の高校卒業後、機械工場に見習いとして勤務し、朝鮮戦争時にはアメリカ海兵隊で戦車の修理に悪戦苦闘していました。「戦車に問題があったんですが、それが何かを当時は理解できなかったんですよ」とブラント。彼の口調から、今でもその時の苛立ちを感じ取ることができます。

もっと学びたい、という彼の粘り強い信念が戦車メーカーのエンジニアに伝わり、戦後ペンシルバニア州立大学(Pennsylvania State University)で機械工学を勉強するよう勧められます。そこで機械内部の仕組みを徹底的に学び、材料工学の修士号取得後は博士課程の道にも進みました。GEパワーに入社したブラントはガスタービンにその好奇心の全てを注ぎ込み、それは瞬く前に彼が生涯を通して情熱をそそぐ対象となっていきます。「でも一番好きなのは、ひ孫達ですけどね」と88歳になるドンは語ります。

ドン・ブラントとFクラスタービンのプロトタイプ 画像提供: ドン・ブラント

彼が残したものは元気な子孫だけではありません。ブラントは、GEの画期的なFクラスガスタービン考案の父でもあります。Fクラスはコンバインドサイクル効率が50%を優に超えた初のガスタービンで、少ない燃料でより多くの電力を発電できる設備を顧客に提供することを可能にしました。本年6月に30周年を迎えた7Fガスタービンは、史上最大の成功を収めたガスタービンの一つとして広く知られており、現在、世界各地で稼働する約1,000基が多くの世帯や企業に電力を供給しています。

7Fとして知られている、とても大きな設備であるFクラスガスタービンファミリーは、70~80年代におけるブラントとそのチームの尽きない好奇心のおかげで実現したものです。低サイクル疲労や線形弾性破壊力学といった圧力下でいかに物質が変化する(behave)かについてニューヨーク州スケネクタディのユニオン・カレッジで研究後、ブラントはGEパワーのガスタービン物質科学の「behaviorist」となり、ガスタービン開発に新たな合金や方法論を導入する他の専門家の採用担当を務めました。「当時、こうした技術のほとんどがガスタービンの設計に使用されていなかったんです」とブラントは説明します。

燃焼温度を2,500°Fとするガスタービン建設に関するGEの意図を定めた書簡の写し。これに対して鉄の融点は約2,800°Fである。画像提供: GEガスパワー

ブラントの有能さはシンシナティで広く知れ渡り、70年代、GEアビエーションでチーフエンジニアを務めるマーティ・ヘムスワース(Marty Hemsworth)からヘリコプター・エンジンに使用する材料の製造に協力するよう要請を受けます。二人はすぐさま親友となりました。「男が二人して魚釣りに行くような、そんな感じですぐ仲良くなったんですよ。」とブラントは言います。「魚釣りには実際には行ってないんですけどね。」代わりに、それぞれの部門におけるエンジニアリングについて話したり、発見を共有したり、問題解決に向けて協力したりしました。

この頃、ブラントは、より効率的で、コンバインドサイクルに特化した構造を備えるガスタービンを製造する方法について考えるようになります。エネルギー効率化のカギとなるのは温度だということは気づいていました。タービンの燃焼温度が高いほど、サイクル効率も向上します。70年代のガスタービンの燃焼温度は1,985°F(1,085℃)でしたが、ブラントは飛躍的な進歩とみなされる2,300°F(1,260℃)以上を目指していました。実際、1979年9月5日付の書簡にてブラントは2,500°F(1,371℃)もの高温で検証を行うようチームに要請しています。この書簡は、GEで最大となるFクラスガスタービンフリートの製造を目指したプロジェクトの開始を示す公式な文書となりました。

バージニア州チェスターフィールドの発電所に搬入される初代の7Fタービン 画像提供: GEパワー

問題は、タービン自体を溶かすことなく燃焼温度を上げるということでした。これを実現するため、航空機エンジンの新たな冷却方法から理想的な燃焼形態まであらゆる調査を行うようブラントはチームに指示を出しました。さらなる措置として、GEリサーチ、マテリアル&プロセス・ラボ、アビエーションの科学者で構成される社内審査委員会の共同議長にヘムスワース氏を招き、Fクラスタービンのエンジニアリング・レビューを毎月実施しました。この協力体制を通して、航空機用エンジンのローターに使用される合金インコネル(Inconel)706をガスタービンに応用するという恩恵がもたらされました。ブラントはこの合金が超高温の燃焼温度にも耐えうると推測し、最終的には7Fタービンホイールに採用する方法を考案したのです。骨の折れる仕事でした、とブラントは指摘します。「[航空機用エンジンのローターの]重量はポンド単位ですが、私達が取り扱っていたのはトン単位でしたから。」

チームは、技術以外の障害も乗り越える必要がありました。ブラントの当時の上司はこのプロジェクトの遂行に消極的で「絶対にトラブルに巻き込まれるぞ。」とブラントに警告していました。さらに、GEの競合他社がこの大胆不敵なプロジェクトに気づかないように注意する必要もありました。ブラントは既存のEクラスシリーズに若干の調整を加えただけのように思わせるため、このタービンを「Fクラスシリーズ」と名付けました。

1989年初旬、ついに初代7Fタービンの2基がバージニア州チェスターのチェスターフィールド発電所に到着し、ディキシー・ミュージック(Dixie Music)と名付けられたコントロール・スペシャリストが1,000人以上もの見物人の前でタービンの導入を指揮しました。「非常にドラマチックな瞬間でした。明らかにGEにとってはとても重要なプロジェクトでしたから。」とチェスターフィールドでGEパワーの顧客満足度を管理し、当時タービン導入に従事していたマーク・ブル(Mark Bull)は回想します。このタービンは期待を裏切ることなく稼働を続け、現在では熱効率60.4%で756メガワットの発電を実現しています。1990年6月に稼働を開始してから世界中で約1,000基が導入されており、燃焼時間は5,000万時間を超えました。

7Fガスタービンの最大の功績は、そのイノベーションがもたらした影響でしょう。過去15年で天然ガスの使用量は増加し、石炭消費量は着実に減少しています。現在、発電事業者はタービンに高効率を求めるようになり、結果的には排出ガス低減につながりました。

「現役のエンジニアとして、とても楽しい経験をさせてもらいました。」とブラントは語ります。彼は電力事業のチーフエンジニアを1996年に退職した後、設計審査を積極的に行う一員としてチーフエンジニアのオフィスで15年勤務しました。「私が本当に嬉しく思うのは、みんなが協力して世界をより良くすることができたという点です。」とブラントは述べています。

確かにその通りになりました。ブラントとそのチームが30年前にFクラスガスタービンを開発した努力はガスタービン業界に変革をもたらし、その功績を基盤とするGEの最新技術「HAガスタービン」が新水準へと性能を高め、効率性で世界記録を達成する一助となったのですから。

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