ロゴ

Air Blockchain――新たなアプリが航空業界を早期回復へ

Brett Nelson

2020年6月12日 

航空業界はこれまでも激しい乱気流を乗り越えてきました。例えば、1970年代の石油危機や9.11同時多発テロなどです。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大はこれまでとは違う規模の被害をもたらしています。この10年間で急激に増加した年間旅客数が、ここ数カ月で劇的に落ち込んだため、グラフで見るとまるで書きかけのまま居眠りして手が滑り落ちたような推移を示しています。国際民間航空機関(ICAO)が6月5日に発表したレポート によると、2020年の世界旅客数の見込みは23~31億人―航空会社が提供する座席数の40~53%―に落ち込み、3000~4000億ドルの減収になると見られています。

旅客機が再び滑走路から飛び立つ準備を進めるなか、航空業界は、乗客が安全にできるだけ早く目的地に到着できるようブロックチェーンなどの強力で新たなテクノロジーを取り入れています。

例えばGEアビエーションは、TE-FOODと連携して新たなモバイルアプリを開発しています。TE-FOODは、ブロックチェーンを活用して食品サプライチェーンのトレーサビリティ向上に取り組んでいる企業です。この新たな航空アプリでは、ブロックチェーンを利用して、機体、乗員、乗客が離陸前に健康状態に関する検査に合格したかチェックすることができます。Microsoft Azureにより実現したこのソリューションは現在販売中で、航空会社や空港など航空業界を対象にデモンストレーションが実施されています。

GEアビエーションでブロックチェーンソリューション担当ゼネラルマネージャーを務めるデイビッド・ハベラは次のように述べています。「GEのエンジンを採用している航空会社の飛行機が飛ぶことで、GEアビエーションのビジネスモデルは成立しています。我々は、できる限り早くお客様が再び空の旅を楽しめるよう手を尽くしています。」

ブロックチェーン技術は、ビットコインなどの仮装通貨に使われている安全性の高い記録管理の仕組みですが、他にも無数の用途があります。ブロックチェーンを使えば、まるで特定の順序に並んだ積み木をつなぎ合わせるように、企業はほぼ無限のデジタル記録を保管し、追跡できます。今回のアプリでは暗号化と秘密鍵(private key)を使って、乗客や乗務員の個人情報や診療情報を守りつつ、航空会社はそのデータを世界中で共有できます――これにより、既に検査済の乗客をお待たせしないのです。

ブロックチェーン技術は、ビットコインなどの仮装通貨に使われている安全性の高い記録管理の仕組みですが、他にも無数の用途があります。トップ画像、上記画像提供: Getty Images

一見大変そうですが、この大掛かりな健康チェックは航空機の無数の部品を把握し、その保守点検記録を更新する作業――GEがこの数十年間磨きをかけてきたスキル――とは異なります。航空会社と乗客が新たな手順をたくさん覚える必要もありません。アプリを使ったチェックインは、現在の搭乗手続きとあまり変わりません。それどころか、アプリのインターフェイスとデータベースには柔軟性があるため、検査技術の向上や安全管理基準の変更に合わせてアプリも更新できます。GEアビエーションのパートナーズ・アライアンス担当グローバルヘッドであるスコット・リッジは、こう語ります。「プロセス自体を変更するのではなく、単にデジタル技術で可能にしているのです。」

例えば、ある乗客が来月、アプリを導入している航空会社を使ってニューヨークからヨーロッパに向かうとします。彼女は、Google PlayまたはApple storeからアプリをダウンロードし、自分のパスポートのバーコードをスキャンして、自分のQRコードを作成します。あとは、航空会社の指示に従って、医師による診断書をスキャンする(アプリではこちらを推奨)か、自分の健康状態を自己申告する形で必要な健康診断書を追加します(現時点で、全ての航空会社が同じ安全管理基準を採用しているわけではありません)。最後に、航空会社のスタッフが彼女のアプリをスキャンして搭乗手続きを完了してから、座席に案内します――座席では、乗客がトレイテーブルのQRコードを読み取れば、前回のフライト後に消毒されたか確認できます。

この健康状態確認アプリは、GEのデータと分析の専門知識、Microsoft Azureのクラウドコンピューティング・インフラ、TE-FOODのブロックチェーン追跡ツールを組み合わせたものです。TE-FOODのツールは、例えば2019年のアフリカ豚コレラの拡大防止にも役立ちました。

今回はさらに壮大なビジョンが掲げられています。このプラットフォームには、ホテルチェーン、オンデマンド配車サービス、さらには旅行エコシステム内のあらゆる事業者も含まれるでしょう――最終的には、ホテル客室内のテレビのリモコンに至るまで、旅先で接触する可能性がある全ての物を顧客が確認できるようになります。ハベラは語ります。「私たちが考える『健康』の定義は、はるかに幅広いものです。私たちは、QRコードを何回かスキャンするだけで、旅行全体のリスクをなくしたいと考えています。目指しているのは、航空業界の回復だけでなく、ホテル、ライドシェアサービス、さらには旅行という体験を再び活性化することです。」

これは、もし実現できれば、産業界全体を今後のパンデミックの波から守れる可能性がある大胆な目標です。とはいえ現時点で、航空会社は考え得る限りの支援をそれも早急に必要としています。リッジは語ります。「私たちは、10社以上の航空会社や多くの空港と導入に向けて話し合っています。多くの人にまた飛行機に乗って頂きたいのです。」

メール配信メール配信