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GEの新会社「AiRXOS」はドローン産業の成長を目指します

ドローンが今できうるすべての仕事を一度想像してみてください。米国フロリダ州でジカウィルスを媒介する蚊の退治や、アラスカ州にあるガスパイプラインの点検、米国全土での橋やダムの構造欠陥のチェックなど。または事故現場への医療用品の急送、空港への乗客輸送、そしてピザの配達までできるかもしれません。業界で無人航空機(UAV)と呼ばれるドローンは、来たるべき革命なのです。

しかしこの革命が始まる前に、無人航空機の操縦者と規制当局には、有人と無人の航空機が安全に空を共有するためにすべきことがあります。

現行の航空交通規則はドローンにとって多くの制約があります。大多数のドローンが飛行する高度500フィート(約152m)未満の空域には、送電線、樹木、建物、橋梁などがあり、航空機の離着陸が行われ、そして多くの人々もいます。55ポンド(約25kg)を超える重量のあるUAVの飛行、夜間の飛行、人がいる場所の上空の飛行、点検などを目的としたUAVの有視界外飛行が現在禁止されています。このような飛行を行いたい企業は米国の連邦航空局(FAA)に適用除外の申請を行わなければなりませんが、申請プロセスでは運用の厳密なプランと、起こりうる全ての不測事態について細かく説明する必要があります。これは例えば、ドローンが飛行している空域に突然航空機あるいは人が入った場合、ローターが故障した場合など、多岐にわたります。

確かに、ドローンが安全に飛行できるためのガイドラインがすでに数多く存在しますが、それらのルールを理解し、従っている人はそう多くはありません。このような状況でも、FAAには適用除外の申請が殺到しています。「当社ではテキサス州で操縦者から見えない場所でも55ポンド(約25kg)を超えるドローンの飛行を要請するプロジェクトに取り組んでいます」と、ドローン業界へのサポートサービスを提供するGE新子会社のAiRXOS社ゼネラルマネージャーのケン・スチュワートは述べています。「これが先例になります」

実際、ドローンは最先端の技術であるため、今後のプロジェクトにより先例が作られていきます。ドローン革命が無事離陸するためには、承認プロセスを合理化する必要があり、ここでAiRXOSの出番となります。


ドローンに対する航空管制システムが必要です、とAiRXOS社 CEOのケン・スチュワートは述べている。1つ目の画像と上記画像のクレジット:GE。

まず背景としては、UAVの需要は近年急増しています。2020年までに販売されるドローンは700万台になると予想されることから、現在の航空交通管理システムではドローンの交通量には対応できません。また現行のシステムをドローンにすぐに適用することもできません。パイロットは航空管制塔と通信し、レーザー検知を使用して事故を回避します。パイロットが搭乗せず、レーダーの使用ができない地上付近を飛ふドローンではこのようなことはできません。

連邦規制当局がドローン急増への対処に乗り出そうとしている中、AiRXOS社などの企業はUAVに対する航空管理システム構築のプロセスの円滑化を試み、市、州、そして自治体がそれぞれのUTMシステムを確立するための手助けをしています。そもそもUTMとはどういうものでしょうか。略語自体もあまり見かけない合成略語です。実際には「無人航空機システム(UAS)交通管理」を略したものですが、もっと単純に言えば、UTMはドローンと航空機がお互いに衝突することを防止するための規則を細かく規定します。

AiRXOS社はUTMのインフラを提供するためにハードウェア、ソフトウェア、サービスを組み合わせ、UTMが天候および障害物情報を含めた、システムが必要なすべての要素を調整できるようにします。お客様のドローンが飛行する前に、特定の空域を飛行するために必要となるすべての承認と飛行許可をUAV運用者が取得できるように自動認可サービスと免除サービス、さらに運用確立のための技術サポートを提供します。AiRXOSはFAAへの申請フォーム記入方法のアドバイスを行い、リスクと安全についても査定します。

当初は手作業で行われる想定ですが、AiRXOS社は最終的には自動で行われるクラウドベースのサービスになる予定です。「お客様は当社を訪れ、『これが当社の申請したい内容だが、FAAにどのように提出すればよいのか』と言っていただければいいのです」とスチュワートは話しました。AiRXOSはこのサービスをニューヨーク州のセンターステートで展開し、シラキューズにあるビジネスインキュションセンター「テックガーデン」での営業所開設を予定しています。

55ポンド(約25kg)を超える重量の飛行、夜間の飛行、人がいる場所の上空の飛行、有視界外飛行(点検など)はUAVでは現在禁止されている。そしてこのような種類の運用で飛行を行いたい企業は米国の連邦航空局(FAA)からの適用除外を申請しなければならない。画像クレジット:iStock。

ドローンを規制するということが気の遠くなる考えだと思われるのであれば、航空産業がかつて似た状況だったことを思い起こしてください。規制、標準、通信と追跡の技術の確立なしには、自転車部品から作った飛行機が世界中を毎日飛び回るジェット機にまでの発展はできませんでした。「ドローンについても飛行機と同様のシステムが必要となります。つまり無人機に対する航空管制システムの確立です」とスチュワートは話します。

米国運輸省と業界は、5月に10箇所の米国空域でのドローンプロジェクトの提案を招請し、システムを確立することに向けた一歩を踏み出しました。このパイロットプログラムの背景となる考えは、さまざまな環境や状況のもとでドローンを実際に運用し、最終的に標準と最善の慣行を決める判断材料になりま。10箇所の空域のうち、AiRXOS社の提案は、サンディエゴ、メンフィス、チョクトーネーションの3つのプロジェクトに採用されました。

例えば、テネシー州メンフィス周辺の空域では、AiRXOS社、米物流大手のフェデックス社、そしていくつかのUAV企業が空港滑走路上の瓦礫をドローンを使って点検することに取り組みます。レーザー画像処理によって瓦礫を検出するドローンもあれば、高解像度カメラあるいは熱画像処理を使用して検出するドローンもあります。UAVを管理するためのさまざまな種類の通信についても実験しています。メンフィスでの他のプロジェクトでは、ドローンは空港周辺のセキュリティを監視し、近接するフェデックス施設への飛行機部品の配送を行い、メンフィス大学タイガースチーム本拠地である、リバティ・ボウル・メモリアル・スタジアムと農場、河川の点検を行います。

2019年にはメンフィスだけではなく、サンディエゴとオクラホマ州チョクトーネーションのいくつかのプロジェクトでもAiRXOS社のドローンビジネスが軌道に乗るとスチュワートは予測します。ドローンが飛行機と同じように、私たちにとって当たり前のものになるにはまだ数年かかりますが。

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