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クリーンな未来への架け橋に:天然ガスがオーストラリアの石炭由来CO2削減に貢献

グレガー・マクドナルド

産業革命以来、石炭を焚くボイラーは世界中で蒸気を生み出し、電力を供給して産業の発展に貢献してきました。しかし、現在ではCO2排出量の多さがネックになっています。その一方で、石炭発電が安定性および信頼性の高いエネルギーを提供していることを考えると、石炭焚きボイラーをリプレースすることは決して簡単ではありません。そこで、オーストラリアにおける同族経営のアグリビジネス大手企業であるマニルドラ・グループ(Manildra Group)が課題解決に向けて道を切り開こうとしています。

マニルドラ社はシドニーから南に約2時間の場所に位置するショールヘイブン・スターチズ(Shoalhaven Starches)工場の石炭焚きボイラーを、天然ガスを燃焼させる高効率なGE製タービン2基にリプレースする予定です。これにより、マニルドラ社の年間エネルギーコストは削減され、電力と蒸気の両方をより効率的に生成することを可能にします。

オイルやシロップから飼料、エタノールなどに至るまで、マニルドラ社の幅広い製品群はその製造過程で熱を利用するものばかりです。しかし、GEオーストラリアのCEOを務めるサム・マレシュ(Sam Maresh)は次のように説明します。「これまでマニルドラ社はその蒸留プロセスに必要なエネルギーと蒸気を石炭バーナーに依存してきました。ですが、今ではより高効率な蒸気や電力の生成手法があります。マニルドラ社に相談を持ち掛けられたGEは、エンジニアたちが電力だけでなく蒸気も生成するこのコージェネレーション(熱電併給)型ソリューションを提案したのです。」

GE製新タービンへの切り替えは、マニルドラ社がショールヘイブン・スターチズ工場で排出するCO2を削減することにもつながります。この発電所の発電用燃料を石炭から天然ガスに変えることで、排出量を最大40%削減することが可能です。

ショールヘイブン・スターチズ工場に今回納入されるGE製タービンは「エアロデリバティブ(航空機エンジン転用型:Aeroderivative)」です。その名の通り、ジェットエンジンの技術を転用したガスタービンになります。具体的には、米国大統領のエアフォースワンを含む多くのボーイング747ジャンボジェットに搭載されるGE製CF6ジェットエンジンに由来するLM2500タービンをマニルドラ社に納入するのです。このガスタービンは起動が素早いため、風が止んだり太陽が陰ったりした際に迅速に発電量を補うことができ、より多くの再生可能エネルギー由来の電力を送配電網に接続しやすくすることも評価されています。

シドニーの南に位置するマニルドラ社のショールヘイブン・スターチズ工場に到着したLM2500ガスタービンの1基。画像提供:GEガスパワー

また、LM2500はもう1つ重要な機能を持つ先見性のある機器でもあります。というのも、燃焼時にCO2を排出しない水素の燃焼機能をも備えるからです。マレシュは「代替燃料としてこのテクノロジーに注目しているお客様が多いことが今回の納入でより確かになりました。さらに、水素自体にもより高い関心が寄せられています」と語ります。

とはいうものの、燃焼時や製造時にCO2を排出しない、いわゆるグリーン水素の安定供給を実現するためには解決すべき点が依然として多いのが現状です。また、水素が高価なガスとみなされることも課題です。水素を大規模に製造するには、依然として設備投資が高額になってしまうからです。

しかし、まもなく状況は変わり始めるでしょう。西オーストラリア州で開発中の「アジア再生可能エネルギー・ハブ」が、この種のプロジェクトとしては世界最大規模となる、最も意欲的な取り組みとして注目されているからです。これは再生可能エネルギー4社で構成される企業連合から220億豪ドルの拠出を受け、大規模な風力タービン群に加え大量にソーラーパネルを設置するプロジェクトです。2025年に運転が予定されているこれらの風力発電所と太陽光発電所の発電容量は、オーストラリア国内の石炭火力発電所の合計を超える26GWが計画されています。そのうちの14GWは、淡水化された海水を電気分解してグリーン水素を製造する電源として活用されるため、電力だけでなく水素も生成する一大プロジェクトとなる予定です。

オーストラリアには石炭と天然ガスが豊富にあります。西オーストラリアの海岸沖のガス田は世界でも最大級であるため、国としてより大規模な液化天然ガス(LNG)輸出産業の成長を促すことも可能です。しかし、現在の世界的なエネルギーひっ迫の中で燃料価格は急激に値上がりしています。マレシュは次のように説明します。「産業界にとってエネルギーは投入原価の中でも多くを占めるため、可能な限り効率の良い運営をしたいと考えるものです。たしかに価格変動もリスク要因とはなります。ですが、マニルドラ社が今回導入するテクノロジーは、燃料価格の変動をしのぐ効率の良さという結果を得るためのものなのです。」

特に風力発電と太陽光発電業界が飛躍的に増加している現在、オーストラリアのみならず世界中で同じ高性能ガスタービンを利用しているお客様がすでに複数存在するとマレシュは言います。「LM2500は再生可能エネルギーと非常に相性が良いのです。ご存じのように、再生可能エネルギーは出力を『安定させる』ことが課題です。再生可能エネルギーの出力を安定させる役割を担うのに、LM2500のようなガスタービン以上に適した機器はありません。」

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